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新しい自分がやるべき事  作者: かもめ
第二十七章
32/37

~報告~

  ヴェイルに連れられ城へとやって来た。この城に入るのも二回目になる。一回目は領主裁判の時。一気に友達関係が崩れた。そう思わせる時だった。

  今回はまた別な事情。勝手にと言ったら領主であるシャレン、その弟ヴェイルに失礼な話かも知れないが、人生の大きな山場、分岐点となる話し合いだ。

  父さん達は既に来ていた様で、物凄い緊張の表情をしている。そりゃそうだ、一般の下町の人間が入ることのない城にやって来ているのだから。

「ライトすまないな、講義の途中に呼び出してしまって」

「いえ、ヴェイル様の公認ですから。学習院長やヴィンセント先生に何か言われたら、ヴェイル様のせいにします」

「おい、ライト。言っていい事と悪い事があるとしたら、今のは悪い事だぞ」

  俺とシャレンのやり取りに、ヴェイルがツッコミを入れてくるが、スルーしてみた。

「ライト、貴方はこちらに。レンフィールも一緒に」

  メルリにより俺とレンフィールは、隣同士の椅子に座る。

  そう、俺の両親が、シャレンからレンフィールとの婚約の話を出された事に対しての、結果を報告に来たのだ。

  俺と両親を除くと、全て領主一族が勢揃いと言った所か。

  領主シャレン

  妻ミストリア

  娘メルリとミューレン

  領主シャレンの弟ヴェイル

  ヴェイルの妻アンジー(と、言うらしい)

  娘フォスターとレンフィール

  なかなかそうそうたるメンバー。他にも血族は居るそうだが、話が決定となったら少しずつ紹介してくれるそうだ。

「早速だが、ディーダ、ウィル、其方等の結論を聞こうか?先にも言った筈だが、了承してくれても断ってくれても構わないと言っている。気を使わず話してくれ」

  静かになったその時、シャレンより両親は指示をされ、一瞬ピクッとなったのを見逃さなかった。それほどまでに緊張しているのね。

「は、はい。結果から申し上げますと、私達と娘の三人で話した結果、レンフィール様とのご婚約を家族としてお受け致します」

「そうか、受けてくれるか。では、約束通り、今まで以上の厳しい警戒をこちらとしても配備しよう。それで、どの様な話でうけくれる事になったのか、それも聞かせてくれるか?」

  父さんは母さんと一度顔を見合せ、お互いに頷く。

「それは、私ウィルから申します。学び舎に通いフォスター先生を通じ、聖堂長また修道院長により教育していただき、普通に考えたら入学することすら叶わない学習院にまで入学させていただきました。先日領主様から伺った、ライトがこのアウンティナルーにとって必要だと言う言葉に、感謝と誇りを感じました。そこまでライトの事を思ってくださる、領主一族の方々に対してお断りをする理由が無いと判断しました。また、ライトの人生です。私達がそこまで縛り付ける事は出来ません。自由に、そして、人々のお役に立てる立場となるのであれば、心から喜んでお受けする事とします」

「うむ、その気持ちに感謝する。しかし、勘違いはしないで欲しい。ライトがこのレンフィールと婚約する事になり、いずれ結婚となったとしても、我々は家族との縁を切ってくれ。とは言わない。帰宅出来る機会は少なくなると思われるが、其方等の息子には変わらない。例え、他領に行ってしまったとしても、それだけはくつがえすことの出来ない事実なのだからな」

 くそっ、両親もだけど、シャレンも立派な事を言ってくれる。なんて人達ばっかりなんだ。いい人ばっかりじゃないか。

「素晴らしい両親を持ったなライト。我が娘レンフィールをよろしく頼むぞ」

「…はい」

 グズグズと鼻水を垂らしながら、両親の思いを受け止め誇りに思う。こうして新しく領主一族が俺の家族となる予定となり、両親の報告が終わった。


「ライト、寮に戻る前に聖堂長室に来てもらえるかしら?」

「あっ、はい」

 城の会議室(?)から帰る際、メルリにひき止められた。


  「まぁ座って」

 聖堂室に着きメルリ、ミューレンの二人と俺だけがこの場にいる。どうしたのか?

