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男達の昼メシ

 あっという間に第七層へワープしたところでお昼となった。青宮は一旦、ダンジョンから協会へと戻った。

 ダンジョンの出入りは協会の奥で保管されている、ワープポイントだ。ダンジョンは物理的な出入り口は外部から穴を空けない限りはないので、自然発生する外部のワープポイントが扉代わりだ。第六層からでも、出口まで一発でワープすることができる。

 端末のチャットチャンネルで、江川、中條、茨木の3人組から昼飯にさそわれていたため、彼らの時間に合わせて出る形となった。

 武宮としても、一度ダンジョンから出て昼食をとる派なので、支障はない。


「あ、武宮さん! おつかれっス、いきましょう!」


 協会の出口で、中條が手をふる。茨木、江川も一緒だ。

 この近くにあるらしいので、協会を出て4人で歩き出す。50代の夫婦が経営している定食屋ならしい。

 路地裏にあるややこじんまりとした定食屋であった。透明な窓で店内が見えて、真ん中に調理スペースがあり、そこをカウンターでL字に囲う形だ。店の端には畳で座れる場所もあり、そちらには2つの四角いテーブルと座布団が置かれている。

 店の中に入ると、焼き立ての魚や肉の良い香りがした。食欲がそそられる。畳の方の席へ案内され、中條が生姜焼き、茨木がハンバーグ、中條が焼き魚であった。武宮は唐揚げを頼む。

 料理が運ばれてからも、会話は中條が先行することが多かった。茨木が終始無言で、江川がときおり突っ込むような感じだ。


「武宮さん、ぶっちゃけどうなんですか。どの女の子がお気に入りですか」


「おいおい。学生じゃねーんだから」


 中條の質問に、江川が呆れる。

 ちなみに席順は武宮、江川、その対面に中條、茨木といった感じだ。


「だって気になるじゃないっスか。もう職場の女性陣は、来たばかりの武宮さん争奪戦みたいなもんッスよ?」


「さすがにそれは、ちとおおげさだろ。まあ、オラオラしていない、お若いS級で女性陣が色めきだつのは、仕方ないがね」


「で、どうッスか。ちなみに俺の予想は、やっぱ朝倉ちゃんなんじゃないかな~って思ってます」


 武宮が苦笑いを浮かべた。


「い、いや、俺はそういうの、もういいから」


「えっ、まあ、あんま触れちゃいけないだろうから、アレですけど。再婚とか、考えてないんッスか?」


「全然ないよ。結婚はもうしないよ」


 中條はおおげさに頭を抱えた。


「あちゃ~。こりゃ、朝倉ちゃん達大変そうっすね……あっ、ちなみに、万が一にも支部長はダメッスからね。どちゃくそキレイな人ですけど、ここの江川さんという先客がいるっスから」


 江川が肩をすくめた。


「おっさんには、なんの話だかさっぱりだ」


「いやいや、マジな話、そろそろキメた方が良いッスよ! 野崎支部長、なんだかんだ乙女ッスから」


「おめーになにがわかんだよ」


「支部長会議とかで、独身貴族なイケオジが狙っているって噂ですから。やっぱモテるんですよ、あの人」


「んな噂どっから聞くんだい」


「今度、飲み会でも開きましょうよ! おれ、アシストするッスよ!」


「っ!? いっ、今までそんなこと言わなかったのに、急に言うじゃねーか。そんな関係じゃねーから、余計なお世話だ」


 中條はまたも、おおげさに頭を抱えた。


「か~! 螺旋の塔支部の男性陣、恋の道は険しいッスねぇ……」


 ふと、恋の道よりも気になることがあった武宮は、口を開いた。


「そういえば、あの子……雨咲 ソフィアって大丈夫なのか。誰かと組んでいる感じがしないけど」


 モグモグしながら、中條がああ、と声を上げる。ごっくん、とごはんを飲み込んだ。


「最初はおれ達と組んでたんッスけどね。今は1人になりたがりますね」


「大丈夫なのか。最年少はたしかにすごいが、正直、ソロで深いところをいけるほど、強い実力じゃないぞ」


 はっきり言う武宮の意見。これには江川が答えた。


「まだまだ若くて無鉄砲な上、最年少と周りに持ち上げられたご身分だ。いったんは、好きにやらせてあげようや」


「あの感じ、かなり無茶しそうですが」


「たしかに、今朝も目がギラついてたもんだしなぁ、あのお嬢さん。そん時はフォローするしかないし、S級様にも頼ることになる。悪いなぁ、簡単に言うことを聞く子じゃないもんで」


「そうですか……わかりました」


 そんな会話をしている間にも各々ごはんを食べ終えた。ここはお米がおかわり出来たりと、がっつり食べることができる。腹を満たしたい探索者達にとって、たしかに良いスポットであった。


「……自分が出します」


 茨木がそう言って、携帯を持ってレジまで向かう。お手伝いっぽい、若い男のバイトが対応していた。


「ゴチになるぜ、茨木」


 同世代なのか、タメでその背中を軽く叩き、中條は外へ。江川も「世話になるな」と声をかける。


「ありがとな」


「……いえ」


 武宮の言葉に、茨木は短く答えた。

 ちなみに、茨木は独身ならしい。特に浮いた話もないようだ。





 そうしてちょっとした交流を深めつつ、協会へと戻る。江川達はもうちょっと休憩室でゆっくりするらしいが、武宮は思うところがあってすぐに戻った。すると、指令室から内線が飛んだ。慌てた様子の、朝倉の声であった。


『た、武宮さん! すいません、戻ってすぐで申し訳ないんですけど』


「なにかあったか?」


『雨咲さんが、ソロで第七層のフロアボスへ挑んでしまったんです! 止めたのですが、そのまま行ってしまって、いま、ケガをしているんです!』


(お昼時を狙ったか。ちょっとそんな気はしてたんだよな)


 武宮の「思うところ」がさっそく当たってしまう。ただ、まさかこんなすぐに、無茶をするとは思わなかった。


「了解。七層へのワープポイントは触れたし、俺もすぐに行く」


『お願いします!』


 武宮は駆け出しながら、端末に送られた座標のポイントを確認する。

 雨咲がA級になったのは、基本的にはパーティーを組んでの成果だ。

 強力な魔力を保持する七層へソロで挑むのは、危険な行為である。


(……でも、気持ちはわかる)


 武宮も「努力だけの天才」と呼ばれていた時代は、色々無茶をしたものであった。

 といって、指令を無視して暴走をするのは、許されないことだ。


(どうしたものかな)


 移動しながら、ただ助けるだけではなく、雨咲の意欲をどう導くかを考えた。

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