↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/31

第19話 絶対に怒らないから

 さくらたちの書いたコードで、アプリのデバッグも完了した。

 そして、印刷屋に発注していたさくらの作った地図やパンフレット、ポスターも配達された。


「わぁ、素敵な仕上がりですよ!」


 さくらとのぞみは、配達された地図やパンフレットを嬉しそうに眺めていた。

 悠真とさくらは碧海駅のパンフレット置き場に並べた。


「よし、架流。さっそくポスターを貼りに行こうぜ!」

「いや、俺はいいよ。

 悠真の企画だし、駅の業務は代わってやるから悠真が貼りに行った方がいい」


「えっ!そうなのか?」

「駅長が、俺が留守番をして、ポスターは企画者の悠真が貼るべきだってさ。

 俺がここを離れてまだ数カ月だからって、安藤さんにまで話を通してくれたよ」


 悠真も駅長からそのことを聞いていたらしい。

 悠真の帽子を預かると、架流は3人を見送った。


 駅長の言う通り、現場を離れて数カ月だから問題はないだろう。

 そう思って改札口に立っていた。



 そんな架流に2人の女性が話しかけてきた。


「こんにちは。悠真くんは今日、不在ですか?」

「はい。南波は別の仕事で別の駅に出ておりまして」


 2人の女性は顔を見合わせた。


「そうですか。また、後で来ますね」

「はい。申し訳ございません」


 どういうことだ?

 駅員目当てに乗客が来るなんて初めて聞いたぞ!?


 だが、架流は真澄目当てに神谷駅を訪れた客がいたことを思い出した。

 流行ってるのかな?そういうの。


 

 その頃、悠真はのぞみとさくらと電車で各駅を回っていた。


 駅で迷っている人に声をかけられると丁寧に応対していた。

 悠真は車内で困っているような人を見かけると声をかけていた。


「ほんとマメだよな。お前のバディ」

「そうだね。困っている人を見かけると、放っておけない性格みたい」


 若い女性客に声をかける悠真は嬉しそうだった。

 だが、それ以外のお客に対しても変わらず声をかけて案内をしていた。

 

 そして、届いたばかりのチラシを配って企画の案内もしていた。

 何人かはその場でアプリをインストールしたように見えた。


「すげぇな。あの勢いでいったい何人の彼女がいることやら……」

「悠くんはね。みんなに勘違いされるけど、そういう相手は1人もいないよ」


 のぞみは目を見開いてさくらに聞いた。


「マジかよ!?あの甘いマスクでお人よしだろ?

 女の方が放っておかないんじゃないのか?」

「確かに遊びに誘われることもあるんだけど、断ってるね」


 のぞみは両手を上げて、身をのけぞらせた。


「なんだよ、それ?

 それなのにみんなに声かけて、何を考えてるんだ?」

「人と楽しく話すのが好きなんだろうね。

 確かに女の人のことは好きだけどね」


 

 3人は各駅にチラシを置いてポスターを掲出して戻ってきた。


 20分に1本の電車で各駅を回っていた。

 戻ってきた頃には、夕方になっていた。


「おう、帰ったぞ!」

「お疲れ様。どうだった?」


 架流が聞くと悠真は嬉しそうに返した。


「ポスターもチラシも完璧だぜ!

 それより5人くらいアプリ入れてくれたんじゃないかな」

「本当か!?それは凄いな」


 

 しばらくすると、先程の2人組の女性が戻ってきた。


「あ、悠真くん。お帰り~」

「さくらちゃんもお疲れさま」


 悠真とさくらは、この2人と知り合いらしい。

 さくらも笑顔で手を振っていた。

 

「ねぇねぇ。今日は何時に終わるの?」

「終わったら今日こそご飯に行こうよ~」


 架流とのぞみは顔を見合わせた。

 これがここの日常なのだろうか。


「南国って、奔放だよな……」

「いや、ここはまだ県内だぞ……」


 架流とのぞみが呆れて様子を伺っていると、悠真は2人の誘いを断ったようだ。

 2人は寂しそうに帰っていった。



 架流はてっきり悠真が2人と食事に行くものだと思っていた。

 だが、会話の流れからいつも断っているようだった。


「せっかくだから食事くらい一緒に行ったらよかったのに」

「お前行きたかったのか?それなら今度みんなで行くか?」

「いやいや!俺は別にいいけど、お前は行きたいんじゃないのか?」


 架流にそう言われた悠真は、架流から目を離して少し考えた。

 そして、再び架流の顔を見て話を始めた。


「行きたいか?と聞かれたら、そりゃ行きたいさ。

 でも、あの子たちは、また遊びに来てくれて楽しく話ができる」

「それで満足なのか?」


 悠真はまた架流から視線を外した。


「満足か?と聞かれたら、そりゃ満足ではないね。

 でも、あの子たちが、また遊びに来てくれればそれで充分さ」

「だったら……」


 架流が言い終わる前に、悠真は続きを話しだした。

「少なくとも今は駅員だ。駅で会った女性はお客さんでしかない。

 業務の範囲内で、楽しく話ができればそれで満足だよ」



 帰りの車内でのぞみは架流に聞いてみた。


「すげぇよな。アイツ見た目によらず真面目だな」

「真面目かどうかは別にして、考えてはいるよな。

 普通に知らない女性に声かけて、楽しそうに話している姿はよく見るな」


 のぞみは目を丸くしていた。


「羨ましいとか思わないのか?

 お前も面は悪くないんだし、その気になれば」

「純粋に羨ましいとは思うよ。

 でも、真似をしたいかと聞かれればそうは思わない」


 のぞみは不思議そうに架流の顔を見ていた。


「俺が真似をしてもロクな結果になるとは思えないしな」

「お前も恋人とかいないよな?欲しいとか思わないのか」


 架流は苦笑して答えた。


「秘密だ」

「ズルいぞ!詳しく教えろよ!絶対に誰にも言わないから」


 のぞみは顔を真っ赤にして怒っていた。

 そんなのぞみの姿を見た架流は、悪戯っぽく笑ってみせた。


「不器用な男がいるみたいなこと言ってた時あったよな?

 それが誰のことか教えろよ。絶対に怒らないから」

お読みいただきありがとうございます。


車内で困っている人に声をかけて案内し、ついでにアプリをアピールしている悠真のイメージイラストをXで公開中です。

https://x.com/stella_bridge_/status/2093525549796999462?s=20


よろしければ、ご覧ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。