第四十三話 「伝言」
アレクシアの前に現れた謎のフード男と錆びた剣。
剣のある場所まで案内した後フードの男は姿を消したが、剣に魔力を込めるとその刀身は光り輝きある文字を浮かび上がらせた。
アレクシアは驚きつつもその文字をよく見てみる。しかしその文字には見覚えがなく、読むことは愚かどこの文字かを判別することもできなかった。
自分たちが使っていない文字でも大体どの辺りの地方で使っている文字かは大方見当がつきそうなものだが、全く見当がつかない文字というのがより謎を深める。
しかしこれは逆に手がかりになるかもしれない。天空の管理者の全天統一宣言以降はほとんどの国が使用する言語を統一したので、いまどき標準語以外の文字を使っているとなるとかなりこの剣の出自が限られそうだ。
しかしこの剣は錆びている。
作られたのが何年も前だとすると、標準語に変わる以前までこの言語を使っていた国がこの剣を作ったのかもしれない。
そうすると今その国に手がかりはあるだろうか?
どちらにしろこの剣を一度調べる必要があると判断したアレクシアは、エリダヌス城に剣を持ち帰ることにした。
帰り道、アレクシアはあのフードの男のことを考えていた。
なぜ自分に接触してきたんだろう?この剣と自分を引き合わせるため?
とすると、自分とこの剣が巡り合ったことであの男には何らかのメリットがあった?それともこの剣を自分が使うことで何かが起きるのか?
いつまでも考えを完結させることができないアレクシアは、そんな堂々巡りを繰り返しながら城へ戻る。
城に戻るとファーテルがいそいそと寄ってきた。
「アレクシア様、大丈夫ですか!?城下町での挨拶後、お姿が見えなくなったと報告を受けてから心配しましたよ......」
「ごめんなさい、大丈夫です。レベルエイト様は?」
レベルエイトは既に城を出発したそうだ。無事にファーテルも手紙を渡せたそうでアレクシアも一安心だ。
すると鼻水を垂らしながらアレクシアの名前を叫びながらドレシアが走ってきた。
「すみません、来賓の皆様には内密にしていたのですが兵とドレシア様、グランシア様には既に事態を共有いたしました」
「じんばいじだんだがらあああーーー(心配したんだからあああーーー)」
アレクシアはドレシアにも謝って、ドレシアにだけ部屋に来るよう奥の廊下へ誘い込んだ。
「どうじだの(どうしたの)」
アレクシアはハンカチを渡してドレシアに鼻を拭かせた。
「イシューも城下町の催しには参加しているわよね?すぐに呼んでくれる?」
現在進行形で学校に通っているグランシアと違い、アレクシアとドレシアにはたった一人の男友達であり、たった一人の幼馴染がいる。
もちろん彼女達も当時はそれなりに学友はいたが、今も交流が続いているとなればその一人しか名前が出てこない。それがイシューだ。
特にドレシアとは同い年で仲が良く、身分は高くないがドレシアと幼稚園からずっと同じ環境で育ってきた。
アレクシアとグランシアを除いてドレシアと最も心を通わせることができる友人だ。
子供の頃からよく親の目を盗んで冒険に出たり、放課後に遊んだりと青春を共にしていた。
そんな青春時代に何かをするなら大体一緒だったことから、アレクシア達は国政に関係のないことに限って大きなことを始める時は大体イシューも入れたメンバーで相談して話を進めることにしている。
「でもグランは呼ばなくていいの?」
「さっきも言ったでしょ?グランシアは試験が控えてるから、終わるまでこの話は秘密にしておきたいの」
ドレシアはアレクシアの計らいに納得し、部屋まで行った後「少し待ってて」と言ってイシューを呼びに行った。
正直ドレシアは、ずっと前から楽しみにしていた姉の成人式を心置き無く満喫できないのは残念だった。
しかし、幼い頃からずっとアリー、アリーと懐いてきたお姉ちゃんっ子だったので、アレクシアの方から求められていることが何よりも嬉しくてたまらなかった。
さっきまでアレクシアのいた城下町のステージでは音楽隊による演奏が始まり、観客は穏やかな時を過ごしていた。
そんな中、たった一人だけ辺りの料理を食い回っている男がいた。
「うみゃいうみゃい!アレクシアには感謝だなー、今度木の実をたんまり持って行ってやらねぇとな」
ドレシアは城を出て、その男を探しに城下町へ走る。




