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- Double - 勇者と魔王の転生記  作者: 矢島 ユウ
アセリア王国戦争期
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戦争参戦準備 後編

 防具の次は武器、ということで二人は帝都で評判の武器店【バルツァー】へと来ていた。評判といっても貴族達が好むような華美豪奢な装飾が施された店ではなく、職業軍人や冒険者が好む実用一辺倒の武器を置き、自店の工房も並列させている店である。

 店内に入ると厳つい顔をした店主が二人を出迎えた。


「いらっしゃい! おっ、帝国学園の学生さんかい? 何を探しに来たんだい? 剣、槍、斧、他にも色々揃ってるから気の済むまで見ていってくれ」


 二人の制服を見て帝国学園の生徒知った店主は歯を見せて笑うと二人を店の奥へと招き入れた。

 店内には店主が言うように、各種様々な武具が所狭しと並んでいる。


「私は槍と剣が欲しいところだが…… カラはどうする?」

「僕は剣だけで良いかな、あっ、あと短剣も一本欲しい」

「短剣か…… 確かにあると色々便利だな」

「槍に剣二本に短剣二本か… 予算はどれ位だい? それだけ集めようと思うと安く見積もっても金貨三枚位になっちまうが?」


 二人の希望を聞いて店主が予算を聞いてきたのでレオンは指を三本立てる。


「おお、丁度三枚かい? なら鉄製の物で揃えるか」 

「違う」

「ん? まさか三十枚か? 確かにそれならそこそこ良い物揃えられるが―――」


 レオンの否定の言葉にそう判断した店主は次のレオンの言葉に度肝を抜かれることになる。


「三百だ、必要ならもっと出す用意がある」


 その言葉に目をこぼれんばかりに見開いた後、冷やかしなら許さないといった意思を込めて店主はレオンを睨みつける。普通の少年なら腰が引けそうな店主の視線を、柳に風と受け流すレオンを見て店主は目の前の少年が本気で言っていると確信した。


「まいったね、これは久々に大口のお客さんだ。それで、何か希望はあるかい?」

「出来れば一から作ってもらいたかったが今回は時間が無い、今店にあるもので最良の物が欲しい」

「わかった、少し待っていてくれ」


 店主は店の奥に入っていき、暫くすると木箱をいくつか持って戻ってきた。

 

「今うちに置いてあるので坊ちゃん達でも扱えそうな物を集めてみた、まあ見てくれ」


 木箱をカウンターに乗せると店主は木箱の箱を開けていく。それをカラとレオンの二人は興味津々といった風に覗き込む。

 カウンターに並んだ武具を見てレオンが見識を述べた。


「これは白銀(プラチナム)、いや銀鋼(ミスリル)か?」

「ああ、よく解ったな」

 

 レオンが言うように並べられた武具のほとんどが白銀の輝きを放っていた。その光は光を反射しているというより、武具自体が光を放っているように輝きを放っている。

 これは魔法金属特有の現象で【魔光】と呼ばれるものであり、生物が身につければ、その者の身体能力向上や魂操作、精霊や神との交信の補助という恩恵を授けてくれるのだ。

 銀鋼(ミスリル)以外にもこれを持つ物はいくつかあるが、これを持つ物の代表はやはり銀鋼(ミスリル)神鉄(オリハルコン)と言って良い。しかし両者とも入手が困難で、そのため高値で取引されるため駆け出し、中堅の冒険者や一般兵にとっては眺めることしか出来ない代物である。


銀鋼(ミスリル)は精製は耳長族(エルフ)が鍛造では髭小人(ドワーフ)が秀でてるんだが、両者は仲が悪い上に、帝国との国交は無いに等しいからな。どうしても数が帝国に入ってこないんだ。これらも冒険者が遺跡や迷宮(ダンジョン)から取ってきたのがほとんどだ」

「冒険者ならそのまま自分で使っても良いようなものだと思うけど?」

「ああ、こいつ等を持ってきた奴は既に銀鋼(ミスリル)製の武具を持ってたからな」

「なるほどねぇ」


 店主の言に納得しながらカラは自分の目の前にある両刃剣を手に取る。それは刃先が尖り刺突にも対応された造りになっていた。長さも長剣でも短剣でもなく中剣といった長さで、小柄なカラに丁度良い。試しに振ってみると思った以上軽く感じたが、空を切る音は鋭く辺りに響いた。

 その音を聞いてカラの顔に花が咲いたような笑顔が広がる。


「良いねぇ、あつらえたみたいに手に馴染むよ」


 うっとりと眺める横顔は幼いながら、異性を惹きつける魔力を放っていた。その顔が眺めるのが剣でなければ。


「それが気に入ったか?」

「うん! 僕はこれが良いねぇ。レオンは決まったのかい?」

「そうだな……」


 レオンは残っていた武具の中から黒い刀身の曲刀を手に取ると目の前に(かざ)して見る。手にズシリと重さを感じたが、それが良く手に馴染んだ。


「おっ、銀鋼(ミスリル)じゃなく、それを選ぶとは…… 見る目あるね坊ちゃん」

「これは何を使っているんだ?」

「黒鋼っていって最近帝国学園の研究者が新しく練成した金属で出来てる。これの凄いところは、斬った魔術を無効化しちまうって所だ」

「無効化というと?」

「俺も半信半疑だったんだが、知り合いに頼んで中級の水球を斬ってみたら霧みたいに消えちまった。普通なら剣で水球を斬っても消えたりしないんだがな」

「…… 試してみても?」

「ああ、良いぜ。裏に試し切り用の空き地がある」


 店主に案内されて空き地に移動するとレオンとカラは向かいあうように立つ。


「とりあえず火球を撃ってくれカラ」

「わかった」


 カラの周囲に人の頭代の大きさの火球が六つ展開されると、レオンへと勢いよく飛んでいく、その光景に店主は今日二度目の驚愕の顔をすると制止の叫びを上げた。


「まっ、待て!?」 


 店主の制止の声も空しく空き地に響き六つの火球はレオンへと迫るが、少年は慌てることなく火球を黒剣で一閃する。一閃された火球は散り散りにばらけるとレオンの頬に熱を残して消えていった。


