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シンデレラになってみました  作者: 椛こま


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36/52

シンデレラになってみました 36話

 

 何か音が聞こえた。

 悠人はスピーカーから流れる音量を下げた。

 ドアベル、だっただろうか?

 グラスを置くと、立ち上がった。ぐらっと身体が揺れる。

 夕食の後、部屋に戻り一人で飲んでいた。思ったより酔いが回っていたようだ。

 ゆっくりドアに向かって歩いて行く。ドアスコープを覗く。


 花梨。


 悠人はドアを開けた。

 「どうしたの?」 

 花梨の視線は下がっている。もう一度声を掛けようと口を開きかけた。

 花梨の瞳に自分が映る。

 「お・お話したいことがあって・・・」

 薄っすらと頬がピンクに染まっている。

 ドクン。

 花梨の緊張が伝わってくる。

 「どうぞ」

 悠人はドアを大きく引いた。

 

 「何か飲む?」

 悠人は声を掛けたが、答えは分かっていた。悠人は飲みかけのウィスキーの入ったグラスを持って、花梨の向かいのソファに座った。

 花梨は一心に自分の組んだ指先を見ている。

 ああ、あの日のようだ。

 悠人は、ふっと笑った。

 「前にもあったね」

 花梨の顔が上がる。

 「あの時も花梨はそうして指を回していた」

 昨日のように記憶が蘇る。

 『子供を作ることです』

 花梨は真っ赤な顔でそう言った。

 『義兄さんが思っているよりずっと、義兄さんは花梨に愛されていると思う』

 欅の声が重なる。

 そうなのだろうか?

 本当に、私を愛してくれているのだろうか?

 

 「あの時はとても、うれしい相談だったけど、今日は何かな?」

 期待していいのだろうか?

 「私、私、あなたが好きです」

 ダメだ、期待してはいけない。

 「家族として?」

 自分を押さえなければ。

 「悠人さんが好き」

 挟み込まれた顔が痛い。

 何が起こった?

 吸い付かれた唇が痛い。

 花梨は吸い付いた口のまま、離れた。

 顔が見る見るうちに真っ赤になっていく。

 「く、口を吸うって・・・本で読んで」

 ああ、なんて可愛いんだ。

 

 悠人は腰を浮かせると、軽く花梨を引き寄せた。そのまま唇を重ねる。

 軽く。

 そのまま花梨の腰を抱く。

 もう一度、軽く唇を重ねた。

 見開いていた花梨の瞳が閉じる。

 悠人は強く花梨を引き寄せた。

 自分の中の思いが溢れてくる。

 深く、もっと深く、花梨に注ぎたい。

 この熱い思いを。

 花梨の頬を引き寄せると、腰を引かれた。

 軽く目を開けると、目の前の少女の目はぎゅっと固く閉じられていた。

 悠人は我に返る。

 そして、優しく花梨を包んだ。

 また、私は花梨からただ奪ってしまう、彼女の優しさに甘えて。

 「私もあなたが好きです。あなたと・・・」

 同じでありたい。

 この自分ではどうしようもない熱い思いも、何もかも。

 悠人は抱きしめる手に力を込める。このまま一対になるように願って。

 「あったかい。すごく安心する」

 花梨の優しい手が背中に回る。

 悠人は抱き留めた腕の力を抜く。

 だめだ、花梨にこの思いを気づかせてはいけない。

 私のこの情熱で彼女を踏みにじってはいけない。

 彼女は家族として私を受け入れてくれたのだから、彼女を安心させる存在でいなければ。

 私は、もうこの手を手放すことは出来ないのだから・・・

 

 

 

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