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新しい自分がやるべき事  作者: かもめ
第二十八章
33/37

~平穏~

 この数日で様々な出来事がありすぎて、正直体力的にグッタリ。学習院に入学して十日やそこらで、自分の人生に関わる事件等起きすぎだし、肝心な講義もまともに受講していない。少し平穏になってもらいたいものだ。メルリとミューレンの話も気になるし、常に気を張ってないと対応しきれないとも思う。

「ライト様、暫くは忙しい事も無いでしょうから、勉学に集中できるかと。私はフォスター様と、私用事と学習院事の予定を確認しまして、まとめをして、先週の様な慌ただしい日々を避けられる様に段取り致します」

「ベルサリオが悪い訳ではありません」

 セルジュに着替えをさせている間、「段取り不足でした」と反省するベルサリオだが、決してそうは思わない。むしろ、『出来事』なんて、基本的にイレギュラーだ。そんなイレギュラーに慌てる事もなく対応出来るとなれば、「あなたは予知能力者ですか!?」と言ってやりたい。

「先日、聖堂長が言っていた学習院長からの、私とレンフィールに関しての報告が未だなのです。いつになるのか、身構えて居ますが…。早くしてほしいとは思いませんが、またその事で大騒ぎになってしまうとなれば、何かしらの事がありそうですしね。それが原因で一日、二日はバタバタするとも思われます。少し落ち着きたいですね」

「その心配は無いと思いますよ?」

 俺が今後の懸念を聞いていたのか、フォスターが支度を終えて部屋から出てきた。

「と、言うと?」

「まず、学習院の入学は成人を迎えていなければ、年齢に制限は無いんです。成人は十四歳からと決められていますので、学習院を卒業する時、ライト様は十一歳になります。それを考えると、在学中に婚約や結婚の発表をする事は出来ないのではないかと。未成年ですからね。よって、領主様に正式に認められた許嫁と、解釈しておいた方がよろしいですね」

「そうなんですね?」

 確か婚約者と許嫁の違いは…当人達が結婚しよう!って約束した事で、許嫁は双方の両親が将来結婚させよう!って約束する。または約束してある事。だったっけか?確かに今回の件だと、後者の方が意味合い的に強い感じがする。難しい事はわからないけれど。

「なんかわかりづらいですけど、まだまだ公の発表がまだなら、音楽に没頭出来ると言うことですね!?」

 周りから深い溜め息が聞こえたのは敢えて聞かなかった事にしよう。

 やっと、音楽に…楽器に集中出来るとニヤニヤしていると、フォスターから厳しい一言が飛んできた。

「そうは言いますけど、ライト様はまだまだ学ばなくてはならないことが山のようにあります。そちらを放棄して音楽ばかりやっていられません。ゆくゆくは聖堂学師がご希望なのであれば、聖堂で使われる祝詞、お祈り作法等も身につけなければなりません」

「あぅ…」

 呆れた顔で軽く叱られ萎縮してしまう。それと領主の側近として職就く事とも言われている。なかなかやることは満載だ。


 朝食を済ませ、いつもの通りに学習院へ向かうが、ベルサリオが再度確認してきた。

「ライト様、本日はフォスター様と今後の予定等を入念に確認しますので、聖堂へいって参ります。昼食時のお迎えは、騎士の二人にお任せしましたので、寮入り口にてお待ちください」

「騎士は学習院へ立ち入らないですからね。わかりました」

 日中の動きに関しての確認が終わり、そのまま俺は学習院へ。いつもならフォスターと一緒に行動して、講義室へ入る。だが、今日は別行動。あぁ、なんか色々びしーっと予定組まれるんだろうなぁ。

「はぁ~…。やっぱり俺的平穏にはほど遠いな」

「おはようございます、朝からどうかしましたか?」

 聞き間違える事の無い声。ほんのり鼻に掛かる、幼ささえ感じさせる声の主は、唯一話す女の子。

「おはようございます、パルノエルスさん。どうもしませんよ?」

「お顔がお疲れのようですが…。昨日は、途中で先生と退室したので、何か大変な事でもあったのではないかと、皆さん言っていたものですから」

「いえいえ、大した事は無いですよ。あまりにもレンフィール様が演奏に関して誉めてくださるので。その話が領主様の耳に入ったのでしょう。ヴェイル先生が領主様の弟であるために、音楽を選択したら連れて来いって依頼されていたそうですから」

