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20/21

隙ありですっ!

 1日の業務が終わり、七層のワープポイント近くで中條、茨木、江川、武宮の4人が集まっていた。


「モンスター化現象は起きなかったですね」


 武宮の言葉に、江川が苦笑する。


「まあ、あんな件が頻発したらたまったもんじゃないがな」


 中條が腕を組み、眉を寄せた。


「というかアレ、結局なんなんスかね? 他の支部でも似た報告があるらしいッスけど、公式発表じゃないから件数もよくわからないッス」


 江川が鼻を鳴らす。


「関係性はまだ不明だが……ここだけの話、支部がマークしてるやつがいるらしい」


「マーク?」


 武宮が聞き返すと、江川は小さくうなずいた。


「あの件のあと、運ばれた探索者を追うようにダンジョンから出てきた指定探索者がいる。鈴木だ」


「……あいつか」


 お局の息子。親子そろって問題児なら、中々に笑えない話だ。

 江川は続ける。


「すぐ戻ってきたらしいが、元D級だったのが、この一か月でB級の魔力に跳ね上がった。短期間の成長自体は前例があるが……行動と合わせると、どうにも臭う」


 中條がため息をついた。


「でも協会は、この件に触れるなって感じッスよね。あんまり踏み込まない方がいいんスか?」


「そらそうだ。ライセンス剥奪もあり得る。オッサンは上に逆らうほど若くないんでね、踏み込みはしないさ」


「うう……武宮さんはどうします?」


 武宮は少し考えた。だけど、すぐに判断はできない。協会や他の支部と連携ができないのしょうがないが、上がってくる情報が少なすぎる。


「考え中だ」


 短く、それだけで答えた。

 その瞬間、茨木が鋭く顔を上げる。


「来るぞ」


 中條が首を傾げる


「お? なにが?」


 次の瞬間――空から、氷の剣を構えた少女が一直線に降下してきた。

 雨咲ソフィアだ。


「――隙ありですっ!」


 可愛らしい声で、けれど物騒なことを言って、物騒なことをする。兜割りの要領で、武宮の頭へ剣を突き立てた。

 ずどおおおおんっ!!! と、岩にぶつかったような衝撃音。

 雨咲は息を飲んだ。


「っ!? てごたえが、ない……」


 武宮は無傷のまま、雨咲の足をつかむ。


「そーれぃ」


「わあああああああああっ!?」


 クールな雨咲とは思えない絶叫を上げ、100メートルほど吹っ飛ぶ。

 中條が叫ぶ。


「ちょっ、色々となんですか、急に!?」


「ん? ああ、雨咲が弟子みたいな感じになったんだ。たまに俺を攻撃してくる」


「急に脳天へ剣突き立てる弟子なんてイヤすぎッスよ……鍛錬ならほどほどに頼むッスよ。お二人共、貴重な戦力なんスから」


「わかっている」


 投げられた雨咲はすぐに立ち上がり、むすっとした顔で言う。


「むううっ……なんだか、1ダメージも与えられない、負けイベを延々やらされてる気分です……」

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