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第2話 確認しに行こうぜ!

「安藤さん、これ何ですか?」

「名乗ってやったのに、聞いてなかったのか?」


 箱から飛び出してきた小さなアンドロイドは、見た目こそ可愛らしい人形のようだった。

 だが、口調はやけに乱暴で、呆れたような顔で架流を見上げていた。


 架流はイラッとしたが、冷静に話を続けた。


「聞き取れなかった。もう一度ゆっくり教えてくれ」

「仕方ねぇな、三度目はないぞ?

 情理演算式自律機動ユニットだ」


 初めて聞く言葉に、架流の苛立ちは困惑に変わった。 


「聞いたことないな。それってどういうことだ?」

「状況を感じて、考えて、その通りに動ける最新のアンドロイドだ」

  

 架流はしばらく考えた。そして、すぐに諦めた。


「安藤さん、処理が追いつかないです……」

「登場が強烈過ぎたからな。順を追って話そうか」


 そのアンドロイドは、自分が入っていた化粧箱を安藤の前まで動かして、その上に腰かけた。


 足を組み、腕まで組んでいる。


「こいつ、自分で箱を持ってきて座りましたよ!?」

「話して動くアンドロイドなら、今どき珍しくない。

 だが、自分で箱を運んで、偉そうに座るこいつは別格だな」


 安藤は眉を上げたが、架流ほど取り乱してはいなかった。

 

「凄いな!俺、こんなアンドロイドを見るのは初めてだ」

「だろ?最先端のテクノロジーに驚いたようだな!」

「いや……こんな態度の悪いアンドロイド」

「そっちかよ!?」


 そんな2人のやり取りに安藤は笑いながら説明した。


「次世代生成AIを搭載したアンドロイド。

 アルカディアから研究用に貸与された試作機だ。」

「で、こいつが俺たちの会社の業績を改善してくれると……」


 架流のその言葉に、アンドロイドは溜息をついた。

「だったらお前は要らないだろ?」


 白翔の言葉が、頭の奥で嫌な音を立てた。


 言い方は腹立たしい。

 だが、白翔の言葉とは違った。


「具体的な指示をして決断するのはお前。

 それを形にするのが俺。そういう分担がいいだろう」

 

 何が「人間が余計なことをしなければ」だ。

 こいつと俺には、明確な役割分担があるじゃないか。 



 ただ、こいつにそれだけの実力があるのだろうか……。


 架流の不安げな表情を見ていた安藤が口を開いた。

「ちょっとしたテストをしてみるか?」


 安藤は業務用スマホで、昨年度1年分の社員食堂のメニュー表を見せた。


「今日の社員食堂の日替わりランチは何だと思う?

 そう考えた理由も教えてくれ」


 安藤の唐突な質問に架流は一瞬戸惑った。

 答えなければ、と架流が思考を巡らせ始める前の僅かな時間だった。


 アンドロイドは間髪入れずに回答した。

「今日もラーメンだと思う。昨年度1年間、毎月最初の営業日はラーメンだったからな。

 月初めでバタバタしているから、サッと食べられるようにって配慮かもしれないな。

 月末も早く食事を済ませられるようなメニューだし、良い食堂を持ってるな」


 アンドロイドは、得意げに胸を張った。


 安藤が求めたのは、答えと根拠だけだった。

 だが小さなアンドロイドは、その背景まで推察してみせた。


 しかも、架流が動く前に答えは出ていた。

「ちょっと待て!俺が考え始める前に、お前は何でそんなに早く分かったんだ。」

「お前らとは比べものにならない速さでメニュー表を読み取って解析できる。それだけだ」


 何それ……反則だろ?


 架流は、机の上の小さなアンドロイドを改めて見た。

 こいつ、本物だ。


「そう悲観的になるなよ。

 俺の能力は、お前の武器にもなるんだぜ」


 その言葉で架流は我に返った。


 こいつとは、勝ち負けを争う関係じゃなかった。

 この力を貸してくれるのであれば、こんなに心強いことはない。


「変に意地を張っていたみたいだ。すまない」

「おっ!その潔さ、嫌いじゃないぜ」


 アンドロイドは口元を上げた。



「お前も何かひとつ質問してみたらどうだ?」


 この小さなアンドロイドは、どこまで見て、何を拾い上げるのか。

 そして、その力を自分が本当に使いこなせるのか。


 架流が知りたかったのは、ただ正解を出せるかどうかではなかった。


 架流は少し考えてから、安藤を見た。

 

「じゃあ、安藤さんの凄いところを教えてくれ」

「……凄いかどうかは知らねぇけど、特技はケーキ作りだな」


 即答すると、安藤はぎょっと目を見開いた。


「ちょっと待て!どういうことだ!?」

「昔の社内報を見たら、料理クラブでケーキ作ってる写真が載ってたぜ」


 慌てる安藤を見て、架流は思わず吹き出した。

 だが、すぐに疑問が浮かぶ。


「でも、どうやって社内報なんて見たんだ?」

「俺には通信機能があるからな。業務端末から見られる社内情報だ。

 お前の権限で見られる範囲だけ、俺も参照できるようになっている。

 頼まれりゃ、調べ物くらい手伝うぜ」

 

 安藤は、黙り込んでしまった。

 だが、アンドロイドの推理は、まだ終わらなかった。


「娘さんの誕生日に作ったやつだろ。

 写真のケーキに『しょうこ 8さい』ってチョコプレートが乗ってたぜ」


 安藤は観念したように苦笑した。


「そこまで見られたか……」

「いいお父さんしてますね」


 架流がそう言うと、安藤は照れくさそうに頭をかいた。

 その時、昼休みを知らせるチャイムが社内に鳴り響いた。


「よし!今日のランチがラーメンか確認しに行こうぜ!」

お読みいただきありがとうございます。


箱の上で偉そうにしている初号機のイメージイラストをXで公開中です。

https://x.com/starlink_novel/status/2074864677641929183?s=20


よろしければ、ご覧ください。

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