「それで? 殺す気かカラ」

「え? レオンならこれくらい大丈夫でしょ?」

「そうだが、今回は試し切りだ。六つもいらん!!」


 テヘペロするカラに眉間の皺を直すレオン。そんな二人を唖然とした店主が眺めていたが、二人は気にせずに水球、風弾、岩弾と試し、水球は霧のように消え、風弾はそよ風に、岩弾は一瞬で砂へと変わった。

 結果を見て自分の手にある黒剣を眺め笑みを浮かべるレオン。


「これをもらおう。良い剣だ」

「まいどあり」

「後は銀鋼(ミスリル)の槍と短剣があると良いんだが」

「わかった」


 店へと戻ると店主が取り出したのは銀鋼(ミスリル)製の槍頭と石突だった。刺突に特化された形状のそれに店主は槍が置かれた一角から柄部分だけを持ってくるとレオンへと手渡す。


「自分の好みの長さを決めてくれ、それに合わせて調整する」


 店主の言葉にレオンは頷くと柄を受け取って構えると、自分に合った長さに調整するとそれを店主に示して柄を手渡す。

 それを受け取った店主は隣の工房に加工を頼むと、次の箱を取り出す。


「こいつは毛色は違うが当店のとっておきだ」


 そう言って店主がカウンターに置いたのは手の込んだ蔓草(つるくさ)と花の装飾が施された箱だった。これだけで価値がありそうな箱である。

 箱が開けられると中には同じように蔓草と花の装飾がされた銀鋼(ミスリル)製の片刃の短剣が二振り入っていた。刀身には見たことも無い文字で何かが掘り込まれている。

 見事な装飾にカラとレオンは感心しながら短剣を手に取る。


「見事な細工だが、確かに今までの物とは毛色が違うな」

「そうだねぇ、刀身の彫り物とか柄の装飾とか何か意味あるのかい?」


 二人の疑問に店主は自慢げに胸を張ると説明を開始した。


「それは冒険者をしている耳長族(エルフ)が売りに来た物でな。なんでも耳長族(エルフ)は結婚する時にお揃いの銀鋼(ミスリル)製の短剣を造って互いに持つらしい、刀身に刻まれてる言葉は『永久(とわ)の絆を誓う』って耳長族(エルフ)後で書いてあるそうでな。どうだい? 坊ちゃん譲ちゃんにピッタリの一品だろ?」


 ドヤ顔で胸を張る店主の説明に二人の頭に疑問符が浮かぶ。


「ピッタリというのは?」

「ん? 二人は恋人か、許婚じゃないのかい?」


 その言葉に二人の身体がギシリと止まる。そのままお互いの顔を見る。

 カラの顔には何ともいえない微妙な笑み、レオンの顔には今まで浮かべたことも無いような爽やかな作り笑いが浮かんでいた。


「違うのかい?」

「…… 一応兄妹だ」

「おっと、そうだったか。それじゃあこの短剣は止めとくかい?」


 そういう店主にレオンは首を振ると告げる。


「いや、物は良いようだし刻まれた文も兄妹の絆と思えば問題無いだろう」

「確かにそうだな。それじゃあ全部お買い上げでいいかい?」

「ああ、頼む。あと従者用に護身用の剣を二本くれ」

「わかった―――― 全部で金貨三百と五枚だな」

「証文でも構わないか?」

「構わんよ、帝国学園の学生さんなら信用できる」


 店主の了解を受けて、レオンは証文を書くと店主に手渡す。


「帝国銀行に持って行けば金貨と交換してくれるはずだ」

「まいどあり。商品は持って帰るかい? 何なら学園の寮に送るが」 

「なら頼もう。ただ明日には必要だ。今日中に届けられるか?」

「大丈夫だ」

「では頼む。ああ、これは身に着けて帰る」

「じゃあ僕も」

「おう、また何か入用だったら来てくれ歓迎するぜ」


 店主の声を背に二人は店を出る。二人の腰には銀鋼(ミスリル)製の短剣が光を放っていた。


「手繋ごうかレオン」

「いきなりどうした?」

「別に良いじゃん。ほら手!」

「わかったわかった」

「えへへへ」


 家路につく二人を沈み始めた夕日が照らす、街路に映し出された二人の影はそのまま離れることは無かった。


前編と今編の前半部分は前振りです。

最後の部分が一番書きたかったのです!!


恋愛成分を入れたいのに思うように動いてくれないのです。

なので無理矢理にでも! という今回の暴挙です。

読者さんの意見が怖い。

まあ、真摯に受け止めて今後に生かしていきたいです。


今回も読んでくださりありがとうございました。


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