「とりあえず、お疲れ様」

「メルリもミューレンもお疲れ様。こんな事になるなんて想定外だよ」

 二人は何事も無かったようにしている。未だに何が言いたいのか、何を考えているのかわからん。

「わかっているだろうけど、これは通過点だからね」

「今まで以上に学習院での生活を努力してね」

「わかってる。どうしたの?二人とも?」

 二人は言葉を出さずに、顔を見合せ、何かを決心したかの様に語り始めた。その瞳は真剣そのもの。良くない事でもあったのか?

「また『声』が聞こえたわ」

「お姉様だけじゃなく私にも」

『声』っていつしか言っていたアレか?何故このタイミングで…。予定通りか解らないが、一応事は順調だと思うが…

「姿形を変え、災いは訪れる」

「我が力が枯渇するその前に…と」

 どういう意味なのか?そもそも、夢で見せられたあの光景は、どんな経緯だったのかも俺は解ってない。ただ、あのシーンだけは今でも鮮明に思い出せる。ただ、ハッキリと言えること、それは、本来来るべき未来は回避していると言うこと。

「この先は聞こえなかった。聞こえなかったと言うか、無かったと言った方が正しいかも」

「また別な悲劇があります。としか解釈出来ない」

「うん、どんな事であれ、備えなくちゃならない。俺たちは。特に俺は…生きる世界が変わったとはいえ、一度救われた身。そんな世界、街、人々を危険に晒す訳にはいかない。…用心しよう」

 三人の密会が終了した。メルリやミューレンが言っていた事は間違いないだろう。信じがたいが、大それた話でも俺はこうして生きている。これだって元を正せば、死の淵に立たせられたあの時、ミューレンの話に乗ったおかげでここにいる。それを考えたら警戒しておくことに間違いはない。それに、近代社会と比較したら不便な事が多いが、この世界、この街を気に入っている。それを壊されたりするのは、不快だ。必ず阻止してやる。


「ライト、終わりましたか?」

「うん、レンフィール…僕が護るから!」

「どうしたんですか?…いいえ、敢えて聞きません。ライトがそう言うなら、そうなんでしょう」

 本堂で待っていたレンフィールに一言それだけ伝え、寮に戻る事にしたら。レンフィールだけじゃない皆を護らなくては!


 寮に戻ると、部屋の中は側近達がバタバタと駆け回っている。あのいつも冷静なベルサリオですら、慌ただしくしているのがちょっと面白い。

「これは一体…?」

 何事なのか把握出来ずにその光景を呆然と眺めていると、ベルサリオが更に慌てて寄ってきた。俺が戻った事にすら気が付いてなかったらしい。

「ライト様、お戻りになられたのですね!?申し訳ありません、お部屋の中が騒々しく…」

「どうしたのです?これじゃ、楽器の練習も出来ないじゃないですか…」

 夕食まで時間があるし、せっかくレンフィール一緒に来ているならと思い、限られた時間で楽器の練習をするつもりだった。それなのにこの状況では、不満が積もる。

「大変申し訳ありません!アイリスが言い始めた事なのですが、どうしてもライト様とレンフィール様のご婚約をお祝いしたいと…。私は、ライト様のご都合もあるからと申したのですが…」

「アイリスが?…そこまで想っていてくれているのは嬉しいです。それならばアイリスの好きなようにさせましょう。私は、寝室で楽器の練習をしています。あっ、そうそう、シュティッヒを呼んでください」

「シュティッヒですか?かしこまりました」

 どうせ練習をするんだし、以前「また聞かせて欲しい」とシュティッヒからお願いされていた。レンフィールとの練習は、練習と言ってもかなり本気で演奏する。それなら良い演奏することが出来るから、シュティッヒも喜んでくれるに違いない。


 バタバタしているリビングからそそくさと寝室に入り、楽器を取り出す。レンフィールも部屋に置いていたフューリーを準備する。ここ最近は、レンフィールと二人だと何も言わなくても、意思の疎通が出来ている。

