第四十五話 「見えるもの」
錆びた剣を高く掲げてアレクシアは決意を二人に表明した。
まあ、そうなるだろうなと感じていた二人。一度決めるとその後は何を言っても聞かないのがアレクシアだと二人は知っている。
「私とドレシアよりもイシューの方が自由に動けるしね、それに何かを始める時はいつも一緒だったでしょう?それはこれから先も変わらないわ」
「それで俺を呼んだってわけか、良い口実だなぁ。グランシアはどうする?」
「試験が終わるまではこの話はなし!終わったら協力してもらいましょ!」
まるで自分がそうすることを決めたかのようなドヤ顔を決め込むドレシアだが、アレクシアは特に何も言わなかった。
「そっかそっか。で、糸口はあるのかよ?ノーヒントから始めるのは流石に厳しいぜ」
「今見せたように、この剣には魔力を込めると光り輝く文字が浮かび上がるわ。まずはこの文字がどこの文字かを調べることで何かの手掛かりになると思っているんだけど。どう思う?」
ドレシアはその作戦に大賛成だが、ここでもイシューが苦悶の表情を浮かべる。
「そうだな。ただドレシアはともかく、アレクシアは分かるだろ?この文字、っていうかこれ文字か?」
「私もそう思った!これ、鳥とか蛇とかナイフみたいな図形が並んでいるばかりで文字じゃないんじゃない?」
その二人の反応を見て、アレクシアだけは違う反応を示す。
「え?文字だよ、これは」
そう、実はアレクシアが魔力を込めることで浮かび上がる光る文字は鳥や蛇のような図形が描かれているだけで、それを一目で文字だと判別したのはアレクシアだけだった。
「その根拠もよく分かんねぇが、仮にこれを文字として調査を進めるならかなり難しいな。こんな文字が使われている国はもう今は多分世界中どこにもねぇんじゃねぇかな」
三人が考えに詰まっていると、新しい声が部屋に入ってきた。
「お取り込み中失礼致します。アレクシア様、まもなく夜の宴会が終了しますのでご挨拶にいらしていただけませんでしょうか?」
「しまった!」
物珍しい不思議体験につい今日の宴会のことを忘れて話に熱中してしまった。
「すみません!すぐに行きます!」
一旦アレクシアは、謎の文字調査をイシューに頼んで来賓者への挨拶に向かうため部屋を後にした。
部屋に取り残されるドレシアとイシュー。
イシューは咳払いをして、わざとらしくこの先の行動について悩みあぐねた様子を見せる。
「あーあ、アレクシアも行っちまったし!この先どうしようかなー!」
別にわざわざ口に出す必要もないことだ。
ドレシアはそんなイシューなど見向きもせずに、剣を見て考え込んでいる。既にアレクシアが魔力を込めた時の文字は消えていた。
しばらくリアクションを待ったがなかなか相手をしてくれないドレシアに痺れを切らしてイシューが話しかける。
「ドレシアはさっきの文字は見れないだろ。魔法が使えないんだから」
「う〜ん......確かにさっきの文字、読めはしないんだけどどこかで見た覚えがあるのよね」
どこで見たか、というのが重要でイシューはそれについて質問するが、ドレシアは全く覚えがないようだ。
「でも、こんな特徴的な文字なんだから見覚えないと引っかからないだろ。やっぱどこかでアレクシアと見たことあるんじゃないか?」
「んーそうよねー、まぁもう少し考えてみるわ。明日からは成人式の後片付けで忙しいから、落ち着いたらまた連絡するわね。それまでにイシューも文字のことよろしく。もしグランシアに何か聞かれても秘密にしてね。じゃ」
ドレシアはそう言い、剣を持ったままバタバタとイシューを追い出してしまった。
イシューは人の気も知らないでと内心イライラするが、「また連絡するね」というドレシアの言葉に少し浮かれながら城を後にするのだった。
そして成人式から六日が経った日の午後八時。
その日の夕食を食べ終えたアレクシアとドレシアは、客間にイシューを呼びつけた。
「よし、じゃあこの一週間の調査報告を始める」




