表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/13

第3話 却下だ!

 昼休みになると、小さなアンドロイドは安藤を食堂に誘った。

「弁当なんて、後で食えばいいだろ。一緒に行こうぜ」

 安藤は苦笑して首を振った。

 架流は、アンドロイドと社員食堂へ向かった。


「ちぇっ。付き合い悪いなぁ。出遅れちまったぜ」

「家族思いだからな。朝早く作ってくれた弁当を残せなかったんだろ」


「おやつに食べればよかったのに……」

 肩の上で不貞腐れていた。


「3時まで弁当を置いておけないだろ」

「そっか、だったら仕方ねぇな」

 最後はすっきりした表情で笑って見せた。


 多くのことを知っていて、いろんなことに気づく。

 そのくせ、弁当を置いておけないことには気づかない。


 完璧すぎないことが、架流の肩の力を少しだけ抜いてくれた。



 食堂から漂うラーメンの匂いは、廊下まで漂っていた。

 食べ終わった社員が席を立って帰っていく様子も見られた。


「お!あの課長がグダってくれていたおかげで席が空きだす時間だな」

「メニューも食堂の意図も、お前の推理は正解だったな」

「だろ?席でゆっくり休めば、午後からの効率も上がるしな」

 架流はアンドロイドに人差し指で頬をつつかれた気がした。


 かわいいところもある。

 肩に目をやると、人差し指だと思ったそれは、小さなグーパンチだった……



 肩の上で、目を輝かせて食堂を見回していた。


 こんな当たり前の光景がそんなに珍しいのだろうか。

 架流にはさっきの推理力より、この姿の方が不思議だった。


「ご飯と漬物、お茶はセルフか。

 お前の会社、社員食堂の仕組みだけは合理的だな?」

「頼むから公共の場所で、そういう言い方はやめてくれ……」


「お前は何を食べる?何でも奢るぞ」


 架流がそう言うと、少し寂しそうな目で返した。

「俺は食べたりできないんだよ。料理を見れば味は分かる。

 場の雰囲気を感じたら食べた気にもなれるし、お前が好きな物を食べていいぞ」

 

 架流はしばらく考えて、その意味を理解した。

「そっか、何か嫌いな食べ物はないか?」

「お前、案外性格悪いな。残念だが、俺には嫌いな食べ物はないぜ?」


「そんなんじゃねぇよ」

 架流はそう言って、日替わりのラーメンを注文した。

 さすが日替わりの提供は早い。架流はラーメンを受け取ると、ご飯用の茶碗を取る。


「ラーメンにご飯かよ、カロリー多すぎるぜ」

「そうだよな……」


 架流はご飯をよそらずに茶碗だけトレイの上に乗せて空席を探す。

「何に使うんだよその茶碗?」



 空席に着くと、架流はテーブルの上にトレイを置いた。

 アンドロイドはテーブルに下りると、架流の前に座った。


 架流は持ってきた茶碗にラーメンを少しだけ取り分けた。

 そして、それをアンドロイドの前に置いた。

「ほら、お前の分だぞ?」


「お前、人の話ホント聞いてねぇな!

 俺は食べられないって言ったろ!?」

 架流を見上げたその眉間には、しわが寄っていた。


 だが、架流は茶碗を指で軽く押した。

「場の雰囲気を感じるとも言ってたよな?

 こうした方がより感じられると思ったんだけど」


「俺の勘違いだったら、悪かったな」

「そういう意味だったんだ……」

 アンドロイドは、茶碗の中のラーメンに目を落とした。


「気付いてなかったのか?

 あれだけ見事にいろんなことを当てたお前だから、気付いていると思ったんだけどな」

「こんなことしてくれるバディの前例がないんだよ……」

 架流の方を一切振り向かず、その肩が少し震えていた気がした。



「旨かったぜ!ありがとな」


 まったく量の減ってない茶碗を架流に差し出した。

 架流は、その茶碗を受け取ると、全て食べ終えた。


「今さらで申し訳ないけど、何て名前なんだ?」

「俺たちに最初は名前が付いてなくて、パートナーが決めることになってる。

 バディが好きに決めてくれていいぜ」


 聞き慣れない言葉だった。

 パートナーとバディって違うのか?


「バディってなんだよ?」

「俺たちは一人の人間と組むように作られている。

 そいつを相棒だって認めたら、バディって呼ぶ」

「認めたってことか?」

「さあな。少なくとも、今はそう呼んでやってもいい」


「そうなんだ。ありがとな……」

 バディという言葉が、架流の中で繰り返された。


「……のぞみ、ってどうだ。

 不安しかなかった異動で、お前は少しだけ希望みたいに見えたから」

「のぞみか……」

 小さくその名前を繰り返した。


「いい名前だな。この会社の希望の星になってやるぜ!」


 のぞみは拳で胸を叩いた。


「俺たちの仕事は業務改善だったな。

 すべきことは案外明確だ。すぐにでも動きたい」

「そうだな。昼から打合せをしようか。

 安藤さんにも、声をかけておくよ」

「任せろ。最高の改善案を見せてやるぜ!」


 そう言ったのぞみは、急にしおらしい顔で架流を見る。


「そうだ、頼みがあるんだけど聞いてくれるか?」

「聞くだけなら何でも」


「何だよ、それ。

 実はあの味噌ラーメンも食べてみたいんだけど」


 架流はこの流れで承諾してしまいそうだったが、大事なことに気付く。


「お前、残さず食べられるのか?」

「人の話、ホント聞いてねぇな……

 俺は食べられないからバディに食べてもらうんだよ」


 やっぱりな……


「却下だ!」

お読みいただきありがとうございます。


第3話の社員食堂シーンのイメージイラストをXで公開中です。

https://x.com/starlink_novel/status/2074865402476396841?s=20


よろしければ、ご覧ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
エピソード4まで読ませていただきました。シンプルに続きが気になる作品ですね。まさに、王道小説って感じです。自分には書けないスタイルなので素直に憧れます。イメージ画像も見させていただきました。自分のイメ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