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Underworld  作者: 獺八御
第一章 「Underworld 突入編」

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第二十九話 「夕飯」

 その晩の夕飯は斎がカレーを振る舞ってくれた。地底で採れた人参やジャガイモをふんだんに使った野菜カレーだ。

 調理を手伝って野菜を包丁で刻んでいると、ふと千宙は疑問に思う。


「そう言えば地底の野菜ってどうやって育つんですか?地上は太陽があるし雨も降るけど、地底に天気はありませんよね?」

「天気がある地区もあるよ。この地区はずっと晴れだけどね」

「そう言えば、最初に僕たちが入った地区もかなり眩しい光に満ちていましたけど、あれは太陽じゃないんですかね」

「そりゃ地底に太陽はないさ。そういうのは空気中に発光と発熱の特性がある微量な魔力が舞ってるのさ。野菜はそれで育つし、雨は降らなくても水やりでどうにでもなるしね」


「雨が降る地区はどうなってるんですか?」

「雨が降る地区も同じで、時々発水する特性を持つ魔力が空気中に舞っているのさ。雨が降る時はそういう魔力が地区の上部に溜まっている時だけど、地区の下の方に魔力が溜まってるとたまに足元が水浸しになるよ。他にも時々発電する魔力とか、病原体を発する魔力とかもあるから、事前に魔力感知で調べるのが賢明だね」


 本当に自分たちの常識が通用せず、想像もしない現象がたくさん起こる世界に四人は少しワクワクしていた。


 カレーが完成し五人は食卓に着こうとするが、雅博は千宙を呼び出して斎には聞こえない場所であることを気にかけた。

「星導先輩、斎さんのご飯はいいんですか?」


 先日ミュリエムの家に行ってから地底での行動は気をつけるようにと千宙からお達しが出たきっかけとなる出来事が、まさに今も起きようとしている。

 しかし今回、千宙は何故かあまり警戒する必要性を感じていなかった。

「そうね......まあ今回は作るところも見ていたし、大丈夫かな」


 お許しを得た雅博は飛び跳ねて食卓に向かった。千宙も追いかけて全員でカレーを食べる。


 食卓では千宙達が地上でどんな生活をしていたのかという話になった。

「自己紹介の時にも話しましたけど私は天体観測が趣味でしたね。実際に空中に引くことはできないですけど、指と指の間になら接続魔法《コネクション》の糸を出すことができるのでそれで星座を辿ったりするんです」

「ロマンチストだね、乙女じゃないか」

 乙女、自分とは程遠い単語だと千宙は自覚した。

 これまで恋愛や女の子らしいことなど全くしてこなかった千宙にとって、この世界に来てこれまでの趣味や磨いてきた学才が活かせないのは息苦しいことこの上ないのだ。


「僕はなんでかわかりませんけど地面っていうか、土地にすごい惹かれるんですよね」

「みどうくんのは魔法のせいじゃない?自分の魔法が土魔法(ガイアマジック)だし、体内の魔力が似た物質に惹かれてる的な?」

「それはあるかもしれませんけど......本当にそんな単純なことなんですかね」

「まあ深いこと考えても仕方ないさ、ほれ、食いなされ」

 そう言って斎は更に雅博の器にカレーを盛り込む。


 その夜は修行の時間があったお陰か、とても初対面とは思えないほど斎にとっても千宙達にとっても濃密な時間を過ごした。


 夕飯を食べ終わって、すでに女子三人プラス老婆一人は風呂を済ませていた。最後に入浴した雅博も上がってきてリビングに集う。


「明日は、修行もするけど少しこの街を見て回ろうか。いいですよね?斎さん」

「この地区から出ないんだったら良いよ。ここは私もいるし街自体も特殊だが、地区外は政府の息がかかってるからね」


 四人は心地良い返事をして寝室に向かった。すると雅博と成未が斎に止められる。

「お前はこっちだろう、何を当然のように女子と同じ部屋で眠ろうとしてるんだい」

 言われてみればこれまでバタバタしていて全く意識していなかったが、男女混同の部屋で寝ていた千宙達。


「え、いや!僕は、別に、そんな!違うんです!」

「黙りな。女子と寝るのはちゃんとお前が修羅場を乗り越えてからだよ」

「修羅場は乗り越えた気がーー」

 雅博は斎に尻を蹴り飛ばされてこれ以上の問答は無用だと痛感した。

 そして女子は二階へ、雅博は奥の寝室へと向かっていく。


 取り残されたのは成未だ。

「あのー、私も寝室に行って良いですか?」

「まぁ、少し座りな」

 二人はダイニングテーブルに向かい合って座っている。成未にとっては少し気まずい時間だ。なぜ呼び出されたのか、皆目見当もつかなかった。

 何かやらかしてしまっただろうか?しかし逆鱗に触れることは何もしていないし。


「さっきあんたの魔法を聞いた時、問い詰めちまったろう?」

 すると、それまでたじろぐ表情をしていた成未が急速にその陽気さを落とし重く暗い表情になる。千宙達にも見せたことがない表情だ。

「すまなかったね、千宙達にも隠していたんだろう?私だってこの年まで生きてるんだ、地上のことを何も知らないわけじゃないんだよ」


 時刻はまもなく午後十一時を回る。二人だけの部屋には、さっきまでの喧騒とは違って寂れた古時計の音しか響いていない。

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