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違和感のある朝礼

【S級探索者 業務報告書】


提出者:螺旋の塔支部 野崎 優子

提出日:〇〇〇〇年〇月〇日


1、初日の業務内容について

 〇月〇日にて、S級探索者・武宮竜が当支部に初出勤した。正体不明のAランクモンスターが出現、これの撃破に当たった。


2、戦闘映像の解析結果

 ドローン映像の解析結果によれば、武宮氏はAランクモンスターの攻撃を正面から受けても、肉体への影響はゼロと判定された。

 そして彼の武器である斧「Ωアックス」による単発攻撃にて、モンスターは即時撃破された。

 データにある「ロード・エンペラー」の使用はしておらず、ほとんどの実力を出していないものと思われる。

 今回出現したAランクモンスターは解析によると、A級探索者が6人以上でなければ撃退できぬほど、強力な力を保持しているが、武宮氏にとってはまるで相手にならないようだ。

 あまりにも規格外な戦闘能力であると、改めて断言できる。


3、支部内交流及び人物所見

 螺旋の塔支部は新人の歓迎会を開き、武宮氏もこれに招待した。

 彼の人柄は意外にも平凡なもので、戦い以外での印象は大人しめで礼儀正しい好青年といったものだ。

 上のみなさんはどこか特別扱いをしているが、彼はそういったものを好まない傾向が見受けられる。

 まだ年若いということもあり、女性職員の猛アタックに困惑しながらも、まんざらではない様子であった。

 今のところは、職場に対して悪い印象はもっていないものと思われる。

 S級とて男。螺旋の塔支部に所属する若き女性達に、心を癒された面があるのではないだろうか。

 が、調べたところによると、トラブルのあった鈴木氏のご子息がこの支部に在籍している。武宮氏へ逆恨みをしており、この歓迎会で険悪な接触をしていた。

 場合によっては、対応を検討したいところだ。


 以上が、本日の報告である。


【備考】

 この場を借りて問う無礼を許していただきたい。人間のモンスター化現象が、他の支部でも起きているという情報をつかみました。

 何故、こんなにも大事な案件を支部全体で共有しなかったのでしょうか。

 また、この件の探索者達との情報共有は、どのように対応すればよいのでしょうか。

 ご指示のほどを、よろしくお願いします。





 朝の8時には出勤し、通信機や各フロアへ飛ばすドローンなどを回収し、指令室へと向かった。まだ誰も来ていないので、点灯等をやりながらだ。

 冒険者はアイテムボックスという能力があるため、ドローンや荷物になりそうな道具はそちらへ格納する。

 朝礼は9時00分なので、早めの出勤だ。

 新任なので、朝礼前に社内メールや資料等の履歴を調べようと考えての行動である。

 指令室にはPCも何台か置いてあり、電源を立ち上げて過去のやり取りなどを見ていく。

 協会内の掲示板には、昨日の歓迎会の写真がさっそく記載されている。

 協会内メールでは、機材の不具合や点検・修理の進捗状況などが記入。

 大きな事件が起きれば、速報として通知・発表がされている。


(昨日のモンスター化現象が、なぜ流れていないのだろうか)


 原因不明で人がモンスターになって暴れたなんて、かなりの事件だ。

 それなのに、螺旋の塔支部から速報が出ていない。

 これからやるのだろうか、と考えながらもどこか違和感がある。


「おはようございます、武宮さん。早いですね」


「ん? ああ、おはよう。朝倉か」


 朝倉は指令室の器材へ電源を入れたりと、準備をしていく。


「偉いな。今の子は、始業前にそういうことするのは時代遅れだって指摘するイメージがあるのに」


「い、いえ、自分に出来ることをしようと思いまして」


 どうやら朝倉はかなり真面目な女の子のようだ。


「そっか。でも、がんばりすぎて無理するなよ」


「は、はい。ありがとうございます」


「ところで、昨日起きた事件さ。野崎さんと協会内へ速報として流すとか、そういう話は出ているか?」


「はい。上層へ速報を流したそうです」


「まあ、そりゃそうだよな」


「えっと、それがどうかしたんですか?」


「色々見ているけど、その件がどこにも出てないからさ。どうしたんだろうって、気になったんだ」


 そんな会話を交わしつつ、時間が経過していく。やがて職員達の顔ぶれがそろっていくと、最後に野崎が現れて、9時の朝礼が開始された。今日の業務内容や連絡事項を野崎が発表した後、最後に昨日の事件について説明をした。


「昨日のモンスター化現象について、上層部から返事が来たわ。今後、これらの事件に一切の関与をしないこと。そして特に外部、一般人へ口外しないように、という指令が来たわ。意識不明の探索者についても、ごく一部の者のみでの対応となる予定よ」


 職員達がざわつく。

 無理もない。遠回しに全員、見なかったことにしてくれ、忘れてくれ、と言っているようなものだからだ。

 そして職員からは、疑問が口に上がった。


「あのっ! 他の支部でも同様の事件が起きているって、耳にしたんですけど!」


「事件の進捗について、通達は来ますか? 今後の調査の流れは?」


 しかし野崎は、首を横にふった。


「今の質問、どれも答えることができないわ」


 一同のざわつきが強くなる。これではなんだか、探索者協会が支部へなにか隠しているように思えてしまう。少なくとも、こういった事例はほとんどない。一部の者だけで進めなくてはいけない話とは、一体どんな事情があるというのか。

 観月が小声で、武宮へ言った。


「なんだかキナ臭いですね、武宮様」


「そうだな。この件の裏で、一体なにが動いているのか……」


 考えるも、情報が少なすぎるので全て推測の域を出ない。

 武宮はやれやれと、肩をすくめたのであった。

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