第十九話 「ヴィオルの街」
街に出てみると、本当に千宙達の言っていた通りで所謂「クソガキ」っぽそうな輩がウヨウヨいる。
街の風体は西部劇に出てくる離れの街のようだ。
早速辺りにいる少年少女老若男女に手当たり次第に聞いて回った。お構いなしと決めたらお構いなし、千宙が遥実の名前を出して直接居場所を聞いたのを皮切りに他の三人も遥実の居場所を聞いて回る。
「知るかよ、そんなやつ」
「え、ハルミって男なの!?女みたいな名前ー(笑)」
「姉ちゃんかわいいねぇー!」
全く話にならなかった。
スラム街の弊害というにはあまりに大きすぎる代償に四人は絶望し、聞き込みの途中では街を出ようかとさえ考えた。
ここで少し趣向を変えて、街ゆく者たちではなく街を動かしている者に聞いてみようと成未が提案した。
するとこれが思いの外、妙案だった。
「この前捕まったやつだろ?もうそろそろ一年経つかなぁ、俺の店にも来たから分かるよ」
「どこにいんのかは分からないけど、政府は容赦ないからねぇ」
「場所は知りませんが、犯した犯罪が重罪ですからね。助けるなら、早いほうが良いですよ」
千宙は最後に話を聞いたバーの店主に他の質問もした。
「なんで助けることまで......私たちのことをロストラムの兵士たちに、通報しないんですか?」
「この辺は言ってしまえばハズレ者の集まりですからね。実は私もこの町で育ったんですよ。子供の頃は私も色々と悪さもしましたが、同じようにここの大人に良くしてもらいました。今度は私の番ということですね」
バーを出て成未はしみじみしていた。
「やっぱり、地底の人ってみんな良い人なんだね。自分が信じる道を進んでるっていうか、ここで最初に話を聞いた人たちも話にはならなかったけど私たちのことを邪険にするわけじゃなくちゃんと話を聞いてくれたし」
その感想を耳にすると同時に、そんな善人たちを敵に回さなければいけないのかという葛藤にも襲われた。
気を取り直して「さて、次は」と場を切り替える千宙。
すると、千宙だけ急に陽を遮られる。地底なので陽ではないが、千宙たちは数日地底で活動したお陰で地上と似た環境は地上と同じものと錯覚してしまっている。
振り返らなくても分かった事は、陽ではない充満する光を遮ったのは体の大きな人間だ。
だがただの巨人ではない。千宙はただならぬ気配を感じてゆっくり後ろを振り向いた。
そこに立っていたのは、全身ぐるぐる巻きにしている包帯を羽織の様な上着で隠した大男だった。
「ど、どちら様ですか?」
怯える声で聞くと、その大男は何も言わず羽織を少し捲ってみせる。その奥の包帯には、ロストラムの紋章が入っていた。
「俺の名前はアキラ。油断したものだな、キリアと戦ったのにここに警備を敷かないとでも思ったか?」
千宙達はしまったと油断していた数分前の自分達を呪う。言われた通りキリアの報告を受けて、このアキラという男がここに臨場したことを悟った。
このアキラの来訪は、千宙達が持っていた一縷の望みを完全に打ち砕いた。
僅かだが期待していた、自分達のことを掴んでいるのは第一層にいたキリアだけだと。しかしこれはもう確実にアウトだ。
「やっぱりあんたら、揃いも揃って私たちを捕まえようとしているのね」
ロストラム全体での警戒、完全に対立した構図の完成。
こうなってしまっては、万が一遥実を救出できなかった時の地底脱出方法探索作戦が実行できない。このUnderworldではどこへ行っても常にお尋ね者、安息の地など存在しないからだ。
しかしアキラにとってはそんな彼女らの絶望は戯言だった。
「この世界にいて自由でいられると、まだ思っているのか?そんな夢物語はここで終わりだ」
アキラがそう話すと、アキラの背後から急な突風が千宙達に吹きつける。
四人の間で会話をすることもままならない。それどころか、口を開ける事すらできない肌を切り裂くほどの烈風。
間違いない、これはアキラの魔法だ。
しかし、一度死戦を乗り越えた彼女達には分かった。ここも切り抜けることができる。
全員の魔力は満タン状態、千宙の作戦でこの修羅場をくぐり抜けることができる。そしてそれは全員が確信していたので、まずは意思疎通の会話をする為にこの突風から逃げる。
「【土魔法・土壁】!」
四人の前の土が盛り上がって巨大な壁が出来上がる。
この隙に会話ができる状態になった。
もちろん千宙もそれは自分の役目だと自覚しているので、突風が吹きつけている間にも思考を止めてはいなかった。
「まず奴の四方をこれと同じ土壁で囲える!?そこからーー」
すると目の前の土壁が一瞬で木っ端微塵に破壊される。
完全に油断していた四人は踏ん張りがきかず、吹き飛ばされてしまった。
「俺の風が土遊び如きで防げると思ったのか?」
これは存外、キリアよりも厄介な敵かもしれない。