 嘘をつくのは良くないのはわかっているけど、トップシークレットな話をここでは出せない。必死に取り繕ってその場をやり過ごし、パルノエルスには納得してもらった。「領主様にお呼ばれするなんて羨ましいですね」と、笑顔で言われたが、皮肉なのかなんなのか表情ではわからなかった。


「では、今日からは実技が中心の講義になります。午前中は、こちらでの講義、午後からは選択講義になりますので各々指定の講義室に行くように」

 ヴィンセントにより今日の講義予定を告げられ、午前の講義が始まった。

 実技が中心と言っただけに、講義室の机が一斉に片付けられ、そこそこの広さになった。生徒達は、どんな講義なるのか緊張した面持ちでヴィンセントの説明を待つ。

「基本的な魔力の扱いは先週で終わりましたので、今日からは様々な場面において魔力をどの様に使うのか?というよりは事を説明していきます。魔力の扱い応用編とでも言っておきます」

 応用とな?そんなに使うシチュエーションっていうあるの?と思う。

「むやみやたらに力を使う事は、脅迫やら横暴やらと問題になりますが、時には必要になることがあると覚えておきましょう」

「必要な時とは、どんな時でしょうか?」

 疑問に思っていたのは俺だけではなかったみたいで、パルノエルスが質問する。

「騎士講義を選択した者であれば、特に必要としないでしょうが、楽師や司書と言った職に就くとした時、自衛が出来なくては命を落とす事も有り得ます。また、主をお守りする事態になったとき、必ずしも近くに騎士が居るとは限りません。そういった状況に合わせて、防御に徹した魔力の扱いをしなくてはならないって事です」

 自衛手段なら簡単にそう言ってくれれば分かりやすいのに、何故回りくどい言い方しかできないのかねぇ?…そうか、魔力を自衛に使う事が出来る様になる前に、俺は襲われた…のかも知れない。はっきり言って、世の中的に治安の良い現代社会である程度育った俺には、何か道具を持って自衛したとか、格闘技等習っていてそのおかげで身を守れたなんて記憶はない。だから、身を守る手段として魔力を使う発想も湧かなくて当たり前だったのかも知れない。

「話の引き合いにしたくは無いのですが、先日起こってしまった痛ましい事件も皆さんご存知でしょう。あの時、何かしら身を守る手立てがあれば、大惨事にならず済んだかも知れません。そう言った事を踏まえて、自己防衛は大切です」

 笑みを浮かべたままヴィンセントは話を続けるが、名前こそ伏せてあるが俺の話を持ち出した事は、ちょっと気分が悪い。例え話としては、皆が記憶にある出来事だから、説明しやすかっただけなのだろうが。

「ライトさん気になさらない方が…」

「そうは言っても…」

 パルノエルスになだめられるが、沸々と沸き上がるこの気持ちを何故か押さえられなくなっていた。

「どうかしましたかライト君?」

「いえ…なんでも…」

「あぁ、失礼しました。例え話がまずかったですね?ライト君はそこまで万能ではないと言ってしまったようですね」

 どういう事だ?何が言いたいのか?

「膨大な魔力、最高峰の適性色を持ちながら何も出来なかったライト君は、無能だと言っているんですよ!あぁ~、下町出身では何も知らない、何も出来ないで当たり前でしたね?または失礼な事を言ってしまいました」

 その場に居るヴィンセント以外の全員が凍りついた。そして、顔色を変えたパルノエルスが口を開いた。

「お、お言葉ですがヴィンセント先生…、何故そんな言い方を…す、するのですか?私達は将来の為に…」

「ライト君以外は皆さん立派なご両親をお持ちで、一人一人立派な職に就く事が約束されています。ですが、ライト君はごみ溜めの様な下町出身で…それでいて上流階級の方々と同等の職に就こうとしているのですよ!?生意気ですよねぇ?」

