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西と南の辺境伯

 南辺境中心都市ソディックに着くとレオン達は、街を見下ろせる位置に立てられた館に案内されていた。街にある建物と同じ白壁と赤い屋根の建物で、柱や門扉には魚や海に住むとされる海獣の意匠が施され、大人数でも宿泊できるように五階立ての建築である。


「我が家より大きいですね」

「それはそうだ、ここはソディックが誇る迎賓館だからな。ソディックは船を使って他国の賓客が来訪することが多い、その時にここを提供するんだ」

「なるほど、私達の街にもありましたか迎賓館?」

「あるにはあるが…… ここほどの規模ではないな」

「なるほど…… 交易は南に、軍事では西に負けているわけですね。我が領の強みは何です?」

「収益では負けていないぞ、エッツの森から取れる素材は他で取れない物が多い、その分取引額が釣り上がるからな。後は以前の会議でも出たが他種族との交易を実現できれば、収益だけなら一歩先んじることが出来る」

「ふむ、ならば辺境領の力関係は同等と考えて良いんですね?」

「まあな、あちらがどう思っているかはわからんが」

「―――― なるほど理解しました」

「どう理解したんだ?」

「南と西には、運だけがある低能の末成(うらな)り、と思われているということがです」


 レオンの辛辣な言葉にアークの顔が引きつる。


「そこまでは―――」

「おう、東の末成りじゃあないか。元気にしていたか!?」


 弁解しようとするアークの言葉を、迎賓館から出てきた巨躯の人物の大声が掻き消す。それにアークは肩を落とすと巨躯の人物に頭を下げた。


「お久しぶりです西の御大」

「ああ」

「父上こちらが?」


 アークの礼に手を上げて応える巨漢を見ながらアークが訪ねる。アークはそれに頷くと、巨躯の人物をレオンに紹介した。改めてその巨躯を見上げる。男性の中でも背の高いほうであるアークより、頭一つ分は背が高く肩幅などはアークの二倍はある。暗がりで見たら大鬼(オーガ)と間違えそうである。頭髪は既に白く、顔全体を白い髭が覆っていて、それに隠されるように顔には無数の古傷が残っていた。おそらく体にも同じように傷があるのだろう服から


「ああ、こちらは西の辺境伯ライアン・ベイ・サイロンだ。御大これは私の息子のレオンハルトです」

「お初にお目にかかりますサイロン伯、レオンハルト・アルバ・ミスラです、気軽にレオンとお呼びください。若輩者ですが、よろしくお願いします」

「ほう、末成りの息子か。中々優秀そうじゃないか、いくつになる?」

「御大、もう私も東辺境の当主になって暫く経ちます――― そろそろその呼び方は」

「阿呆!! 儂にとってはお前はどれだけ経っても末成りのままじゃ!悔しかったらワシが唸るようなことを達成してみい!!」

「はっ、申し訳ありません。努力します」


 アークがライアンに叱責されているのに心の中で溜息をつきながら、レオンはアークに助け舟を出すことにする。


「先程のサイロン伯の質問に答えさせていただくと、九歳になります。――― そういえばサイロン伯のお孫さんに歳が近い方がいると聞きました。今回の会議には来られていないのでしょうか?」

「ん? ほう九歳か、そうじゃの確かに今年十歳になった孫がおる。本来なら今年、帝国学園に入学しておるはずが、隣の王国の馬鹿共のおかげでそれどころではなくてな。仕方ないので来年の入学試験までに見聞を広めさせようとここにも連れて来とる。お主とは歳も近い、後で会ってみると良い」

「はい、おねがいします」

「そのかわり覚悟しとくことじゃ、祖父の儂が言うのもなんじゃが孫は気性が荒い、吹き飛ばされんようにの、ガハハハハハハハハハハハハハハ」


 そう言ってレオンの背中をバンバン叩くとライアンは迎賓館へと戻っていった。


「父上」

「言うなレオン――― 頼む」


 父親の威厳を木っ端微塵にされたアークがレオンから顔を逸らす。あれは、相手が悪かっただけだと思うのだが。今はそっとしておいたほうが良いと判断して迎賓館へと入ると、アークと同い年くらいの翡翠色の髪を腰まで伸ばした男性が出迎えた。


