表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/21

S級の鍛え方

 指令室で朝倉が声を上げた。


「た、武宮さん、大丈夫なのですか? 探索者同士での鍛錬は、さすがに危険な気もしますが……」


 雨咲と武宮のやりとりを聞いていた観月は、はあああっ、と息を吐く。


「武宮様、なんだか先生って感じがしてステキ~。私、やっぱり探索者になればよかったかも~。私も武宮様に、ビシバシ指導されたい! 1対1で!」


「観月先輩、なにを言っているんですか……?」


 さすがの朝倉もやや引き気味であったが、他の女性オペレーターも観月と似た感じなのか、うっとりとしたような表情を浮かべていた。恋はもうもくという言葉が、脳裏をよぎった。大体なにをやっても、武宮がかっこいいように見えてしまうのだろう。なんだか本当に、推しとファンみたいだ。


「やらせておきなさい。かつては、武宮くんもS級に稽古をつけてもらっていたのよ」


「え、そうだったんですか?」


 支部長野崎の言葉に、朝倉が目を丸くする。


「ええ。強者や格上と戦うことは、ダンジョン攻略の基本……だそうよ」


 うーん、と観月が首をかしげる。


「でもそれ、スポーツとかなら成立しますけど。探索者は負けたら死亡ですよ?」


「だからこそ、それを乗り越えたら経験になるのよ。RPGに例えるなら、ダンジョンの奥深くに潜り込むことがLVアップ。己を鍛え上げ、死地を乗り越えるのがステータスアップのようなもの。安全面考慮から手を抜くとはいえ、S級との戦いはシンプルに良い経験になるはずよ。現に武宮くんがB級からA級に上がったきっかけの1つは、そのS級との鍛錬だったそうよ」


「ほへ~。スパルタですね……やっぱ、私にはムリそうです」


 心変わりが早かった。

 そして朝倉の方は、心配そうにモニターの方を見ていた。


(2人共、ケガがなければいいけど……)


 武宮に対しては尊敬の気持ちがあるし、雨咲には同い年の女の子同士なので、気にかけているところがある。

 2人の戦いを、見守ることにした。





「よし。じゃあ全力で、どこからでもかかってこい」


「……あの。丸腰ですが」


 氷の剣を構える雨咲に対して、武宮は素手である。


「ああ。武器は使わない」


「えっと、その」


 ナメられている――と思う前に、武器すら構えない人間相手へ、攻撃することを雨咲はためらわれた。

 今までダンジョンのモンスターとはなんども戦ってきたし、トラブルを起こした探索者と戦うこともあった。

 だが、だからといって無防備な相手に剣を振るうことは、ためらわれた。


「よし。じゃあ、こっちからいくぞ」


「っ!?」


 言葉の終わりと同時に――気がついたら、左手首を武宮の右手でつかまれていた。

 不思議と、力を感じさせない握り。それなのに、絶対に逃げられないとわかる感覚とプレッシャー。

 そして雨咲の視界が、あっという間に反転した。

 武宮は右手一本で、雨咲の体をボールにするかのように、ぶん投げたのである。

 ずどおおおおっ!!! と、砂煙を巻き上げながら、雨咲は50メートルほど飛ばされて、地面に転がった。


「――っ! 私も一応、女の子なのですけど……容赦ないですね。でもそれなら、私もいきます!」


 雨咲は剣を両手でにぎり、素早く前へかけて飛ぶように距離を詰めていく。

 間合いに入った瞬間に、剣を上から降り降ろす。氷の鋭い刃は、立ったままの武宮の胸へをとらえた。

 がきんっ、と。

 硬い感触が跳ね返ってきて、両腕がしびれた。


「……は?」


 岩とはまた違う、力そのものがこちらへ戻ってくるような、バネのような奇妙な感覚だ。

 武宮は再び雨咲の右手を片手でつかむ。


「ごめんな。そしてさようなら」


「わああああああああっ!?」


 次のスローイングは、先ほどよりも力が強い。

 80メートルは投げ飛ばされた雨咲が、再び地面へゴロゴロ転がされることとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