 皆の前で見下す言葉を浴びせられ言葉も出ない俺にヴィンセントは近付き耳元で囁く様に話し掛けて来る。

「貴方のお友達は、必死にお仕事してるそうですよ?貴方のせいでね…くっくっくっ…」

「僕のせい!?」

「そうですよ!皆さんもよく聞いてくださいね!あの時、ライト君が身を守る事が出来れば、この事件だってなんとか誤魔化す事だってできた。もしくは、命を落としていればね!それが、こうして何もなかったかのように、ここに居る。お友達は罰せられたのにもかかわらず、なんとも思っていない!」

 今までのヴィンセントとは全く人が変わった態度で自分の演説を繰り広げる。同じクラスの者達もその変貌ぶりに、顔色が悪くなっている。

「そもそも、下町人間が我々中流以上の者の上に立つなんてあってはならないのだよ!」

「先生!酷すぎます!」

「おや、パルノエルスさん君は何も思わないのですか?あのレンフィール様の教え子ですよ?」

「そ、それは…」

 ここまで蔑む言葉ばかり浴びせられると、怒るどころか呆れて何も言えなくなってくる。まさかパルノエルスまでも、標的になるとは。

 一体どうやったらそんな考えになるのか、疑問しか出てこない。

「はいはい、ヴィンセント先生の言い分はわかりました。…ですが…僕が一番心を痛めている友人の事、そして、新しく学習院で出会った友人の事を…巻き込まないでください!」

「なんだと?」

「下町の貧困層の人間でも、必死に生きている!それが、救いようが無い位貧しくても!神から授かった大切な命は、裕福だろうが貧困だろうが平等であって、他人の誰かにその命、人生を決められてしまう筋合いは無い!何も苦労を知らない貴方より、毎日毎日這い上がってやろうと、死に物狂いで生きている人達の方が、暖かい心を持っている!」


 その後、記憶が無い。気が付いたら、怒りに満ちたメルリとミューレンの顔が目の前にあった。

 ここは寮の自室。周りは誰もいない…メルリとミューレン以外は。

「あのさ、何があったんでしょう?」

「どうやったら、周りに敵を作れるわけ!?」

「それに、あんなに魔力を暴走させて死ななかったですね!?」

 相当怒り心頭ですね。全くもって状況を把握出来ないのですけど。わかっているのは、ヴィンセントに散々バカにされた事しか無い。

「僕に落ち度は無い!勝手に突っ掛かって来たのはヴィンセント先生だよ」

「彼は学習院長に呼び出されているわ」

「随分と絡まれたみたいですね。事前にライトの情報は流していたのに」

 彼女等の話によると、「下町で魔力量の多い子供が見付かったため、学習院に入学することになった」と通してあったらしいが、ヴィンセントは内容を軽視していた。初日の適正検査にて適正色等は把握出来た様だが、イコール、初等部にて学ぶ内容位は既に全て身に付いていると、勝手に判断したらしい。そこで、あの事件が起こった。自衛行動が出来なかった俺に「そんな事も出来ないのか!?」と感じたそうだ。「いくら魔力量が多くても下町の人間は何も知らなすぎる」と、罵る行動を起こした。そんな流れだったそうだ。

 それに対して俺は、友人達の話や下町の人達に向けられた言葉に感情を押さえられなくなり、全力で魔力をヴィンセントにぶっ放し、彼は講義室から中央階段前位まで吹き飛ばされ、事態が発覚。その頃に俺は記憶が無かったけど。

「少し大人しくしてくれないかなぁ?」

「俺はいつでも大人しくしてるつもりだって。絡んで来る人達が面倒を起こしてるでしょうが?」

「まぁまぁお姉様、立て続けに事が起きてるけど、ライトの言う通り二回とも巻き込まれたって言っても間違いではないし、学習院長からの、おとがめも無いでしょうから、明日以降また様子見にしては?」

 ナイスタイミングだねミューレン。くどくどとメルリ話すメルリを宥める様子で、間に入ってくれた。メルリも落ち着いてくれたのか、それ以上怒ることはなく、自然とお説教も消滅した。

「明日から講師を変えてもらう様に学習院長へ話してあるから、大人しくしてよね?それと、毎回パルノエルスを巻き込んでるんだから、ちゃんと謝っておきなさいよ?」

「はい、わかりました」

 俺があちこちに吹っ掛けてる訳では無いんだけどな。メルリの言う通りパルノエルスに迷惑を掛けているのは事実。明日謝ろう。

 あぁ~、俺の平穏はなかなか遠いなぁ。

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