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シンデレラになってみました  作者: 椛こま


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シンデレラになってみました 11話



 いつになく3年桜組は熱気に包まれていた。

 「では皆さま、今回学園祭の催し物は舞台でよろしいですわね」

 クラス長である朝宮一伽(いちか)がクラスを見渡した。

 「異議はありませんわ」

 皆が賛成と声を上げる。

 「内容は」

 一伽が黒板を指す。

 「向日葵さんのワンマンショーと応援する私たちのオタク芸のコラボということで、よろしいでしょうか?」

 『異議はありませんわ』

 18人の声が揃う。

 「三歳の時に入園式で会った日から、ずっと共にしてきた学友とも、今学年で別れがやってきます。桜桃の短大に進むのは8人。他の方たちは新たな旅立ちを迎えます。その区切りの年に、クラス全員で舞台に立てることの喜び。最高のパフォーマンスをしましょう」

 『はい』

 皆、手を取り合い喜びを分かち会う。

 「本当に喜ばしい事ですわね。花梨さんが一緒に参加する日がくるなんて。ご結婚万歳。紫藤様ありがとう」

 矢代彩桜(あおい)が花梨の手を取る。

 「で、ご結婚生活はどうですの?」

 「彩桜、露骨すぎる」

 向日葵がチョップで手を切った。

 「あら、誰が夜の夫婦営みについての感想が聞きたいなんて言いました?」

 「お前だ」

 今度は頭にチョップが落ちる。

 「・・・夫婦の営」

 花梨はあさっての方角を見たまま固まった。

 「花梨どうしたの?」

 「・・・えっ」

 百合の声の方に向きはしたが、花梨はぼぉとしている。

 百合には理由が分かった。

 「どうしたんだ?」

 百合が理由を察した事が分かった向日葵が百合に耳打ちする。

 「きっと、二度しか会っていない相手だったから、結婚はしてもそういう営み的な事は、これっぽっちも想像していなかったのよ」

 向日葵だけに話していた所にもう一つ耳が現れた。彩桜の耳だ。向日葵がその耳を引っ張った。

 「痛い、痛いですわ」

 「耳年増に聞かせる話はない」

 「もう、ケチですわね。減るものじゃないし、私口は堅くてよ」

 「それは知っている、けどダメ」

 ピシャリと言い切られて、彩桜は口をすぼめる。

 「仕方がないですわね。諦めますわ」

 「花梨」

 百合が名前を呼びながら花梨の肩を揺すった。花梨が帰ってくる。

 「百合?」

 「クラス長が呼んでるわ」

 百合の指した方角を見ると、一伽が手招きしている。二人は花梨を引っ張るように一伽の所まで歩いた。

 「花梨さん本当によかったですわ。花梨さんが顔を出して学園祭に参加できるなんて、私には夢のようです」

 一伽が花梨の手を握る。今日はクラスメイト全員と何度となく手を握り合い、ハグをした。みんな花梨の結婚と学園祭のフル参加に大喜びしてくれた。みんなが自分の事のように喜んでくれた事に、花梨はみんなよりずっと喜んでいた。

 「それで、ご相談なのですけど?」

 一伽の声のトーンが下がる。ちゃんと聞き取ろうと自然三人は一伽の傍に寄った。

 「私、本物を見たいのです」

 「本物?」

 聞き返しながら、花梨と百合は向日葵を見上げた。

 「歌劇団を見に行きたいのですか?それなら、いくらでも」

 「そちらではなくて、オタク芸の方です」

 食い気味に一伽が訂正する。

 「オタク芸の本物?」

 三人の頭の中で?が舞う。

 「皆さまの間で盛り上がった話では、動画サイトをみれば良いのですよね?ダンスのような物なのですよね?」

 花梨が質問のような答えを返す。

 「どこかでショーとして興行されているのですか?」

 百合が聞き返す。

 「いいえ、それではなく本物です」

 「それは、地下劇場とやらに集まるオタクたちの芸が見たいということですか?」

 四人の足元から返事が来た。

 「彩桜、お前また盗み聞きを」

 向日葵が引っ張り上げる。

 「私も参加します」

 彩桜は引っ張り上げられたまま悪びれる様子もなく敬礼した。

 「参加って、何に?」

 花梨はまだ意味が分かっていない。

 「だから、一伽様はそのたぐいまれなる探求心と本物志向から、オタク芸の発端のである、本物のオタクが地下アイドルを応援する様をご覧になりたいのです」

 一伽が大きく頷く。

 「動画サイトのオタク芸は綺麗に洗練されたもの、それでは本物とは言えません。向日葵さんのワンマンショーを真剣に応援する姿、それを一緒に舞台で見せるのならば、洗練されたショーであることは勿論ですけれど、その熱い心、魂の叫びがなくてはなりません。その為には、やはり本物の方たちの姿、熱気を感じなくてはいけないと思うのです」

 熱い。クラス長一伽は何事に置いても、妥協を知らない一途な性格なのだ。

 「それで、なぜ私に相談なのですか?」

 「私の夜間外出には許可がいります」

 門限のない家など、このクラスでは花梨たち三人きりだ。そして、大抵の家の門限が下校時間だった。つまり迎えの車で帰ることが桜桃では常識だった。

 「それで、どうして私たちに?」

 「私の父の会社は藤グループの系列ですの。悠人さんがエスコートしてくだされば、父はNOとは絶対に言えませんわ」

 やっと、三人は一伽の相談の中身を理解した。

 「それで、参加でしたの」

 百合が感心して彩桜を見る。彩桜はぐいっと親指を突き出した。

 「家の事情が私も同じなのです。そして、私も秋葉原なる所に行ってみたいのです」

 みんなの視線が花梨に集まった。

 「・・・では、悠人さんにご都合を聞いてみますけれど、あまりご期待はしないで下さいね」

 「ダメだったら、十三翁に頼め。翁は花梨の頼みは断れないはずだ」

 「あら、そちらなら父は卒倒しますわ」

 一伽の嬉しそうな声に花梨は肩を落とした。



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