第九話 「万引き」
早速四人で、雇い主を承諾してくれた店主に挨拶に行く。
無精髭に鉢巻を巻いた、THE・魚屋の店主という風貌の中年男性が苺を売っているのだから、未巴琉は何故この店主に声をかけたのかと気になって仕方がない三人だった。
「この子がどうしてもって言うからよ!ちょうどこれから収穫に行くから、手伝ってくれるか?報酬は弾むからよ!」
元気のいい店主だなあと未巴琉以外の三人は感心して付いていくことにした。
移動中も未巴琉は太鼓持ちで店主の周りを右往左往していた。おかげで店主もだいぶ気持ち良くなったようで、かなりご機嫌だ。
どうやら畑はインタリュードにあるようで、店主は十分ほど歩くとプレーリュドとの地区境が見えてくると教えてくれた。
歩いていると、店主は虚を突いた質問をしてくる。
「あんたら、地上人だろ?」
ヒヤリとする四人。ボロは出していないはず、未巴琉も私は何も言ってませんと言わんばかりに必死に首を横に振る。
「わかるさ。俺は自分の畑で取れた苺をいつもインタリュードで売るんだが、たまにプレーリュドでも露店を出すんだ。プレーリュドは、商売やってる奴はどうだが知らんが、住民のほとんどは地上人だ」
「!」
そう、地上への大穴があるプレーリュドは頻度こそ少ないが落ちてきた地上人は千宙達とは違って帰るアテはない。
もちろん地区を脱出する人間もいるが、中にはプレーリュドに留まる者もいる。
「俺は地上人が嫌いだったんだ。たまに落ちてきたと思えば地底を荒らしまくって、俺がまだガキだった頃は地底に攻めてきて戦争まで仕掛けてきたんだぜ?ひでぇ話だよな。でも、一年くらい前かなーー」
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一年前、店主はいつも通りインタリュードで苺を売っていたところ、彼の苺が万引き被害にあった。
犯人は高齢の男性で、地底の服とは違うデザインから地上人だと店主は思った。犯行の瞬間も確かに見ていたので走って追いかける。相手は高齢のジジイなので足では負けない。もう少しで追いつける。
(また地上人!今度こそ捕まえてとっちめてやる!)
次の瞬間、犯人と店主の間に立ちはだかる若い青年。瞬きの刹那、現れた瞬間が見えなかった。そしてその青年はこう言った。
「あれ、俺のじいちゃんなんだ。迷惑かけて申し訳ない」
そう言ってその青年は苺の代金を支払った。
分かっていた、犯人とその青年に血縁関係はないことなど。
青年が現れたのを見て老人は一目散に逃げたし、血縁関係が無さそうな他人感は誰の目に見ても明らかだった。
青年も地上から来たと思われる装いだが犯人の見窄らしさとは打って変わってぴっちり武装した様子だ。
代金さえ手に入ればとその場は収めたが、その後店主は青年に何故犯人を庇ったのか尋ねた。
聞いたところ、やはり血縁関係はなく祖父というのは真っ赤な嘘。しかし彼はこう言った。
「俺は彼を助けられる。だから助ける」
その言葉を聞いて、店主は素直に地上人を見直した。
地底人と地上人は根底の考え方が違う、人の形をした悪鬼だと思っていた店主にとって、彼の言葉はそんな悪鬼が地底に住む人々と同じ人間に変わるきっかけとなった。
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その出来事をきっかけに、店主は自分にできる限りにはなるができるだけ地上人を助けるようにしているというのだ。
未巴琉の引きと、その時店主に苺の代金を支払ってくれた青年に千宙は感謝した。
そんな話をしていると、プレーリュドとインタリュードの地区境が見えてきた。
同じ頃、インタリュードの住宅地では新聞屋が各民家に新聞を配布していた。




