第三十三話 「接続魔法」
Underworldで漂う魔力に導かれ、不気味な敵と遭遇した千宙達。
四人はまるで道化師のような催眠術師の手にかかり、身動きが出来ない状態に陥る。
「あ、あなたは……」
「ミーはジャミン。ミーの催眠魔法で、ずらーっとこいつらを連れていく訳よ。だから邪魔すんなって話」
『連れていく』という言葉に、千宙はこいつに住民達を殺す意思はないと判断した。だが迂闊な言動や行動は住民を人質に取られかねないので危険。
それに、邪魔者は殺せと『言われている』とやつは言った。これは何者かの指示の元、この行動を起こしている可能性が高いと判断できる。
敵の目的が見えないこの状況で交戦するのは危険だが、斎を呼びに行っている時間も周りに助けを探し求める時間もない。単独でもこいつを倒すしか無い。
ゆっくりとジャミンは千宙に近付くが、そんな状況下でも千宙は必死に、だが冷静に分析した。
(こいつも魔法陣を使わないで魔法を発動した。催眠魔法なら催眠を導入するきっかけがあるはず。目?耳?私達が魔法にかかったトリガーが分からない。それを見つけて対策しないと、ここを凌いでも同じ結果だ!)
「別にミーは闘うのがめーっちゃ好きって訳じゃねぇからなぁ。仕事だし、スパーっと首切って終わりにしちゃうぜぇ」
そう言って、ジャミンはサーカスで使うような両刃のナイフを取り出した。
それを見て雅博は、少しでも自分の元に到達する時間を稼ごうとジャミンと自分の間に土の壁を作り出した。
すると、雅博は急に操り糸が取れた人形のように脱力した様子で地面に倒れ込んだ。
ジャミンは「あっ!」と言うが、千宙もその様子を見逃してはいない。
「みどうくん!私達とあいつの間にも壁を!」
すぐに雅博は壁を作り出した。三人も自由になると同時にジャミンは壁を破壊して三人に迫った。
「ちっくしょー!【操り人形】!」
手を前に出して魔法を使うジャミン。すると今度その魔法にかかったのは、雅博、成未、未巴琉の三人。千宙にはかからなかった。
すかさず動ける千宙が攻撃を仕掛けるが、魔導士として鍛えられた成人男性との組手になるとやはり肉体の強度や格闘技術がものを言う。千宙には少し手に余る相手で、千宙は一度ジャミンから距離を取る。
しかし何故千宙だけジャミンの拘束を逃れることができたのだろうか。既に千宙はジャミンの魔法を看破していた。
ジャミンの魔法は催眠魔法なんて大層なものではなく、千宙と同じ『接続魔法』だ。
ただ、千宙の魔法と比較して拘束に特化した接続魔法の強化版だと推察できる。
接続魔法の弱点を千宙はよく理解している。それは、接続されている魔力の糸を別の魔力で断ち切ること。
さっき拘束を解いた雅博の土壁も、雅博の魔力が込められた物体で糸を遮蔽したので断ち切ることができたのだ。
「お生憎様、私も接続魔法の使い手なのよ!」
しかしこれは千宙にとってチャンスだった。
同じ接続魔法の使い手、更に相手は自分よりも格上の接続魔法が使える。自分の接続魔法を強化し、もっと使い勝手を良くする為にはこの敵と会敵する場面はいつか必要だった。
で、あるならば、やはりあの時現れたトンネルを進んだのは正解だった。
もう一度ジャミンの懐に殴り込みに行く。魔蓋組手で組み合った経験が活きて、少しずつ相手の動きも見切れてきた。
隙、隙、隙!隙を探して動きを見切ると、敵が繰り出した拳を避けた先に背後を取れる隙が見えた。
待っていましたと言わんばかりにそこに裏拳を合わせる千宙。しかしその動きはジャミンの身体に到達する寸前で止まってしまう。
ニヤリと笑ったジャミンは、千宙に向かって全力のボディブローを繰り出す。
鈍い音が千宙の身体に響き、吹き飛ばされてしまった。
「甘い甘い!お前が攻撃する瞬間にミーの魔法がびたーっとお前の身体を止めるわけよぉ!ミーの魔法を見破った程度で勝った気になってんじゃねぇぜぇー?」
そう、魔法を見破ってもしっかりそれに対処できなければ、その洞察眼もまるで意味をなさないのだ。
「まだまだ、ここからが魔導士の戦いよ!」




