第五十四話 「確認」
この天空庭園に入ってからくぐった中で一番大きな門が開く。
それに相応しい、今までの門では響かせる事ができなかった巨大な轟音が鳴り響く。
完全には開き切っていない。しかし門は動きを止めた。
『入れ』
アレクシアとドレシアは不思議な感じがした。特にアレクシアは違和感を強く覚える。
魔力や気配をまるで感じない、目の前に人がいる感じがしないのに声だけははっきり聞こえる。
「アスペラル、入ります」
アスペラルがそう言って先に進むので、他の兵やアレクシア達も着いて行く。
アスペラルは目線を足元に置いて歩き進んでいるのが、横目で見て分かったのでアレクシアも同じように歩く。
ドレシアは馬鹿正直に目を瞑っているので、アレクシアが歩き方を教えてドレシアもうっすら目を開いた。
『止まれ』
その号令に合わせて全員がその場にピタッと止まる。
そこで再度アスペラルから順に全員が膝を着いて頭を下げた。
「お待たせ致しました。エリダヌス王国のアレクシア・エリダヌス女王と、同じくドレシア・エリダヌス王女をお連れ致しました」
『アレクシアとドレシア』
ここでアレクシアとドレシアは、声が頭の中ではなく耳から聞こえてくるものだと分かった。
あまりにも通る声に初めは通信魔法や念話魔法で話し掛けているのだろうと思ったが、もしそうであれば頭の中に直接声が響くはず。しかし声は耳から入る。不思議な感覚だ。
「お初にお目にかかります。この度はお招き頂き誠に光栄で御座います。こちらは妹のーー」
『アレクシア』
「っ!」
言葉が詰まる。アレクシアはその先の言葉が出てこなかった。
謎の圧。魔力ではない、存在感?アレクシアは緊張によるものかと思いながらも、正気を保っていられそうもなかった。
すると次の瞬間、ドレシアがアレクシアの頬に手を添えた。
「アリー」
この行動にアレクシアは我を取り戻し、できていなかった呼吸をすぐに再開した。
『そう怯えるな、取って食いやせぬ』
「し、失礼しました……!」
「私はドレシア・エリダヌス、アレクシア・エリダヌスの妹です。この度はお招き頂きありがとうございます。私達は正直、ここに招かれた理由を測りかねておりました。もしよろしければ、その理由をお伺いできますか?」
込み入った質問、しかしいつもとは違ってあまりにも冷静なドレシアにアレクシアもここから自分が引っ張り直すのは無理だと判断して星下の次の言葉を待った。
『理由……理由か……』
「……」
ゆっくり……ゆっくりと、ドレシアはバレないように目線を上げ始めた。その行動にアレクシアもアスペラルも気付いていない。
『ソール』
「……?」
『ソールの影が見える』
「ソール……ですか?」
「……から……ぞ……トレ……」
その声だけは魔法を使っていなかったのかよく聞こえなかった。
しかししばらくして星下からの発言も止まり、その後何も起きない時間が続いて不安に思ったドレシアが声を出す。
「え……あのー、大丈夫でしょうか?」
『……違ったか』
違った、と確かに言った。今の一瞬で何か分かったのだろうか。しかし不用意に動くことも質問することもできない。
『下がれ』
終わった?いや、しかしまだ何も話していない気がする。でも確かに今下がれと言われた。改めてアレクシアとドレシアはなぜ自分達が呼ばれたのかを予測する事はできそうもなかった。
「失礼致します」
戸惑っているアレクシア達を見兼ねてアスペラルが先に声を上げて退室する意を示す。
他の兵士や、為す術がないアレクシアも立ち上がり下を向いたまま回れ右をした。しかし、たった一人ドレシアだけはそのまま動かなかった
「ドレシア?」
「何をしているのですか?早く立って退室しましょう」
するとドレシアは目を閉じたままゆっくりと立ち上がる。
「星下、一つだけ教えて下さい」
そして膝を完全に伸ばして立ち上がった所で、ドレシアはかっと目を見開いた。
しっかりと、しかし確実にドレシアは星下の方を向いてその姿を確認する。
「やっぱり。星下は以前、エリダヌスにいらっしゃいましたよね?」




