第五十七話 「合流」
午後二十時、アレクシアとドレシアが乗った魔法車はジェミニの首都に到着した。
道中二人は眠ってしまったようで、ナディアはここで降りると言っていたドレシアだけに声をかけて起こす。
「ドレシア様、ドレシア様。お待たせ致しました、ジェミニ国へ到着致しました」
ドレシアは開きにくい目を擦って目を覚ます。
ここにイシューがいるはずなので、まずは合流しなければならない。
街は広いが、ジェミニには公用の魔法伝言板があるのでそこに書き置きが無いかを見に行くことに。
このままドレシアが別行動するとナディアは聞いていたので彼はアレクシアを寝かせたまま帰国しようと運転手に指示をするが、夜も遅いので今晩は一緒にジェミニで泊まっていくようドレシアはナディアへ提案した。
しかしナディアはその提案を断りこのまま帰国すると言った。
ジェミニからエリダヌスまでは魔法車なら一時間もかからないので、その距離であれば夜道でも大丈夫だろうとナディアは判断したのだ。
ドレシアは了承してナディア達と別れ、早速ジェミニの公用伝言板に向かい始める。
何度か外交公務やイシューの仕事に付き添ってジェミニに来たことがあったので、ドレシアにはジェミニの土地勘があった。
前に来た時は首都の中央付近に伝言板があったはずだが、と考えながら歩いていると早速伝言板を見つけた。
魔法伝言板は数十個ものパネルがあり、捜索用のパネルを使って検索できる。
ジェミニは人口二十三万人とそこそこの大国だ。街の数も七つあり、その中でも最も人が集まる首都というだけあって伝言板にも多くの伝言が残されている。
流石にこれを人の目で一つ一つ探すのは朝までかかってしまう。
早速捜索パネルで探してみると、イシューの書いた伝言が見つかった。
やはり仕事で通い詰めているだけあって、この街を知り尽くしているイシューは伝言板を使っていた。
伝言板には『ドレシアへ、ハピネスホテルで待つ。イシュー』と書かれていた。
ハピネスホテルとは前にイシューの仕事でアレクシアとドレシアが同行した時に泊まったホテルだ。
当時はイシューが自慢のホテルだと自信満々に予約してくれたが、硬いベッドでこのベッドではもう寝れないと内心思っていた。
だがそこで待つと言われたら行かない訳にはいかずドレシアはホテルに向かった。
ハピネスホテルに到着すると、コンシェルジュが一礼して予約か飛び込みか聞かれたのでイシューという人間と待ち合わせていると答えたところイシューは六階の六一七号室と六一八号室を抑えてくれていたようだ。
別に一部屋でも良いのにと思いながらドレシアはエレベーターを上がり、六一七号室に入る。
すると部屋の中は真っ暗だった。
六一八号室の方にいるのかとドレシアが部屋を退室しようとしたところ、急に部屋の電気がついて下に置いてあったライトに電気が点く。
ドレシアはよく見たら発光魔体かと気が付き、更に目線をあげるとベッドの上にスーツでキメているイシューが立っていた。
「わ!びっくりしたぁ!」
「ドレシア!俺とゆっくりーー」
「ごめん、こっちがイシューの部屋だったのね。お邪魔しましたー」
悲しくも閉まる扉にイシューは手に持っていた花を食べ始めた。
「ドレシアーーー!!!」
二人の夜は、ロマンチックとはいかないがもう少し更けていきそうだ。
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少し前、ドレシアと別れたナディア達はエリダヌス国への帰路に就いていた。
ジェミニの首都を出て数十分経ったが未だジェミニ領土、エリダヌス領土に入るのはもう少し先かとナディアは車両の窓から顔を出していた。
同じ車両に乗っている二人の兵士も二日も公務で出ていたこともあり、疲労が伸し掛かる身体をこっくりこっくり揺らしながら車両の中でうとうとしていた。
すると次の瞬間ーー
ドンッ!
大きな音に二人の兵士は同時に目を覚ます。
すると車両の中には顔から血を流して地面に伏して倒れているナディアの姿。
敵襲だ。
しかしそれに気付くのが遅れてしまった二人は戦場に立つ身としては失格。既に後手に回り、その報いを間もなく受ける。
そんな予感すら感じることができず一人は隣の車両へ、もう一人は敵の姿を確認しようと窓から身を乗り出しそれぞれ動き出すが、二人が三両目を脱出する前にその車両は大きな爆発によって吹き飛ばされてしまった。




