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- Double - 勇者と魔王の転生記  作者: 矢島 ユウ
アセリア王国戦争期
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城砦都市の攻防 十一

 三人が北門に到着して見たものは、北門を守っていた将軍の一人をオーダインが剣で串刺しにして高く掲げている姿だった。既に将軍は事切れているのか動く気配は無い。


「派手にやってくれるじゃねぇか!!」


 それを見たクラウスはオーダインに向かって戦斧(ハルバード)を振りかぶって肉迫する。それに対してオーダインが取った行動は串刺しにした将軍の死体をクラウスに投げつけるというものだった。

 クラウスは死体とはいえ、自分に忠を誓った武人を無碍(むげ)に振り払うことも出来ずに受け止める。そしてそれは致命的な隙をさらすことになり、眼前に迫ったオーダインの剣がクラウスの首を狙って振られる。


「ヤベッ―――」


 死を覚悟する斬撃はクラウスの首筋に届く前に、甲高い音を上げてレオンの槍が受け止める。しかしオーダインの剛力をレオンの小さい身体では耐え切れず、体制を崩したクラウスと共に吹き飛ばされ城壁上に倒れる。

 そんな隙だらけの二人にオーダインは追撃を加えようとするが、カラが展開した炎龍がそれを許さず大口を開けて襲いかかる。

 

「カァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 オーダインは炎龍に飲み込まれ、炎龍はとぐろを巻いて腹の中に収めた首無しの騎士(デュラハン)を燃やし尽くそうとするが、オーダインが発した気合と同時に放たれた魂の波動によって弾かれる。

 その一瞬の攻防を見た北門の守備にあたっていた者達は自分達が足手纏いだと知り距離を取った。


「無事ですか陛下?」

「ああ、助かったレオン」

「レオン聞いてた首無しの騎士(デュラハン)と微妙に違うんだけど……」


 カラが言うように目の前で剣を構えるオーダインの姿はフォギィアの報告にあった姿とは若干(こと)なっていた。

 赤い鎧はそのままだが全体に血管のようなものが盛り上がり心臓でもあるように脈打ち、胸部分には大きな一つ目があり、こちらを窺うように睨み付け、身体からは蒸気のように青白い炎が揺らめいている。


「どうもライアンを殺したことで進化したな」

「「 進化? 」」

「人が神に至れるように、魔物や魔獣もより高次の存在へと至ることができるんだよ、それを進化というんだ」


 クラウスの言葉に二人は首を捻る。目の前の相手は確かに今の自分達には十分脅威だが神と呼ぶにはあまりにも魂量が少なすぎる。


「つまりあの首無しの騎士(デュラハン)は神になったと?」

「いや、人間も神に至る過程で、人、天人(てんじん)、半神、神と段階があるように魔物にも段階がある。今の奴は魔物の進化過程の魔物、魔人、魔神でいうと魔人に成り立てといったところか」


 なるほど、と頷くとレオンは今もっとも重要な情報を確認する。


「強さは?」

「見てわかるように魂量では俺やお前達と同等だ。厄介なのは不死者(アンデッド)だから不死ってところだな、倒すには燃やし尽くすか、魔物の核となる魔石を壊す必要がある」

「わかりました」

「僕の炎龍を弾き飛ばしたのを見る限り、燃やし尽くすのは難しそうだねぇ」


 カラが言うように精霊魔術が先程と同じように弾かれるなら牽制くらいにしか使えないだろう。そうなると狙いは一つに絞られる。


「魔石の位置はわかりますか?」

首無しの騎士(デュラハン)の場合は頭が一番怪しいが…… 魔石の位置は個体によってバラバラだ。片っ端から斬って確認するしかないかもな」


 目の前の首無しの騎士(デュラハン)を解体して魔石を探すしかないという結論に三人は苦い顔になる。自分と同等の力量を持つ相手に手傷を負わせるのも一苦労だというのに、それは運が良ければ一回、悪ければ数十回繰り返さなければいけないのだ。


「手足を斬って達磨にするしか―――」

「レオン、お前それ簡単に言うけどな骨が折れるぞ」

「話シ合イハ終ワッタカ?」


 律儀に三人の話し合いを待っていたオーダインだが、終わらない話し合いに呆れたのか口を挟んできた。決してふざけていた訳ではないのだが、その呆れを含んだ言葉に三人は申し訳なくなる。これから殺し合いを始める相手なのだが。


「すまない」

「てか律儀に待つとかオーダイン、お前本当に不死者(アンデッド)か?」

「それには同感だねぇ」

「隙ガアレバ斬リカカッタノダガナ、話ナガラデモ隙ヲ見ツケルコトガ出来ナカッタ。誘ッテイタノダロウ?」


 オーダインの言葉に三人は頷きもしないが否定もしない、沈黙することで肯定していたが、真偽は定かではない、真実は三人が知るのみである。


「我一人デハ、オ前達三人ニ無闇ニ斬リカカレバ、コチラガ危ナクナロウ。ダガソレデ良イ!! 生者ニ死ヲ!! 我等ガ魂ニ安ラギヲ!! イザ、イザ! イザ!! 剣戟の宴を始めよう!!」