「やあアーク。サイロン伯に絞られたみたいだね」

「ソライトか? ああ、しかも息子の前でだ――― 父親の威厳が……」

「大丈夫。もともと君にそんなものはないから、無いものはなくならないよ」


 サラッとアークに毒を吐くと、青年はレオンと目線を合わせるために屈むとニッコリと笑う。


「そうだよね? えーと……」

「レオンハルト・アルバ・ミスラです、レオンとお呼びください。そんなことはありません、私にとっては尊敬できる父です。失礼ですが、南辺境伯ソライト・フィン・イダ様でよろしいですか?」

「うん、そうだよ。ようこそ海と陸の都市ソディックへ、歓迎するよレオン」

「ありがとうございます、イダ伯」

「ああ、ソライトでいいよ。僕は無駄が嫌いでね。敬語は無駄が多い、だから僕には無理して敬語とかは使わなくて良い」

「わかりました。しかし目上の方にそれでは示しがつきません。ソライト様と呼ばせていただきます」

「硬いねレオンは、まるで閉じた貝のようだ。子供の頃からそれでは気疲れしてしまうよ。まぁ君がそのほうが楽だと言うなら好きにすれば良いさ。――― ああ、そうだ。僕にも君と同じくらいの子供がいるんだ。君と同じで真面目な子でね。君とは気が合うかもしれない、良かったら仲良くしてやってくれ」

「わかりました」

「うん、それじゃあ会議は明日からだ。今日はゆっくり休んでくれ――― と言いたいところだけど夜にはここの大広間で歓迎の晩餐会がある。一応君達を歓迎する宴だ、長旅で疲れているところ悪いが参加してくれると助かるよ」

「わかっている」

「お心遣い感謝します」

「ありがとう、それじゃあ頼むね」


 ソライトはヒラヒラと手を振りアーク達に背を向けると、館の奥へと戻っていった。

 その後、アークとレオンは一室ごとに部屋を与えられ人心地付くと、共同部屋として互いの部屋の間に設けられた応接室に集まっていた。


「なんというか…… 個性的な方々ですね」


 西と南の辺境伯を見た率直なレオンの意見を聞いて、アークは乾いた声で笑ったが、次の瞬間には真面目な顔になる。


「だが能力は本物だ。御大――― いやライアン様は西の守りを長年こなしてこられた武人、ソライトも海運業に力を入れ、それが成功を収め、先代の頃と比べ収益は上がっている」

「なるほど、父上は一歩出遅れているのですね」


 そのレオンの言葉にアークは肩を落とす、図星を刺してしまったらしい。

 しかしそれは仕方ないと思う、東辺境領の発展は既に頭打ちなのだ。

 エッツ森での素材採集は冒険者頼みであり、下手に兵を入れて開発を行えば耳長族(エルフ)と問題になり、兵に死人など出てしまえば慰謝料が発生する。ミフレ山脈も髭小人(ドワーフ)がいるため同じ理由で手が出せない。連合との貿易は東辺境領と連合の商人が頼りであり、辺境伯自ら動くと商人達からの突き上げを喰らってしまうため難しいところである。

 それを一気に改善するのが先代以前から進めている他種族との講和であり、今直面し改善しようとしている問題でもある。


「良いではないですか、先を走っているのなら追い抜く楽しみがあるというものです」

「そうだな」


 紅茶に口をつけながら言うレオンの慰めの言葉にアークは目に見えて元気づき頷く。そのまま差をつけられ置いていかれる可能性もあるのだが、それはあえて言わないレオンである。

 誰だって父親が落ち込む姿は見たくないのだ。


「では私も夜の準備をしてきます。その後館内を探索してきても良いですか?」

「ああ、わかった。探検するのは良いが、迷子にならないようにな」


 そのアークの言葉に思わず笑いが込み上げる。精神年齢では既に大人のレオンである。その自分が迷子とは心配してくれるのは嬉しいが、なんとも的外れな忠告だと思ったのだ。しかし―――


「迷った……」

とにかく!!

この話が終われば新章へ入れるはずです。

箱物ですよ箱物。え?意味がわからない?すいません。


とにかく今回も読んでいただきありがとうございました。

お気に入り登録、評価は本当にありがたいです。継続の源です。

意見・感想もお待ちしてます。

ではでは今回も読んでいただきありがとうございました。


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