第三十一話 「誘い」
ミュリエムから貰った上着を羽織って、四人はヴィオル地区探索に向けて出発の準備を整えた。
「いいかい?ヴィオルからは出ないんだよ」
「もちろんです!っていうか、魔力が無いので本魔法使えないから変身できないので無理ですねー」
それなら安心、と言って斎は四人を見送った。
「斎さんには感謝しないとね。この修行で何とか戦える程になれば良いんだけど」
「もちろん今も感謝してますが、本当にその真価が問われるのはこの力を試してからですね。僕は裏技使えば戦えてた訳ですし!」
「あの力はもうダメ。私の治癒魔法でも限界あるし、斎さんじゃないと抑えられないからね」
四人は今居る街の正面と思われる出入口から街を出た。
大きなゲートには、千宙達でも解読できる文字で「また来てね」と書いてある。文字も地上と同じ文字が使われているようだ。
街を出るとまるで砂漠のような、広大な地が続いていた。
更に先に進むと目の前に大きな壁が現れる。上の方を見るとその壁はまるで空に繋がっているように見えて、ここがヴィオルの縁だと分かる。
かなり歩いたので手元にある携帯時計を確認しようと見てみると、時刻は十七時を過ぎていた。
折角ここまで来たし、この壁に沿って歩くと別の街に行ける可能性もあるので今日はこの辺りで野宿して明日次の目的地を目指して足を進めることにする。
まだ暗くはなっていないが、野宿する為に近くに燃やせる材料が無いかを探しに行く事にする。
荷物を置いて屈んだその瞬間、全員の身体がビクッと動いた。
魔力が体内に充足していない状態で、外気の魔力に対していつもより鋭敏になっているのだ。
「この魔力……」
「斎さんの言ってた、地区に充満している魔力でしょうか?僕の魔力と近い、土属性の魔力ですね」
土属性の魔力らしきものを雅博が感知してから少し経ち、更なる異変が発生する。
「地震だ!」
「でかい」
大きな地震が発生、辺りの砂も砂埃を立てて舞い上がっている。
そしてその地震が引き起こしたのかは定かではないが、それまで千宙達の前に立ちはだかっていた壁にヒビを入れ、次第にそのヒビは広がり大きな穴となった。
その現象に四人は言葉を交わすことなく呆然と立ち尽くすが、千宙だけは何かを感じていた。
その確証も証拠もなかったがこの先に進むとほんの少し、気が遠くなるほど僅かだが、遥実に近付ける気がした。
「進もう」
何かに引き寄せられるように歩みを進める千宙を三人は追い掛けた。
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そしてその頃、第二層ロストラム拠点ではキリアが高質そうな革製の椅子に腰掛けながら、同じ部屋でキリアの向かいに設置されているソファーに腰掛けている男と話をしていた。
「それにしてもあの地上人はなかなかに周到でしたね。俺達のことを調べあげた上で何らかの計画を遂行しようとしたに決まっています」
「そうだな、アキラやべルージュにも接触していたというのだから、やはりロストラム中枢メンバーへの接触を試みていたのだろう。その点は審問書にも書いたから、判決に反映されているはずだ」
「口頭弁論もあったのに、終始大した陳述がなかったですしね。判決言い渡しの時も表情ひとつ変えずに何考えてんだか。たぶん上告してきますよ、今回の控訴も前回と変わりませんでしたし、地底法じゃ裁判は無限に上告できますからね。いつまでやるか見ものですよ」
ロストラム中央裁判所では、少し前に地底国家法違反の罪に問われていた御光遥実の第二審が行われていた。
午前中に口頭弁論、午後に証人尋問をし、最後に判決を言い渡す単日判決制の裁判だったが、そこで遥実には第五層 《地獄地区》の無期懲役判決が言い渡された。
近い将来の話だが、被告人はこの判決を不服として上告し第三審の開廷を請求する。




