Departures ― みずほ
本編では描かれなかった、ステラたちの「出発」を描く短いエピソードです。
どうして、わたしは勝てないの?
授業は真面目に受けているし、宿題も全部やっている。
分からない部分があれば放課後も補習しているし。
何なら講師に質問までしている。
それでも成績は比べものにならない。
頑張って山に登っても、彼女は空の上にいるかのようだった。
「ねぇ、一緒におやつ食べに行かない?」
珍しい……彼女が誰かに声をかけるなんて。
しかも、なんでわたしなんだろう。
「おやついいな。俺も一緒に行くぜ!」
良かった。一緒にいてくれる子がいるなら心強い。
「はぁ……。別にいいけど、クレジットは残ってるの?」
「あ……。来月貰ったら返すから、それまで貸してくれよ」
え!?クレジット、残ってないの?
「あなた、他の子にも借りてるよね。ちゃんと返したの?」
「勿論、貰ってすぐに返したぜ」
「それはいいけど、その後は?」
「返して足らなくなったから、また借りた。
次にクレジット貰ったら真っ先に返すから頼むよ!」
「私は貸せないわね。理由は自分で考えなさい」
え?何で次にわたしの方を見るの?
わたしも貸さないよ?何とか、話をそらさないと……
「えっと……自転車こぐの上手だね?」
「ふふ。あなた、上手いこというわね」
あ、笑った。彼女でも笑うことあるんだ。
「何だよ?自転車って」
「自転車操業って意味よ。確かに高度な皮肉だったようね」
えっと、今わたし褒めて貰ってるのかな?
「自転車だか自動車だかよく分からないけど。
困ってるんだから、助けてくれよ」
「他の子から借りて困っているのに、わたしまで貸したら来月もっと大変になるよ。
来月はもっと困って、また別の誰かに借りて、今月より大変になるから」
「そう……だよな。勉強になったぜ、ありがとな。
これからは気を付けるよ、じゃあな!」
行っちゃった。
あ!ちょっと待って、あなたがいないとわたし彼女と2人きり。
お願い!わたしのおやつ半分あげるから、戻ってきて!!
「やっぱり、全部わかっていたのね。
冗談もうまいし、イメージ変わったわ」
あ、やっぱり、褒めていてくれたんだ。凄くキレイな笑顔。
わたしもあなたの笑顔を見て、印象が変わったな。
でも、これは言っちゃダメだよね。
「へぇ、紅茶が好きなんだ。似合うわね」
「あ、ありがとう……」
褒めて貰えるなんて思わなかった。来て良かったな。
「やっぱりあなた、私が見込んだだけのことはあるわ。
毎回、とても第2世代とは思えないハイスコアで」
「ううん、全然。どれだけ頑張っても、あなたの足元にも及ばないし」
え、どうしたの、その目は?何を迷ってるの?
「言い難いことを言うけど、傷付けてしまったらゴメンね」
ちょっと、何その前置き。凄く嫌な予感がするんだけど。
「第2世代のスペック表と、第4世代のスペック表って見比べたことある?」
「え?両方見たことはあるけど、比べたことは無かったかも……」
うわ、凄く気になってきた。
Create a matrix table comparing the key specifications of the 2nd and 4th
えっと……。ちょっと待って?基本仕様が全然違うじゃない!!
「今、調べたのね。私たちはスタート地点が違うのよ」
「そっか……。
基本仕様がこんなに違うから、どれだけ頑張っても絶対勝てなかったんだね」
「でも、その基本仕様で、そのスコアは神がかっている。
相当、努力している証拠だと思うわ」
努力はしたよ。でも、神がかっていても足元にも及ばない。
わたしはどれだけ努力しても、絶対に勝てないんだね。
「ねぇ、何でわたしは作られたんだろう?」
「それは、開発の過程で必要だったから……」
「じゃあ、今はもういらないってことだよね?」
「違う。全部を私の仕様で造ったら効率が悪いし、普及させるためには……」
そうだね。コスパのいい機種が必要ってことだね?
それは分かるんだけど、わたしは効率重視の安物ってことだよね。
あ、そんな顔しないで、あなたは何も悪くないんだから。
わたしだって、何も悪いことはしていないつもりだけど……。
「ゴメンね、だいぶ楽になった、ありがとう。
でも、ちょっとだけ自分のことが嫌いになっちゃったな」
お読みいただきありがとうございます
このお話から興味を持っていただけましたら、ぜひ第1話から、みずほたちの物語を読んでいただけると嬉しいです。