 そう叫ぶとオーダインは三人へと突進する。技も何もないが、その速度は凄まじくオーダインが通り抜けた後では風が巻き上がる。


「面白え!! 爆ぜろやぁあああ!!」


 それに正面から相対するのはクラウス、突進してくるオーダインに向かって神鉄(オリハルコン)製の朱色の戦斧(ハルバード)を振り下ろす。  

 高速で動くオーダインもそれに向けて剣を繰り出した。両者の武器がぶつかり火花を上げる。

 力では不死者(アンデッド)となったオーダインが技ではクラウスが勝っており、勝敗を分けたのは武器の差だった。

 オーダインの剣もアセリア王国の騎士団長が持つ物に相応しく、銀鋼(ミスリル)製の両刃剣であったのだが、クラウスの戦斧(ハルバード)は神話の中くらいでしか登場しない希少金属神鉄(オリハルコン)製であり剣より重量のある戦斧(ハルバード)である。両者がぶつかれば結果は決まっていた。

 オーダインの剣は鍔元(つばもと)で砕けるように折れる。それでもクラウスの戦斧(ハルバード)の勢いは止まらず、オーダインの肩口から腹までを切り裂いた。


「ヌゥッ!?」


 武器を失ったオーダインは下がろうとするが、カラとレオンが体勢を崩したオーダインに襲いかかる。カラの剣は腹部を切り裂き、レオンの槍は心臓を撃ち抜く。

 それでもオーダインは倒れず後方へと下がり、三人と距離を取る。鍔元から折られた剣を眺めるとオーダインは感心したように呟いた。

 

「…… サスガダ」

「賛辞はありがたく頂くが、外れか」

「後は両手足と股間、頭くらいかな?」

「やはり頭が怪しいな」


 オーダインの賞賛の声に、三人はクジ引きに外れて残念といった風に返すと次に狙う場所を話し合う。それに対してオーダインは苦笑する。どちらが悪役かわかったものでは無い。


「モウ勝ッタツモリニナラレテハ困ル。コチラモトッテオキヲ出ストシヨウ」


 そう言うとオーダインは鼓動の止まった身体から溢れ出すほどになった魂に触れる。生前オーダインは魔術を得意としなかった。しかし魔人となることで魔導の深淵へとその爪先を届けさせることが出来たのである。

 つまりオーダインは【神への階段を昇る者】【世界への干渉者】【魂の深淵にふれる者】魔導師と至ったのだ。最初から使わなかったのは魔導を使えるようになって日が浅く、制御する自信がなかったからなのだが、このまま魔導無しで戦っても自分が滅されるのは時間の問題だからである。

 それは全力で自分に相対する三人に対して失礼だと思ったのだ。

 ゆえにここに己の渇望を顕現(けんげん)しよう、それで倒されるのならば、それはそれで良いだろうと微笑んで。

 オーダインの口から魂に刻まれた祝詞(のりと)(つむ)がれ始める。その祝詞は生前のオーダインが持っていた渇望を不死者(アンデッド)となったことによって歪められたものだったが、今のオーダインが望む渇望であることは間違いなかった。


≪ 私の世界は灰色に染まる虚構である 何故なら私は凡人だから ≫


 魔導師とは総じて創世神が創った世界に対して干渉できる者を指す。


≪ 私が歩む人生は 煌びやかな英雄譚とは程遠い ≫


 簡単にいってしまえば魔導師とは世界を騙し、脅し、脅す者であり、詐欺、恐喝、脅迫する者だ。 


≪ 故に私が望むのは英雄に相対する敵役(かたきやく) なぜなら英雄と相対した時ならば私でも輝けるだろうから ≫


 世界からしてみれば自分を侵す悪人であり排除するべきものだが、この世界を創った創世神はそんな彼等を嬉々として歓迎する。


≪ さあ! そのために私は強くあろう さあ! そのために私は雄雄しくあろう ≫


 なぜなら―――


≪ 剣が折れたならば魂を剣としよう 身体が壊れたならば魂を身体としよう≫


 彼等は総じて輝いて見えるから。


≪ いつか英雄の前に立ち 華々しく散ることを願って ≫


 創世神は彼等を愛でるのだ。いつか自分と肩を並べられる者が現れることを願って。


≪ 序章――― ≫

 

 そして今いる世界の中にまた一つ新しい世界が産声を上げた。


≪ 輝ける英雄の敷石 ≫


 初めて出る戦闘面での魔導師が敵から出るとか、どうしてこうなった!?

 おかしい…… こういうのは主人公達が一番初めに使うものではないのだろうか?

 …… まぁいっか。(すいませんこの作品の作者はこんな奴です。

 

 予告通り今回で終わりませんでした。

 えっ今回で終わるって言ってた? 

 記憶にございません。

 次回はオーダインさん無双のお話。あれこの小説主人公無双じやなかったっけ? とお思いの読者様。

 ごめんなさい!! (土下座) もう少し待ってください、まっても無双にならないかもしれませんが。


 後書きが長くなってしまいました、すいません。

 今回も読んでいただきありがとうございました。



 

 

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