第二十六話 「リーダー」
身魔変異の状態が続くと死ぬ。
冷静に考えれば、肉体を魔力に変換し続けるなど文字通り命を削っているようなものだ。
「特徴として、身魔変異発動時は魔力の色が血肉の赤色になる。もちろん上手く使えば強力な武器になるが、万全にコントロールせず感情に身を任せてその力を使い続けると、早死する」
四人は黙ってしまった。千宙は、あるいは雅博にこの力さえあれば地底四天王とも張り合えるのではないかとさえ期待していた。
「そんなこと、魔法学校では一度もーー」
「術者の身体を消費して魔力に変質させる。そんな死に近づける戦法なんて教えられると思うか?教えたとて悪用するものが多く現れて力のバランスは崩れた挙句、死人続出だよ」
しかしそんな話を聞いても尚、雅博は拳を握って真っ直ぐに前を見つめている。
「それでも、この力と俺の命で星導先輩や成未先輩、白砂山と遥実先輩も救えるなら、俺はーー」
そう固く決意しかけた雅博の頭を、斎はぐーで殴った。ぐーで。
「死ぬことが全てじゃないだろう。生きて助けてこそ、真の救済になるんだよ」
それについては雅博以外の三人も同意見だった。
「安心しな、あんたらを死なせないように叩き上げてやるから!その為の修行だよ」
「そういえば、さっきのコップ!」
「早く来な、私の気が変わらない内にね」
雅博と成未もベッドから出て、四人はリビングへ移動した。
ダイニングテーブルには水の入ったコップと空のコップが二つ置いたままになっている。いずれもガラス製だ。
椅子が四脚しかないので、斎は部屋の隅からもう一つ椅子を持ってきて五人でテーブルを囲んでいる。
「さぁ、じゃあ今から修行を始めるよ!使うのはこの二つのコップだ。と、その前にお前さんらのことを教えてくれ。名前と好きなこととか得意なこと、魔法も教えてくれ」
斎の話に、まずはあんたから自己紹介してくれよという眼差しを浴びせる四人。その視線を察して、流石の斎も空気を読んで自己紹介をした。
「神喰斎だ。別に好きなことも得意なこともありゃしないけどね。魔法は神獣魔法だよ、よろしくね」
あまりパッとした情報は判明しなかったが一応拍手が起こり、それに続いて挙手をしたのは未巴琉だ。
「白砂山未巴琉でーす!好きな事はスイーツ巡りで、得意なことは四つ葉のクローバーを見つけることでーす!魔法は本魔法を使います!よろしくでーす!」
元気いっぱいの挨拶に斎も喜んでいる。
「じゃあ次は僕が。観堂岩雅博です、好きなことと得意なことは同じでその土地の歴史とかそういうの調べるのですかね。あ、あと掃除も得意です。魔法は土魔法ですね、よろしくお願いします」
いかにも普通の挨拶に斎も普通の表情だ。
「次は私、業羅成未です。好きなこと......なのかは分かりませんが中学の頃からボランティアとかやるのが好きです。得意なことはバドミントンですかね、中学はバド部に入ってました。魔法は治癒魔法が使えます。よろしくです!」
「本当に?」
場が凍りつく。斎の問いかけに隠された真意を、成未以外は感じ取ることが出来なかった。
「ほ、本当ですよ!こんなところで嘘ついても、良いことありませんし」
斎は腑に落ちなそうな表情をして、その回答に渋々納得した。
「最後は私ね。星導千宙です。好きなこと……天体観測ですかね、中学の時は生徒会の会長やってたのでリーダーとかは得意かなって思います。魔法は接続魔法です。よろしくお願いします」
「ということは、あんたがこの四人の中でリーダーってことだね?」
「え?あ、まあ……別に明確に決めた訳では無いですけど」
「そうかい。なら、あんたがしっかり守んないとね」
別に責められたわけでも叱られたわけでもない。しかし、千宙の全身には少しだけ身が引き締まる感じが迸る。
「うん!未巴琉、雅博、成未、千宙。みんな良い名前だねぇ、これからビシバシ行くからよろしく頼むよ!」
するとここで、千宙が挙手をする。
「その前に、一つ質問良いですか?」
「お、なんだい?リーダー」
「リーダーであるならば尚更ここは明確にしておきたいです。斎さんは何で私たちを助けてくれるんですか?」
虚を突く、だが確かにまだ明らかにされていないその理由に四人は斎の次の言葉に注目した。




