シンデレラになってみました 29話
マダム愛華がパーティに参加すると聞いたのはパーティの三日前だった。
十三のその言葉に悠人は眉をしかめた。
「マダムが参加されるのですか?」
いやでも確認を取ってしまう。
「ああ。どこからか今度の会を若夫婦がやると聞きつけたらしくてな」
「私たちがホストを務めるから、参加されるのですか?」
悠人の脳裏には疑問が増えるばかりだ。十三の昔から友人であるので、もちろん面識はある。だが、ただそれだけだ。産れたときから自分のことを知ってはいるだろうが、興味を持たれているとただの一度も感じたことはなかった。
「なぜ、急に」
そのままを口にする。
「まあ。気ままな女だから、何を考えているかなんて儂にもわからんよ。林をつけるから、愛華のことはすべて林に任せとけ」
「そうですか・・・」
珍しく悠人の気持ちにもやっとした何かが残った。
前日の橘の行動にも疑問だらけだったが、悠人はさっきからのマダム愛華の行動の意味が全く分からなかった。
欅の紹介をしていた所に愛華は現れた。
欅と挨拶を交わし、その後雑談をしていた。愛華が会場に登場したことでその場には変な熱気が立ち昇った。客たちが寄ってきては挨拶をする。愛華も機嫌よく客たちと談笑した。そのうち客のひとりが言った。
「マダムは何をオークションに出しているのですか?」
愛華は妖艶に微笑んだ。
「そうね」
周りに集まった男性陣はその笑みにごくりと唾を飲み込み、女性陣は自然と頬を赤らめた。
「私の美しさの秘訣を一つお教えしましょうか」
その答えに集まっていた客人たちは騒めいた。
「では、悠人さんに査定をお願いしますわ」
「えっ」
話の展開に悠人は付いていけていなかった。
「さ、別室で見ていただきましょう」
悠然と愛華はその場を後にする。
欅を見ると、手ぶりで「行っていい」と答えた。花梨を探すが、花梨の姿はなかった。
愛華は歩みを緩めることなく進んで行く。仕方なく悠人は後を追った。
部屋に入ると、愛華はすでにソファに腰を落としていた。ただ座っているだけなのに、その姿からは圧倒的な威圧感を感じる。
悠人は眉をひそめた。
威圧感だけではなく、むせ返る様な香りが鼻を衝く。
「美しさの秘訣とは、何なのですか?」
早くこの部屋を出たくて、悠人は答えを急かした。
愛華は動かず、ただ悠人を見つめている。
「あなたは若い時の十三に似てるの」
愛華から放たれる香りの強さに悠人は気持ちが集中出来ない。
「私が夢中だった十三にとても似てるのよ」
話に集中しようと悠人は大きく首を振った。
愛華が立ち上がった。
ゆっくりと近づいて来る。
悠人は逃げ出したい衝動に駆られたが、足は一歩も動かなかった。
「私がなぜ美しいか」
愛華はもう目の前にいる。
「愛を極めたからよ」
胸が押し付けられる。
悠人は逃げようと抵抗するがどうしても身体が動かない。
愛華の手が背中に回さられる。
「愛はとてもとても奥が深いの」
愛華の囁き声が悠人の身体を熱くする。
「そう、我慢しなくていいのよ。もっと自由に愛していいのよ」
ああ、身体がおかしくなりそうだ。
悠人はグッと目を瞑り、頭を振った。
「よう、悠人。マダム知らない?」
急に霧が晴れた。
解放されて慌てて悠人は辺りを見渡した。
そして、花梨を見つけた。




