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Underworld  作者: 獺八御
第二章 「エリダヌス国編」

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第四十六話 「北」

 成人式から六日後の午後八時。アレクシアとドレシアとイシューは客間に集まってイシューの調査報告を聞こうとしている。

 例によってその場にグランシアはいない。


「成人式のお片付けもようやく落ち着いたみたいだな。城下町の方も大変だったぜ」

「私はみんなの片付けを手伝っただけだけど、アリーがね......」


 アレクシアは右手に湿布を貼っている。

 成人式の後、片付けはドレシアとグランシアが主導で動いていたがアレクシアはアレクシアで大変な思いをしていたようだ。


 それでも右手を湿布如きで済ませているのはファーテル曰く「若さ」だそうだ。


「た、大変だったんだな」

「湿布貼ってたら楽だから大丈夫よ。明日は朝から天空の管理者(スカイオーグ)本部へ出発しなきゃいけないから、早速始めましょう」


 ちょうど六日前にレベルエイト経由で提出したカイン宛の手紙には、明日天空の管理者(スカイオーグ)本部へ向かうことになっているのだ。


「そうだな。じゃあまずは剣に浮かび上がる文字についての報告だが、やっぱり今はもう使われていない文字だった」

 そこまではアレクシアもドレシアも想定内、次のイシューの言葉に注目が集まる。


「過去にどこの国が使っていたか、という事も分からなかった。悪いな」

 二人は肩を落とした。今使われているかどうかより、例え過去でもどこの国が使っていたのかということが重要だったからだ。


「だがーー」

 子供の頃からアレクシアとドレシアの相手をしているイシューは、二人に勿体つけるのもこなれたものだ。

 もう一度二人の注目がイシューに集まる。


「国は分からないが地方は大方見当がついた。ルミリア北部だろうな」

 アレクシアたちのいる大陸は世界から見て東に位置し《ルミリア》という名を持つ。エリダヌスはルミリアの中でも比較的南西地方に位置する。


「たぶん大陸最北国のA-ウルサ国の周辺国だろうな。緯度が分かってないから、純粋な位置までは分かってない」


 しかし何故、大陸北部の文字だと予想できるのか?

「大陸連合の全天統一宣言以降、加盟国の言語は統一されたが統一宣言前はそれぞれの国の言語はバラバラだっただろ?特に北部は民族意識が強かったから統一後もなかなか言葉の訛りが抜けなくてな、より多くの文献資料が残ってて簡単に調べられたよ」


 そう言ってイシューが机に広げた本には、剣に浮かび上がる絵のような文字と同じような文字が書かれている。

 少し違うのは、剣の文字よりしっかり文字として認識できて、現代の言葉に似通っていることだ。

「この文字の語源になったのが、剣の文字なんじゃないかと思う」


 確かに、この文字は剣の文字と何らかの共通点を見出せそうだ。


「一応私とアリーもね、文字についてじゃないけど剣について調べてみたの。イシューが突き止めた地方のことは分からなかったけど、ここまで錆びていたら普通は簡単に折れてしまうでしょ?でもアリーがこれを見つけたのは地面に刺さっている状態。つまり、地面に刺すときは錆びていなかったか、錆びている状態で地面に刺したけど折れなかったってこと」


 そう、錆びとは金属の腐食でありそれが表面のみならず剣の芯に到達している状態で何かを切ったり刺したりしようとした場合、剣は錆により耐久性が低下して簡単に折れてしまう。

「でも私が剣の刺さっていた場所まで歩いた時間を考えても、エリダヌスの国領を抜けてはいないわ。それを考慮しても首都の近くだから、今まで絶対にその場所は通っているけど剣が刺さっているのを見た事はなかった」


「その場所に行ったことがある確かな根拠はあるのか?」

 アレクシアにその根拠はなかった。そもそもあんなに木々が開けた場所があること自体初めて知った。


「アレクシアが剣の刺してある場所に空間転移系の魔法で連行されたか、逆に剣をこの首都まで転送してきたか、いずれの可能性も確実に否定はできない」

「でも仮にアリーが転送されたとしても、剣が転送されたとしてもアリーは魔力感知ができるから気が付くでしょ?」

「確かに、とすると錆びてから刺さった可能性が高いってことか。で錆びてるんだったら何で刺さるんだってことだよな」


「私とドレシアでエリダヌスの鍛冶屋にこの剣を鑑定に出したわ。鍛冶屋の店主も魔導士だから、土に刺さる強度があるなら大丈夫だと思ってこの剣を研磨して復元してもらうことにしたの。けどーー」


 そう言ってアレクシアは剣を取り出した。

 その剣は、全く変わっていない錆びついたままの剣だった。


「この剣は、外からの魔法を受け付けなかったわ」

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