第五十九話 「創造」
瓦礫の上には、相手に向けるその右手に白く輝く魔法陣を展開しながらタキシーを見つめているアレクシアが立っている。
しかしアレクシアも無傷ではなく、左半身に火傷を負ってしまった。
「くっは!やっぱ食らってやがったかぁ!」
「図体を無駄に大きくする能力以外にも奇妙な魔法を使う様ね」
「残念!車両を爆撃したのは俺が仕掛けた地雷だよ、ちなみにこの矢は俺が魔法を使って投げりゃ変な弓よりも飛ぶぜ。やってみるか?」
そう言ってナップザックの武器を見せつけるが、アレクシアはそれを無視して魔法陣を止める。そのままタキシーから見て左にゆっくりと歩き始めた。
タキシーも自分が着ていた服を破って右手を止血した。流石に右手を落とすほどの大怪我は筋肉を膨張させるだけでは流れ出る鮮血を止め切ることは出来ない。
「他にもさっきナディアを攻撃しようとした【アーム】のように腕だけを大きくしたり、部分的に強化して攻撃と防御ができる。便利な能力ね」
「部下を囮にして自分は隠れて情報収集とは、ひっでぇ女王様がいたもんだぜ」
「囮?誰を?」
ハッとして辺りを見ると、さっきタキシーが倒したはずのエリダヌス兵たちは全員『透明な何か』に包まれておりまだ息があった。
「まさか!守っていたのか!?」
(ありえねぇ、俺の攻撃から完璧に守り切っただと!?アレクシア・エリダヌスの能力は情報になかったが、この透明な膜はなんだ?その辺にあった物質じゃねぇな……まさか……)
「ーー【創造魔法】か!?」
創造魔法。通常、魔法とは魔力を使って『何か』を作用させたり、『何か』に干渉して影響を与える『既に存在している物質に対して』を前提とした魔法が主流。
しかし世界には、ゼロから物質を創造する事ができる『その前提』を覆す魔導士がいる。
稀に、という程ではないが主流ではないその魔導士が突如戦場に現れると、主流が身に染みている魔導士は不意をつかれる。
「だが、俺はもうあんたが創造魔導士だと知っちまった。もう隙は与えねぇ!」
「そうね、でもあなたを相手にする私にとってそれはあまりハンデにならないわ」
つまりアレクシアはタキシーのことを舐め切っているということだ。
「抜かせ!」そう言って背中のナップザックから素早く矢を数十本取り出し一気に投げつける。
まるで砲台から弾を発砲したかのような激音を発し、瞬きの間に着弾地点を抉り飛ばす矢。しかしアレクシアは眉ひとつ動かさない。
タキシーはその様子に驚いたが、理由はすぐに分かった。
タキシーが投げつけた無数の矢は全てアレクシアに到達する前に『透明な何か』によって止められていた。
その『透明な何か』には矢が正面から食い込んでいるのではなく、的に向かって進んでいる途中に地面から生えて篦を的確に捉えている。
アレクシアにはタキシーの攻撃が効かない、ただのお遊びでしかないのだ。
「あなたの攻撃は私に届かない。あなたと私では戦いにならないわ」
「何を!?まだまだこれからだろうがぁああああ!!!」
そう言ってタキシーは全身を巨大化させる。この肉体でアレクシアを倒そうというのだろうか。
しかしやはり、アレクシアにとってはただのお遊戯でしかない。
「【硝子創造・硝子砲台】」
四方からタキシーの身体をガラスの砲丸が撃ち抜き肉体強化魔法により強化されたその屈強そうな身体を貫通した。
発砲した砲台は五門、その全てがタキシーの体を捉えた。
「くっ、砲台を事前に......仕掛けて......俺の身体を......!」
「あなたの魔法はその自慢の筋肉のようね。でも私の方が魔力が高かった、それに信念の強さも違う。私には守らなければならないものがある」
完敗。それがこの状況を説明するのに最も適した言葉だった。
「さぁ、目的を話して」




