表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シンデレラになってみました  作者: 椛こま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/52

シンデレラになってみました 番外編1


 「あれは誰?」

 鳥居太一は視線の先を指さした。

 「ああ、先輩サボってばかりいるから、乗り遅れちゃったんですね。この大学で今姫のことを知らない人って先輩くらいですよ」

 一学年下の後輩吉田はそれだけ言うとさっさと自分の仕事に戻っていく。

 「おい」

 太一は慌てて捕まえる。

 「だから誰?」

 「彼女は今年の新入生ですよ」

 「なんで、一年がゼミに?」

 「『見学させて下さい』って彼女が来て、ダメだって言えます?」

 「・・・いや」

 「教授も大歓迎ですよ」

 じゃっと吉田は去ろうとする。

 「いや、待て、名前は?」

 「紫藤花梨ちゃんですよ」

 太一は手を離すと、ガッツポーズをする。

 「やっと、俺の出番がやってきたー」

 去りかけていた吉田は足を止めて振り向いた。

 「いや、来てませんよ」

 冷静に声を掛けたが太一には届かなかったようだ。

 「俺のグレーな大学生活にやっと希望の光がやってきました。ありがとう神様」

 「光は降り注ぎましたが、あなたにだけではなく大学全体にですよ」

 「この俺の輝きに釣り合う女がやっと、やっと、俺の前に」

 そう言って駆け出す太一を吉田は必死で捕まえた。

 「何をしようと?」

 太一は怪訝な顔で吉田を睨みつけた。

 「話しに行くに決まっているだろ。しゃべんなきゃ何も始まらないだろう?」

 興奮して鼻の穴を広げたイケメンを吉田はしばらく眺めた。イケメンの基準は分からないが、確かに目の前の先輩の顔は整っていた。そして外見至上主義といった彼の言動は学部いや大学全体にそぐわなく浮きまくっていた。そして彼はそれに全く気付かない強者でもあった。

 吉田は手を離した。

 「何なんだよ」

 「いや、先輩は人の話聞かない人だったことを思い出して」

 はぁ?という顔で太一はさっと服を直し、髪を整えた。

 「じゃ、俺という存在を知ってもらいましょうか」

 気合を入れ直して太一は花梨の元へ向かった。

 「・・・明日が楽しみだ」

 そう言うと吉田は太一の背中に合掌した。

 

 翌日、ゼミの扉を開くとポツンと椅子に座っている太一がいた。

 「おはようございます」

 吉田は笑いをかみ殺して、ポンと肩を叩いた。

 太一の顔がねじ巻き式のおもちゃの様にゆっくり振り向いた。

 「あれは誰?」

 昨日と同じ質問を恐怖の張り付いた顔で聞く。

 「だから、先輩は乗り遅れてるんですって。この大学で山崎さんを知らない人は先輩ぐらいですよ」

 「山崎さんっていうんだ・・・」

 それだけ呟くと太一は黙って宙を見つめた。

 吉田はまた手を合わせる。

 花梨にワンチャンあるかもと近づいた強者どもは皆もれなく抜け殻になった。吉田自身はお顔を拝見したことはないが、魂を抜かれた者たちに植え付けられたトラウマは相当なものなので、怖いもの見たさで一度遠くからなら会ってみたいと思っていた。

 「夢さえ見なければ、姫はみんなに優しいいい子ですよ。大事なのは距離感です」

 少しは聞く耳を持っただろう、その耳に吉田は囁いた。

 「結婚してるんだってね。確かに距離感は大事だね」

 太一は何度も頷いた。

 吉田はもう一度ポンと肩を叩くと、その場を後にした。

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