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緊急事態

 美魔女な野崎の案内でエレベーターに乗る。オペレーターがいるという最上階へとむかった。


「ところで、今日出勤で本当に良かったのかしら。まだ、騒動(そうどう)は収まっていないでしょう? 協会は声明文を発表したけれど、開示請求に関しては時間がかかるもの」


「体を動かしていた方が、気分も変わるので」


「それならいいけれど。あまり、無理はしないようにね。聞いたわよ、異常なくらいに努力家だって」


「俺の過去と経歴は、調べてあるんですね」


 扉が開き、エレベーターから降りる。廊下を歩きながら、野崎は続けた。


「履歴とデータは残っているから、そこから調べたわ。S級に認定されたのは1年前。そしてたったの数か月で、B級からS級に飛躍したという前例のない偉業(いぎょう)をなしとげたようね。けれど、最初から才能に恵まれていたわけではない。むしろ、恵まれていない方だった。高校卒業後から探索者になったけれど、その後の数年間はB級クラスギリギリの力。けれど、毎日ほぼ休みを入れずダンジョンへ通い、夜遅くまで戦い続けた結果、ある時期にさしかかって才能が開花した。努力の天才、だなんて言っている職員がいたわね」


「諦めが悪い性格だったので。努力の天才は、ちょっと複雑な気分です」


「あら。不快であったのなら、謝るわ」


「そこまでじゃないですけど。昔は努力の天才を、皮肉っぽく言われていたんですよ。それが今ではポジティブに扱われるから、なんだか変な感覚になるんです」


 誰よりもダンジョンへ潜り、努力をしたのに一番割合の多いB級どまり。弱くはないが、特別ぬきんでているわけではなかった。

 熱心に休みなく潜っているくせに普通ということで、やがて探索者の間で名前が広まり、ついたあだ名が「努力()()の天才」。

 努力の天才は結果が出たからこその称号だが、かつてそれ「だけ」と言われていた身としては、妙な気分になるのだ。

 会話をしつつ、2人は指令室へと到着。

 4人のオペレーターチームの女の子が席から立ち上がり、ぺこりと頭を下げた。

 ぱっと見て、武宮は思った。


(おわっ。なんか、どの子も可愛らしいというか、美人ばかりだな……若手中心とは聞いていたけど)


 前のところはベテランのオバちゃん&中年オペレーターばかりであった。

 野崎が武宮を紹介する。


「おつかれさま。今日から、ここ螺旋の塔へ配属になった武宮 竜よ。S級探索者だから、失礼のないように」


 ぶっ、と武宮がふき出す。


「い、いいですって、そういうの。あー、S級だろうとなんだろうと、探索者は普通の人間と変わりないですから。特別じゃないし、偉くもない。対等というか、まあ、テキトーな感じで、これからよろしくお願いします」


 3人のオペレーター達が少し不思議そうにする。

 ただそれも無理はなく、武宮の印象は普通の青年といった感じなのだ。とてもその身にはかりしれない力を秘めているとは思えない。

 が、1人はそんなこと気にせず、ものすごい勢いで武宮へと迫った。


「武宮様っ」


「おわっ!」


 ずいっ! と、金髪の美女、観月が武宮へ接近した。

 ものすごく近い距離で、ほんのりと甘い香りがした。

 しかも観月はあざとく、シャツのボタンをいくつか外して、おっぱいの谷間をちらりと見せている。


「私、武宮様のファンなんです!」


「ふぁ、ファン?」


「はい! 雑誌のインタビューとか、ネットの記事見ましたよ! 努力の天才だって! すごくがんばり屋さんなんですね、かっこいいです! マジ最高です! あ、ところで、再婚の予定ってないんですか? どんな人がタイプですか? というか、私ってどうですか!?」


 観月の背後に野崎が近寄り、その首根っこをつかんだ。


「あなた、なにしているのよ」


「いだだだっ、ちょ、そんなとこつかまないでください、支部長!」


「全く。あと、ボタン締めなさい。胸の谷間を出すなんて、下品よ。オペレーターの品位が疑われる」


「え~。いいじゃないですか、私Eカップですし。ちょっとくらい」


「ちょっとでも、ガッツリでも、谷間出しはNGよ。プライベートでやりなさい」


「ケチ。大体、私よりもめっちゃデカい、下品な爆乳の支部長に胸のこといわれたくな――いだだだだだっ、ちょっ、首、首が、呼吸っ、できないっ……!」


「うるさいのはこの口かしら?」


「さんそっ、さんそがっ……! あっ、天国のおばあちゃんが……なんで、こんなところに……がくっ」


 ネコみたいにつかまれた観月が、野崎の手によって席へ戻される。

 他のオペレーターが苦笑いをしつつ、武宮へ挨拶して名刺を渡した。

 そして最後に、新人オペレーター朝倉があいさつした。


「まだわからないことが多いですが、せいいっぱい頑張りますので、これからよろしくお願いします、武宮さん」


「んっ。よろしく」


(新社会人かぁ……オペレーターも若いのを積極採用って感じか)


 どこの業界も、若手は需要(じゅよう)があるんだなと実感した。

 と、そんな時であった。

 指令室で大きな警報音が鳴りひびく。

 オペレーター達が慌てて席へ戻り、状況を解析した。

 ふざけていた観月が、真剣な表情へと変わり、真っ先に報告をあげる。


「――支部長! 第二階層に、Aランクレベルの高魔力を放つモンスターが出現です! 近くのドローンがカメラでとらえているので映像、ピックアップしますよ!」

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