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17/21

解雇されたお局達が「泣けば許してくれるでしょ?」と言わんばかりに、泣きながら謝る

 同じくらいの時刻。

 かつて武宮が所属していた探索者支部の受付に、あの4人のお局がやってきていた。

 あまりに目立っているので、遠巻きに何人かがなにごとかと見ている。

 4人のお局は、しくしくと泣きながら、男の職員に謝罪をしていた。


「たくさん迷惑をかけてすいませんでしたぁ。武宮さんは、いらっしゃらないのぅ? 本当にもうしわけないことをしたわぁ」


 うううううっ、と4人共ハンカチを片手に、大号泣をしている。最初こそ、職員は「まあ、クビになったくらいだし、反省してるんだろうなぁ」という気持ちになったが、今は違う。

 謝り方がしつこく、遠回しに帰るように言っても、すいません、すいませんと謝罪ばかりして、引き下がらないのだ。

 そしてそうなってくると、この涙もおおげさなものに見えてくる。なんというか「泣けば許してくれるでしょ?」という心の内がバレバレだ。


(はあ。全く、迷惑すぎるぞ)


 対応している男性職員が、心の内でため息をつく。


(ただでさえ武宮さんがいなくなって、こっちは大変だってのに)


 武宮は職員達に惜しまれながら、異動していった。花束を渡したし、送別会も開いた。

 彼はS級でありながらも高飛車ではなく、礼儀正しい若者であった。

 なので、評判も良かったのだが……今回の騒動で異動にまで発展したのは、お局達が原因というのもある。

 その果てに、このいやがらせのような行いである。

 人に迷惑をかけないといけない性分なのか、と疑いたくなるレベルだ。

 そしてさわぎを聞いた支部長が、こちらへ降りてきた。そしてお局達へ告げる。


「お引き取りとりください。これ以上さわぐようでしたら、警察を呼びますよ」


「……」


 突き放すように、はっきりとそう告げた。


「なによ! こんなにやさしく謝っているのに! 今までお世話になったとか、そういうことを少しは考えないのかしら!?」


 武宮へ直接悪口をいった鈴木が、キンキン耳に響くような大声を上げる。

 いえ、あなた達の解雇は痛くもかゆくもないですよ――と、支部長は喉まで出かかったが、それは口に出したら問題になるので、ぐっと飲み込んだ。

 お局達の問題行動は、実は前からあった。

 ずいぶんと長い休憩時間であったり、ルールの逸脱行為であったり、若手探索者へのイジワルであったり。

 まさに迷惑なベテラン社員「お局」の手本のような人達だったのだ。今まで揉めてきたことは、1回や2回ではない。そしてそれが、今回雇用に関わる問題を起こしたので、解雇にふみだしたというところなのだ。

 正直、支部長としてはいなくなってくれて、清々したレベル。

 だが、代償としてS級を放出したような形になったのは、かなり手痛いと考えていた。なにが起こるかわからないダンジョン管理。全ての問題を解決してくれる力を持つ、S級がいるかいないかで、大きく職場の状況が変わるのだ。


「お世話にはなりましたが、こんなところで大きな声を上げられるのは迷惑です。帰ってください」


 お局達はギロリと、支部長と職員達をにらみつけた。

 瞬間――静かに事態を見ていた周りの探索者達が、大きな声を上げた。


「そうだ! 帰れ、帰れ!」


「通信でいっつも感じ悪かったから、いなくなってスッキリだっての!」


「このクソババアども! SNSの裏垢で探索者の悪口言ってんの知ってんだぞ! ざけんな、こらぁ!」


「職員のことも書きまくってただろ! 慰謝料たんまり請求されちまえ!」


 よほど嫌われているのか、ものすごい力量での言われようであった。

 お局達は涙を止めると、今度は顔を真っ赤にし始める。


「頭の悪いやつばっかりの職場ね! なにがS級よ! あんな人間兵器を育てたって、日本が戦争や攻撃の標的になるだけよ! あいつのせいでね! S級なんか国から追い出せ! 私達ママは、戦争を止めるわ! 戦争反対! 戦争反対!」


 支部長はしかし、冷静に言葉を返した。


「戦争反対は必要なことですが、ここは政治の論争をする場所ではありません。それと、武宮氏への侮辱(ぶじょく)はひかえていただきたい。彼は異動先でさっそくとあるトラブルを止め、人の命を救っていますよ。我々にとって、あの方はとても重要にして大切な人材なのです。侮辱は撤回(てっかい)していただきたい」


「ふんっ! するわけないじゃない! 戦争になって死ぬのはお前らみたいな、無知な人間よっ! もういいわ! こんなバカの集まり、こっちから願いさげよ!」


 鈴木がお局達を引き連れて、ドスドスと荒々しいあしどりで協会支部を出ていく。


「支部長、すいません。ありがとうございます」


 職員が謝ると、支部長が肩をすくめた。


「また彼女達が来たら、呼んでくれ。もう来ないことを祈るけどね」

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