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Underworld  作者: 獺八御
第二章 「エリダヌス国編」

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第三十七話 「誕生日」

 その夜は、懐かしい夢を見た。

 彼?彼女?には子供の頃に出会ったのだが、物珍しい姿だったのでよく覚えている。そんな存在と夢でもう一度出会うことができた。


 大人になると、現実でありえない事は夢や幻と捉えてしまう。しかし子供は純粋にそれを『奇跡が起きた』と受け止めることができる。

 そんな現実と奇跡の間に今の私は存在している。


 最初に起きた奇跡もそうだった。私の隣には人の形ではないそれがいて、私は友達になった。

 私はその姿を、大人になった今でもドラゴンだと思っている。


「誕生日おめでとう、アレクシア」


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


 アレクシアはベッドの中で、暖かく太陽の匂いが閉じ込められた毛布とは別に香ばしい匂いに包まれて目を閉じたまま眠りから目を覚ました。

 いつもより強い眠気で、まだいつも起きる時間ではないと時計を見なくても分かる。しかし、早くに起こされたことに腹を立てはしない。

 いつもだったらこの状況に少なからず機嫌を損ねて二度寝をするところだが、今日は違う。


 二週間ほど前から城下町でも準備をしているのは分かっていたが、誰よりもそれを待ち望んでいたのは自分と妹だとアレクシアは確信している。

 今日はエリダヌス王国『王女』であるアレクシアが二十歳になる誕生日、そして記念すべき成人式の朝だ。


 アレクシアは例えそれが喜ばしい待ちに待った日でも、両手を上げて「わぉわぉ!」などと声を出して喜ぶことはしない。

 あくまでも今日からは国を背負う『女王』という自覚を持って冷静に、慎ましくその日を迎えて祝いを受け入れる。


 ベットから起き上がったアレクシアは美しくも短い金髪を揺らして今日着るドレスを自室で選ぶ。起床時間になれば召使いが部屋へ起こしに来るので顔を洗うのも歯を磨くのも焦る必要はない。


 すると、両手を上げて「わぉわぉ!」と声を上げながら部屋に入ってくる女性が一人。

 アレクシアと同じ金髪を持ち、アレクシアとは対照的に髪を伸ばす長髪の彼女は、アレクシアの妹でありエリダヌス王国王位継承権第二位にあたるドレシアだ。


 アレクシアは二歳年下の妹ドレシアと五歳年下の弟グランシアを弟妹に持つ、エリダヌス王族の長女を務める生粋のお嬢様だ。


「ドレシア、落ち着きなさい」

「そんなの無理よ!だってアリーの誕生日だよ!ずっと前から楽しみにしてたんだから、私誰かのお誕生日って大好き!」

 「もうっ」と言いながらも、そんな風に喜んでいるドレシアを見るのがアレクシアも何より幸せだった。


「今日は連合からもお客様が来るしね。おめかししなきゃ、じゃあね!」

「あ、グランシアにも準備するように言っておいてね」

 「はいはーい」と言いながらドレシアは部屋の扉に向かい、去り際に「あっ、お誕生日おめでと、姉さん!」と言って扉を閉めた。今日くらいはこの騒がしさも許しても良いかなとアレクシアもご機嫌なまま支度を始める。


 十一月十四日午前十時、城下町の門が開き来賓の招待客たちが次々と城内に入る。

 城下町の民家にはフラッグガーランドが掲げられており、出店も賑わっている。お祝いムード満載だ。

 

 既に城内には丸焼きの七面鳥や魚のムニエル、パイやケーキなど豪勢な食事がこれ見よがしに並んでいる。


 城門開門から一時間後、午前十一時から国内の町長や主要人物達と VIP を揃えてチャペルにて成人式が執り行われる。

 その五分前、アレクシアはチャペルの外扉正面で登壇直前の準備を整えていた。中には美しいドレスに身を包んだドレシアと、同じようにビシッと赤い正装で締めているグランシアの後ろ姿が見える。


「緊張しますね......」

「大丈夫ですよ、アレクシア様」


 アレクシアの傍にいる昔の作曲家のように白髪を左右両方でくるりと巻いた、高身長細身の男性はファーテル公爵。

 訳あってアレクシアとドレシアの親代わりのような存在として二人の面倒を見てきて、

 しかしファーテルは今親代わりの公務などではなく、大人になった本当の娘を送り出す心持ちそのものだった。


「行ってらっしゃいませ、その大きくなられた姿を皇太后と天国で見守っている国王にどうかお見せください」

「ファーテル、今の女王は私です」

「失礼いたしました」

「ふふっ、少し強がってみただけです。では行って参ります、もう一人のお父さん!」


 ファーテルの目尻には少しばかり涙が浮かび、その背中を見送った。

 間もなくエリダヌスに新しい女王が誕生する。

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