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第25話 そうは思っていない

 ミーティングルームでは、本社所属ののぞみとひかり、つるぎが打合せをしていた。


 みずほとさくらはリモートで参加し、安藤と架流と白翔がその様子を聞いていた。

 真澄と悠真は、業務があるので参加していなかった。


 内容は、業務内容の共有とひかりに開発して欲しいものが無いかの確認だった。

 最後にみずほが問題を提起した。


「お客さんが増えたので、周囲がざわつくとわたしの声が届かないことがあります。

 危険なので、私たちのサイズで扱える拡声器の様なものが欲しいです」

「そんなの大きな声で叫べば解決するじゃねぇか」


 のぞみが反論すると、一瞬の沈黙が走った。


「それは危険な状況ね。さくらはどう?」

「のぞみの声の大きさなら大丈夫だけど、みずほには無理じゃないかな?

 今は必要と思ったことが無いけど、準備しておいても良いと思う」


 拳を握って、さくらを睨みつけた。


「おい!さくら、どういう意味だよ?」

「声の大きいあなたには出来ることも、他にはできない子もいる。そういう意味よ?」


 つるぎがそう言うと、のぞみは「そうか?」と言って声を沈めた。

 そして、つるぎは大きくため息をつくと、ひかりの方を見た。


「ひかり、できそう?」

「ステラノイドサイズのピンマイクを用意しましょう。

 ボタンを押したときだけ音の出るスピーカは人間サイズの方が良いでしょう」


「ありがとう。何とか実現できそうね。

 安藤さん、スピーカの駅への設置依頼をお願いできますか?」

「その位なら問題無いと思う。駅側へ話すから最終回答は保留とさせてくれ。

 あと、電源もいるんじゃないか?」


 安藤の質問にひかりが答えた。


「バッテリで対応できると思います。ただ、駅で充電させて欲しいです」

「分かった。それも合わせて話をしておこう」


「じゃあ、今日はこれまでにしましょう」


 つるぎがそう言うと、みずほとさくらは通信を切断した。



 立ち上がった白翔は、鼻で笑って冷ややかに架流を見下ろした。


「前も言ったけど、せっかくの最新鋭の人工知能をローカル線で使っていいのかい?」


 突然の言葉に架流は驚いたが、額に手を当ててため息をついた。


「決めたテーマで進めて成果も出ている。今更、何を言ってるんだ?」

「このテーマを経営会議にかけたか聞いているんだよ?

 確か、アルカディア側に押し切られて決まったように聞いているけど」


 架流は眉間にしわを寄せて首を横に振った。


「今回の進め方は事業改革課に一任されている。ですよね、安藤さん?」


 架流に話を振られた安藤は、伊吹に睨まれた記憶が蘇った。

 確かに、伊吹に押し切られた形だったが、あの後で確認してから進めている。


「高橋の言うとおり、今期に限っては事業改革課の裁量で決められる。

 本部長にも話を通して進めているし、会社も今の流れを評価している。

 今は変化させるタイミングではないと思うのだが?」

「半期進めて区切りも付きましたし、ステラノイド5体すべてが納品されました。

 ここで、事業規模の大きな幹線での対策を検討してもよいのではという提案です」


 しばらく安藤と白翔は睨み合っていた。

 その沈黙を破ったのは架流だった。


「俺も前に言ったよな?幹線を優先すべき根拠があるのか?と。

 そこまで言うなら、幹線での対策案と根拠をお前が持ってこいよ」

「計画の見直しをするのも、主幹部署の役割じゃないのかい?」


 白翔は冷笑を浮かべて顎を上げた。

 架流は腕を組んで目を細めたが、肩を落として長く息を吐いた。


「……申し訳ない。こちらとしては代案が思い浮かばないのでこのまま進めるしかない。

 効果的な代案を提示して貰えれば、それを検討させて貰うよ?」

「そうかい。じゃあ、つるぎ行こうか」


 白翔はそう言うと、つるぎと共にミーティングルームを後にした。



 2人がミーティングルームを後にすると、のぞみが口を開いた。


「さすが正論のニヤケ顔だな。何でアイツ、こんなにお前に突っかかるんだ?」

「それは俺も聞きたいよ。入社して気が付いた頃には絡まれてた気がする。

 よし、のぞみ。本人に聞いてきてくれ!」


 架流がそう言うと、安藤が止めた。


「やめとけ。本来はあいつが高橋の立場でこのプロジェクトを回すはずだった。

 高橋の異動も決まっていて、今のあいつの立場に高橋がいくはずだった」

「そうだったんですか!?」


 架流は、目を見開いて勢いよく立ち上がった。

 白翔が前任者とは知っていたが、入れ替わったことは初耳だった。


「直前で自分が変えられたプロジェクトが成功している。

 思うところもあるだろうな……」


 白翔については何も言えなかった。

 だが、ひとつだけは思うことがあった。


「確かに、俺があの立場では、上手くやれる気がしません……」

「つるぎのバディは大変だろうな……」


 全員の視線がのぞみに集中したが、誰も何も口にできなかった。

 そして、安藤は架流の言葉に目を閉じて静かに頷いた。


 無視されたのぞみは、頬を膨らませて架流に言った。


「何だ?今の立場では、うまくやってると思ってるのか?」


 架流の鋭い視線が向くと、のぞみは長机の上を走って逃げた。

 架流はのぞみを追いかけて捕まえて、口論しているようだった。



 その日の帰り、安藤はひかりに話しかけた。


「翔子のテストが近いんだ。ちょっと勉強見てやってくれないかな?」

「いいですけど、何か翔子ちゃんあたしのこと、避けてませんか?」


「いや、そんなことはないと思う。だが、一歩踏み込めない所はあるのかもな」

「どういうことですか?」


「図書委員の子に似てるかも、みたいなことを言っていた。

 嫌いではないし普通に接していると思うけど、知的な子だから話が合わないとは言っていたな」

「そうなんですね。我が叡智を前に本能が拒絶しているということですか」


 ひかりは寂しそうに俯いた。


「魔導の力で古の文献を守る司書。寄り付く者は黒魔法で焼かれると思っているのですね」

「いや、絶対そうは思っていない」

お読みいただきありがとうございます。


会議の後でのぞみが「つるぎのバディは大変だろうな」と呟いた瞬間のイメージイラストをXで公開中です。

https://x.com/stella_bridge_/status/2101174137519763539?s=20


よろしければ、ご覧ください。

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