「ライトは、横笛ですか?」

「うん、少ししか練習してないけど、大丈夫だよ」

「失礼します。ライト様、オルデンも一緒にでもよろしいでしょうか?彼も聴いてみたいと…」

「構いませんよ?ライトが断る訳ありませんから」

 予定よりも一人観客が増え、寝室はちょっと狭い感じ。その分、より近い所で聴けるから良しとしよう。


 レンフィールと呼吸を合わせ、聖堂の時からの練習曲を俺は笛バージョンで、レンフィールはフューリーで演奏し始めた。

 お互いに違う楽器で、セッションさせるのは初めての事だった為、演奏しながら聴いていても、いつもと違う雰囲気の音楽に、自分の鼓動が高鳴る。

 こちらの世界に指揮。と言うか概念があるのか無いのか?それが無くても、お互いの奏でる音に…俺もレンフィールも共に同調する。


 一曲終えた時には、自分の側近達が全員集まっていた。…つか、こんな狭い部屋に集まるなよ。笛を吹いている時、気持が入りすぎていた為に、気が付かなかった俺自身も悪いんだけど。

「ど、どうしたのです?」

 俺のひと言に、オルデンと周回以外の皆がハッとして、散々に仕事へ戻る。

「ライト様、ありがとうございます!お約束を忘れず、お聞かせして頂いて…私感激です!」

「シュティッヒから伺ってはいましたが、これ程までとは、想像を超えていました」

「二人に気に入ってもらえて光栄です。これもレンフィールが指導してくれた賜物だと思っています」

 騎士の二人が感激してくれた事はホントに嬉しい。音楽で人を笑顔にする事。これ程気持が良いことはない。レンフィールのおかげだと言うのも嘘ではない。

「ライトも随分と笛を練習したのですね?短時間だったのに…。やはり才能でしょうね」

「才能は言い過ぎでしょう?レンフィールの教え方が良いんです」

 イチャイチャしているつもりは無いが、他からはそう見えたらしく、オルデン、シュティッヒは「やはり仲がよろしいのですね」と苦笑いされた。


「ライト様、レンフィール様、オノロケはそれくらいにして頂いて…夕食の準備がととのいました。メルリ様とミューレン様も参りますので…その…ご報告をお願いします!お二人のお言葉でご確認したいのです!」

 その様子を見ていたアイリスが夕食だと呼びに来た。始めはいつものツンツンした態度だったが、最後の方はモジモジと恥ずかしがる。アイリスが恥ずかしがる事ないんだけどな。

「う~ん、わかりました。メルリ様とミューレン様も呼んでいたのですね?レンフィール、これは逃げられませんね」

「仕方ないですね。政略的な婚約ですが、事実は事実。従者にも主として報告は必要でしょう?まぁ、私は政略的だと言っても、本意ですが」

「ですから、オノロケは後程にしてくださいまし!」

 しびれを切らしたアイリスに二人で怒られ、騎士の二人には大笑いされ、半ば強引にリビへと連れて行かれたのだった。


「今日はライトとレンフィールよりとても重要な報告があります。夕食前に本人達からお話させます」

 寮に合流したメルリにより一言あり、側近達はピシッと姿勢を整える。凄い広いリビングとは言えないがそこそこの広さがある。しかし、俺に従者として関わってくれている全員が集まるとなかなか狭い。

「今、メルリ様よりお話がありましたが、私とレンフィールは、様々な事情がありますが、婚約した事を皆さんに報告致します。私の年齢の事もありますが、早くても学習院卒業後に正式に婚姻の儀となるでしょう」

「私レンフィールは、弟の様に接して来ましたが、今回の件は心より嬉しく思います」

 俺達の言葉に、皆が大声をあげて喜んでくれた。これはこれで良かったんだろう。常に傍で仕事をこなしてくれている者、なかなか関わりを持てないマキシスも…皆が喜んでくれた。的ホントにいい人達だよ。

「この権に関しては、学習院内、寮内で学習院長より生徒、教師全てに報告されます。下町出身のライトを守る為です。其は皆さんも理解しておいてください」

「お姉様、固い話は終わりにしましょう。そんな事情がありますが、おめでたい事には変わりません。今日は無礼講で食事をしましょう」

 いつまでもメルリは固い話。それに自棄が差したミューレン。ホントに双子か!?

 それにしてもマキシスが豪勢な食事を準備してくれた。冷めてしまう前に戴きたい。

「お腹が空いたので、戴きましょう!」

 その後ワイワイ、ガヤガヤと会食を楽しんだが、翌日学習院長と寮長にこっぴどく叱られた。メルリとミューレンは、しれっと聖堂と修道院に戻っていたことを知ったのは、数日後の事だった。くそっ、次顔を合わせたら文句の一つ二つ言ってやる!

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