シンデレラになってみました 最終話
「どれも、ひどい顔」
卒業式の写真を見ながら花梨は笑った。
「どれも、可愛いよ」
悠人は見る見るうちにむくれる顔を楽しく眺めた。
「むくれた顔も可愛いよ」
本心だ。
「いや、ホントに、私の周りはみんなどうかしてますね」
花梨はプイと横を向き急に無表情を装う。最近は無視することが皆に一番堪える事だと思っているようだ。でも、一生懸命無表情を保とうするその顔がまた可愛くて、皆それを楽しみにしていることをまだ知らない。
皆の密かな楽しみなので、悠人は悟られないよう困った顔を作った。
「花梨、もうからかわないから無視するのを止めてくれないか?」
「反省が足りませんね」
無表情を保とうと、半眼になった顔がまた可笑しい。
悠人は込み上げる笑いを必死に飲み込む。
「そういえば、お杉さんは何を持たせてくれたの?」
こういう時は話題を変えるに限る。
花梨はくるっと振り向いた。
地蔵のような顔があっという間に笑顔になる。
「おはぎ」
パッと立ち上がると、キッチンへ駆け出す。
「お茶いれてきますね」
駆け出す背中が生き生きしている。
「楽しみだ」
悠人の追いかけた声にこくりと頭だけで答えて、扉の向こうに消えて行く。
悠人はテーブルに広がった写真をまとめ始めた。
「シンデレラは幸せだったと思います?」
もたれていた胸から身体を起こして、突然君は聞いた。
「シンデレラ?」
離れてしまった温もりが惜しくて、もう一度抱きしめる。
「そう、シンデレラ。私、結婚を決めた時にシンデレラに誓いを立てたんですよ。シンデレラはどうだったか分からないけど、私は幸せになってみせるって」
腕の中から真剣な瞳で見つめてくる。
「幸せって自分の気持ちの持ちようだから絶対幸せになれるって思っていたんですけど、違いました」
そっと君は、私の頬に手を添える。
「王子様によります。私は悠人さんが王子様で、とてもとても幸せ」
嬉しそうに微笑む。
その顔があまりに可愛くて、そのままキスをする。
君のその無邪気な純粋さに救われる。
でも、それが怖い。
この相反する不思議な感情はきっと、ずっと変わらない。
だけど、腕の中にいる君の温もりは何より強いから、きっと大丈夫だと思う。
ブックマークを付けて下さった方、最後まで読んでくださった方に心からの感謝を込めて。
ありがとうございました。
椛




