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歓迎会と、マザコンと、両手に可愛い花

 モンスターの中から現れた男は、今日の朝で入場記録のある若き探索者であった。

 魔力解析のログとして見ても、この男が突如としてあのモンスターへ変身した、という流れになる。

 いまだかつて、人がモンスターになるという現象は確認されていない。

 男は病院に運ばれ、一命をとりとめているものの、不可解な事件として螺旋の塔支部をざわつかせた。

 万が一、このダンジョンが人をモンスターへ変える力があるとするならば、極めて危険な場所となる。

 探索者達への聞き込みをすると、この若き男は今日の朝から様子がおかしかったという。

 昨日と比べて、別人のように強くなったのだ。

 この人物の、過去の魔力解析のデータと照合すると、その証言通り彼の魔力は昨日と比べて3倍にも跳ね上がっていた。

 夜の19時過ぎ。探索者達の受付を終え、本日の業務を完全に締め切った状態の螺旋の塔支部、本日出勤の職員一同は最上階の指令室へ全員集まった。野崎が一同を見渡した後、よく通る声であいさつとまとめをする。


「本日もお疲れ様。イレギュラーな事件もあって、こんな時間になっちゃったわね。このダンジョンにおいて、不可解な魔力の観測や今回の騒動に繋がる現象があるわけではなく、あくまでもモンスターとなった探索者自身に、不可解な魔力の動きがある。彼が目覚め次第、聞き込みをする。今日はモヤモヤする結果だけれど、彼の意識が戻るのを待ちましょう」


 そしてパン、と野崎は両手を軽く叩いた。


「さて、解散よ。今日はこれから――新人の歓迎会を開くわよ。武宮くんも参加してちょうだいね」


「歓迎会?」


「そうよ。朝倉ちゃんと雨咲ちゃん、そしてあなたのね」





 支部裏庭には、炭火の匂いと、肉が焼ける香ばしい音が満ちていた。

 今日は横長のテーブルが並べられ、簡易ライトが吊るされ、宴会場のようになっている。

 ただし未成年がいるので、お酒は出ないようだ。ジュースやら、炭酸水やらが飲み物である。


「……どうぞ」


 クールな雰囲気の男がトングで肉やら野菜を焼いていて、テーブルの上に置かれた紙皿をすすめた。美味しそうなステーキにエリンギ、ピーマンにたまねきが乗っている。


「あ、どうも。おつかれさまです」


 あいさつすると、クールな男がぺこりと軽く頭を下げた。


「……自分、A級探索者茨木と言います。よろしくお願いします」


「えっと、武宮 竜です。こちらこそ、よろしく」


(たしか、A級の3人組が主軸で、茨木さんってのはその内の1人だったか)


 なんとなくじっと見ていて、武宮は関心した。


(この人、多分だけどすごいな。熟練の雰囲気を感じる。それに、魔力を上手く抑えている。制御力が高い……隠密系の戦い方をする、とかか?)


 漠然とした直感だが、武宮は茨木がタダ者じゃないと感じた。

 通路での歩き方体の動かし方など、無駄がなく、手練れた武術者のような雰囲気だ。


(そういえば、あの子いないな。名前上がってたのに)


 負けず嫌いそうな最年少A級探索者、雨咲 ソフィアの姿はない。

 だけどたしかに、こういった集まりに参加するタイプとは思えなかった。

 それに世代というのもあるかもしれない。


(今どきの子は、こういうのに参加しないってよく言うしな……って、そんな年の差あるわけじゃないけど)


 そしてS級の新人ということで、武宮の周りにはすぐに人が集まった。男ばかりの国家認定B級探索者達が、続々と武宮へあいさつする。

 みんなそれぞれ違った反応であった。


「あなたが噂の武宮さんですよね! 初日からご活躍なさったそうで、さすがです! これからよろしくお願いします!」

「ふーん、これがS級ね……ま、よろしく」

「けっ、本当に強いのか? 俺でも、なんかたおせそーだけどなぁ」


 キラキラと尊敬を向ける者、警戒する者、どこか好戦的な者、といった感じである。

 特に最後の、好戦的な者の当たりが強かった。


「ママが世話になったみてーだなぁ」


「???」


 言われてみると、二十代前半くらいの男の、目つきのわるい顔立ちは、どこかで見覚えがあった。

 あのイジワルをしてきたお局の1人……鈴木に似ている。


「S級だがなんだかしらねーが、おぼえてやがれ」


(逆恨みかよ……)


 武宮はため息をついた。

 男はギロリと睨んできたあと、舌打ちをして去っていく。


「――はい、じゃあみんな席について。開会のあいさつを、ざっとするわよ」


 退勤後なのでみんな私服姿で、支部長もそうであった。

 金色のネックレスに、黒のブラウスにグレーのタイトスカート。スタイルの良い、エレガントな美魔女である。まるで女優だ。


(やっぱ美人だな、支部長は。独身らしいけど、絶対モテるだろ)


 そんなことを武宮は考えた。

 近くの席へ適当に座ると、右隣に元気な23歳の日焼け美女、観月 美羽がやってきた。


「お隣失礼します、武宮様♪」


「ああ……っ!?」


 武宮は思わず、隣に座った観月にドキリとした。

 私服姿の観月は……この歓迎会を意識したのか、ものすごく刺激的で、なおかつ可愛い印象を与える恰好をしていた。

 レースアップの赤のオフショルダーに、青いジーンズのショートパンツ。綺麗な足と、なまめかしいなで肩、そして大きな胸の谷間が見えている。

 中々に派手だ。武宮に限らず、他の男達職員も、ちらちらと観月をみていた。


「あ、あのっ、私も隣……いいですか」


「どうぞ……っ!?」


 左隣に座ってきた、18歳女子、朝倉 ひまりにもドキリとさせられる。

 モカブラウンの長袖ワンピース。ピンクの髪は、青いリボンでサイドテールに結んでいる。こちらは正統派な清楚系といったところだが、服越しでもわかるそのワガママボディが、可愛らしさの中に女性的な色気を強く発していた。


(な、なんか緊張してきたな……)


 A級モンスターをワンパンした男も、積極的な美女達にはタジタジのようだ。

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