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Underworld  作者: 獺八御
第一章 「Underworld 突入編」

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第一話 「目覚め」

「今日は少し曇ってるなぁ......」 


 望遠鏡を覗き込みながら、少し雲のかかる夜空を観察している彼女の名前は星導千宙しるべちひろ、17歳の高校生として日々過ごしている。

 好きな物は星と子供で、欠かせないものは愛用している黒縁の眼鏡だ。


 黒髪おさげで顔にはそばかす、まるで現代版赤毛のアンを彷彿とさせる容姿だと彼女自身も思っている。

 中学時代は生徒会会長を務めており、高校に進学してもそのような責任感の求められる位置を押し付けられそうになったが、頑なに拒否して今は平和に天体観測部の平民だ。


 中学から同じ高校に上がった同級生からの猛プッシュも苛烈を極めたが、彼女にはそれを断るのに十分な理由があった。

 その理由は魔法。千宙は魔法の才に恵まれなかったのだ。


 中学校の生徒会など、お遊びも同然。立候補すれば信任である限り誰でもなれる穴埋め会長のようなもの。


 だが高校の生徒会長となれば話は別だ。

 魔法大学への進学や就職に直接影響する内申点が底上げされる生徒会長ともなれば、みんな死に物狂いでやりたがる。


 そうなると選任されるのは知力体力は当然だが、この魔法社会内の優劣を決める上で最も重視される魔法力が選出される上で大きな要因の一つになる。


 千宙はというと、知力学力共に優れはするものの、魔法に関してはてんでダメ。

 この前の魔力測定試験なんて、他の生徒は軽く五百マギアを超えるのに、彼女の数値は二百マギアを超えなかった。


 魔法が使用できない一般人でも十マギアは持っているというのだから、魔導生としては絶望的な数値だ。


 魔法関係の仕事は諦めて普通の一般職に就くことが天職なのは、天体観測部で星を見上げていれば否が応でも身に染みて分かる。


 その日はあまり星が見えなかったので早めに切り上げて、部内の生徒と帰りにお茶を飲んで帰宅した。

 帰り道に見る街並みは、いつにも増して明るく見えた。二週間ほど前に行われた女王の成人式のせいだろうか。


 同じ年代の女王が、両親を亡くしてもめげずに子供の頃からこの国を治め続けているというのだから千宙も頭が上がらない。

 その女王のおかげで家に帰れば温かいご飯と風呂が彼女を待ち、ふかふかのベッドに身を包めば新しい朝がやってくる平和な毎日を送れるのだ。

 千宙はそんな何の変哲もない一日を今日も明日も繰り返し訪れることを望んでいたんだ。



 思い返せば夢を見た。不思議な、いや、不気味な夢だ。


 聞き覚えのある声だが誰かは思い出せず、目の前には手足に枷をはめられ、あぐらをかいて座る男の姿がある。

 髪が顔にかかっていて表情は見えない。上半身に何も着ていないから、見るに堪えない拷問の生傷が露わになっている。だが不思議と血生臭さはしなかった。

 リアルなのか、それともただの荒唐無稽な悪夢なのか、我が夢とはいえ不可解な感触が千宙を襲った。


 男は千宙に向かって話している。

「星導……俺はここだ……」


 その男の顔が上がりぐわっと彼女の眼前に迫ってきたかと思えば、そこは現実だった。


 千宙は不気味な夢のせいでどうにも寝苦しく、寝返りを打ってもう一度眠りにつこうとするも背中に当たる感触が布製のベッドとは思えないほど固い。

 さっきの夢のせいでベッドが固くなってしまったのだと錯覚したが、そうではないと千宙はすぐに気がつく。


 千宙はいつものベッドではなく外、地面の上で横たわっていた。


 この目覚めが千宙の人生を大きく変える目覚めになるなど、この時の千宙は予感することも想像することもできなかった。

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