シンデレラになってみました 番外編2
「姫~、大変よ~」
朝から一年生の取る、一般教養の授業に飛び込んできた学部ニュース編集長の朝日を見つめて花梨は驚いた。
朝日は肩で息をしながら、花梨の横に座る。
「朝日先輩、どうしたんですか?」
授業が始まるまではまだ時間がある。
花梨は自分の水筒を息の上がっている朝日に差し出した。
頷きながら受け取ると、朝日はそれを一口飲んだ。
「すごい事実に気が付いたの、私」
少し落ち着いたのか朝日は横抱きにしていた鞄から、数枚の写真を取り出した。
取り出した写真を、花梨に良く見える様に横並びに並べていく。
「見て」
並べ終えると、朝日は写真を指差した。
花梨は理由は分からなかったが、黙って写真を見つめた。
それには群衆が映っていた。
「・・・たくさんの人ですね」
他に何を言ったらいいか分からなかったので、見たままを口にした。
朝日の目が無言の圧を放ち、もっとちゃんと見てと言っている。
花梨は写真を改めて見直した。
「あっ」
花梨は気づいた。
「これ、学校行事の時の写真ですね」
「まあ、そうなんだけどね」
朝日はこれ以上待っても仕方ないと思ったのか、自分から切り出した。
「大変な事なのよ、これが。警察に連絡した方がいいと思うの」
何だか物騒な話に花梨の身体にも緊張が走った。
「えっ警察?」
思わず身を乗り出した。
「これ、よく見て」
朝日が写真の一枚一枚の中の特定の人物を指さした。
花梨は急にのどの渇きを覚えて、水筒のお茶を口に含んだ。
「全部同じ男なのよ。学園祭、収穫祭、学部のBBQ、ゼミの芋煮会、このスーツ姿の男。見てこの苦悶の表情、ストーカーだと思う」
花梨は思わず口に含んだお茶を朝日に向かって吹き出した。
もろにお茶を顔で受けた朝日はなぜかうれしそうに笑った。
「スイマセン、朝日先輩」
「うん、いい。大丈夫。今度は噴き出す前に声を掛けてくれればなおいいわ。一滴でも手に入れば幾らで売れる事やら・・・」
何やら物騒な事を呟いている。
花梨は慌ててハンカチを出して朝日の顔を拭いた。
「すまいません、朝日先輩が心配してくれたこの男性、旦那です」
顔を真っ赤にして、花梨は小声で真実を告げた。
「はっ?」
今度は朝日が驚く番だ。
「主人なんです・・・」
行事の見学がてら悠人が迎えに来てくれた日ばかりだった。
「なぜ?旦那さんはこんな表情なの?虫たべちゃったの?」
何も言えない、花梨はハハハと乾いた笑いを浮かべた。
「何かよからぬ妄想に囚われているみたいです・・・」
花梨は消え入りそうな声で答える。
もう、悠人さーん、と心の中で叫ぶと、写真に写っている日の悠人の態度に思いを馳せた。そいえばどの日もどこかよそよそしかった、イベント終わりだから興奮しすぎている自分とのギャップかと思っていたが、そういうわけだったのね・・・。
花梨は大きくため息をついた。
「今からでも遅くない、タップリ甘えなくては」
花梨のつぶやきは、写真を眺めながら、「よく見るとすごいいい男なんじゃ?」「え、何してる人?」と悩んでいる朝日の耳には届かなかった。




