第24話 ひかり、頼んだぞ?
「あたしは第5世代ステラノイド。
最新鋭にして、最高の処理能力を有する孤高のステラノイド。
チームに必要なアーティファクトを開発して、自ら創り出すことができる。
黒い短髪に、知性を醸し出すメガネを纏う。その名も……」
「ひかり。何を言ってるんだ?」
ポーズを決めようとしていたステラに声をかけたのは安藤だった。
「準備運動、ですね……」
「ははは。お前、中二真っ盛りじゃねぇか」
慌てるひかりの姿を見て、のぞみは笑い飛ばしていた。
「全く、これだから旧式は。何も分かっていませんね」
「長く生きてる先輩に向かって、なんだその態度は!?」
口論が始まろうとした2人を止めたのはつるぎだった。
「止めなさい、あなたたち。
それに準備運動って、何の準備なの?」
「今日は、怜人さんの家に初めてお邪魔する日です。
ご家族の皆様に、良い印象を持って頂かないと」
ひかりは腰に手を当てて胸を張った。
だが、つるぎは腕を組んで冷やかに見つめていて、のぞみは大笑いしていた。
「そ、そう?安藤さんのご家族に迷惑をかけちゃだめよ。
安藤さん、ひかりをよろしくお願い致します」
つるぎは、膝の前で手を組むと、丁寧にお辞儀をした。
だが、その表情はどこか不安そうだった。
「昨日、ウチにひかりのラボが届いたから、これでお迎えできるな。
子供たちはステラノイドが来るって話したら大喜びしていたし」
安藤がそう言うと、のぞみは肩をすくめてため息をついた。
「この中二病ロボットに大喜びですか?」
「この良さが分からないなんて、時代の濁流に取り残された遺物ね。
分解して最新型のあたしの姉妹機として転生するべきね」
「何だと、コラ!?」
安藤は苦笑するしかなかった。
「いやいや。将輝もあのラボを見て、目を輝かせていた。
あいつロボット好きだから、歓迎してくれると思うぞ」
「それ見なさい」
ひかりが勝ち誇った表情で口角を上げると、のぞみが拳を握ってひかりを睨み付けた。
だが、1番怒っていたのはつるぎだった。
「あなたたち!?」
つるぎのひとことで、2人は視線を外して口ゲンカは収まった。
「お前も大変だな……」
「チームをまとめる立場は大変ですよね……」
安藤とつるぎは深く息を吐き出した。
仕事を終えると安藤とひかりは帰路に着いた。
最寄りの城山駅で電車を下りると、2人は円香が運転する車に乗り込んだ。
「初めまして。ひかりと申します。
怜人さんにはお世話になっております」
「あら、可愛らしい。怜人の妻の円香です。こちらこそよろしくね」
円香は、物腰柔らかな雰囲気の女性だった。
「主人がステラノイドを管理することになったと聞いて子供たちが喜んでるの。
賑やかな子たちだけど、我慢してね」
「いえ。こちらこそ、ご厄介になります」
2人が家に着くと、子供たちが玄関に駆け寄ってきた。
ひかりの姿を見るなり、弟の将輝が声をかけてきた。
「なぁ、ロボメガネ!空飛べる?ビーム出せる?」
「ロ、ロボメガネ。わたしたちにはステラノイドって名前が」
「じゃあ、ステラノイド、空飛んでビーム出せる?」
「空も飛べませんし、ビームも出ません」
ひかりの言葉を聞くと、将輝は残念そうに自分の部屋に帰ってしまった。
「あ、あたしの名前はひかりです。よろしくお願いします」
「あ、はい。翔子です。こちらこそよろしくね」
翔子の表情は、玄関で迎えてくれたときとは違って固かった。
軽く挨拶すると、翔子も部屋に戻ってしまった。
何だろう、この差は?何かしたっけ?
空を飛んで、ビームを出せないといけなかったのかな。
「子供の夢を壊してしまったようですね。
飛行ユニットとビーム砲を開発リストに追加しましょう」
それを聞いた安藤が、驚いたような表情でひかりに声をかけた。
「おい。なんだそれは?物騒な物でも作ろうとしていないか?」
「我が知に刻まれし『深淵の理』に照らし、調和紡造してみせましょう」
円香は目を丸くしてひかりを見た。
「どういうこと?」
「ディープラーニングの成果を使って安全に作るらしい」
ひかりはメガネを押し上げて、鼻から息を吐いた。
「よく分かるわね。ひかりちゃん、どうして突然言葉遣いが変わるの?」
「星辰が真北の檻に囚われし刻、抑え込んでいた古の記憶が目を覚ます」
「あなた……これは分かる?」
「星が真北にある時に何かあるみたいだな……
おい、ひかり。その星は真北から外れたぞ?」
安藤がそう言うと、ひかりはハッとしたように2人を見た。
「失礼。お2人の表情を見ると、私の力が疑われている様子。
家事を補助するアーティファクトを生み出してみせましょう」
「能力は疑ってないんだけど……作って貰えると、助かるわね」
円香は考え込んだあと、思い付いたような表情で話を始めた。
「卵をキレイに割って、白身と黄身を殻が混ざらないように分けてくれる道具。
自動でお米を洗って炊いてくれる炊飯器も欲しいわね。
揚げ物をする時に粉をキレイに吹き付けてくれる道具。
作った料理を効率良く冷ます道具も欲しいわね」
遠慮なく欲しい物を列挙する円香に、安藤の顔は青ざめていた。
「お、おい。円香、流石に多過ぎないか?」
「あなたの明日のお弁当を作る為に必要なの?
あなた、代わりにやってくれる?」
「そういうことか……ひかり、頼んだぞ?」
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安藤のデスクでポーズを決めるひかりのイメージイラストをXで公開中です。
https://x.com/stella_bridge_/status/2100158038430896289
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