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新しい自分がやるべき事  作者: かもめ
第二十六章
31/37

~選択講義~

「では、私は聖堂のお務めがありますので、一旦失礼しますね」  レンフィールには聖堂の仕事があるため、いつまでも部屋でじゃれている事は出来ない。朝食の最中に聖堂へと向かって行った。入れ替りで、フォスターとアイリスが戻る。

「ライト様!」

「あうっ!?どうしたのですか!?」

 部屋に入るや否や、アイリスに抱きしめられる。

「レンフィール様と、ご婚約されると聞いて私嬉しくて嬉しくて…」

「あぁ…まだ正式に決まった訳ではないのですが…」

「はい、伺いましたが、十中八九本決まりでしょう」

 俺の中では決まっている。が、最終判断は両親。何回も言うが、当初の目的はレンフィールと結婚する事ではない。与えられた僅かな力で、救われた命の恩を返したい。それが、あの見せられた未来を変える事。そう思っている。確かにレンフィールは可愛らしい女性である。しかし、世の中の女性を敵にする発言になってしまうが、通過点の一つにしか過ぎない。もちろん、当初の目的を果たした、達成したと感じた時、そこから彼女との時間に生涯を捧げるつもり。

「私はメルリ様にお話しして、ご結婚後も仕えさせていただきます!」

 気が早い!落ち着けアイリス!

「と、とにかく、今日から学習院が再開ですから…」

  ようやく離してくれた。一体なんだよ。もう。


「おはようございます、ライト君体は大丈夫ですか?」

 学習院では、ヴィンセントが迎えてくれた。いつも涼しい顔をしている彼だが、心なしかニコニコしている様に見える。

「おかげさまでもう大丈夫です。ミューレン様のおかげですね」

「それは良かった。二、三日学習院がお休みになってしまったので、今日から少し早足で講義を進めますね。ライト君なら遅れる事もないでしょうけど」

「頑張ります」

 講義室はワイワイと賑わっている。ほんの数日だと言うのに、互いに懐かしがっている様にも見える。

 俺は特に親しい人間はパルノエルスしかいないから、他の者達と馴れ合う事もない。普段通り席に着き、講義の準備を進める。

「ライトさん!」

「心配かけましたね」

 声の主はパルノエルス。聞いた話によると彼女にも疑いがかかったと聞いている。申し訳なかった。でも、パルノエルスの一言で解決の糸口を見出だす事が出来たとも聞いている。

「無事で何よりです。でも、ご友人が…」

「それは…未だに信じられないと思っています。会えるなら会いたいのですが…接触禁止と言われていますので」

「お辛いかと思います。ですが、周りに支えてくださる方々がいる事を忘れないでくださいね」

「ありがとう」

 パルノエルスも良い子だ。詳しくは知らないが、聖堂楽師としていざこざがあったらしいが…、敵対してもおかしくない、レンフィールの教え子が俺。普通なら心配なんかしない。俺だったら間違いなく喜ぶ。まぁ、人の不幸は喜んではいけないのだが…、実際そんな感情を抱いていても不思議ではない。

 

 軽くパルノエルスと会話を交わし、そろそろヴィンセントが講義の準備をして、この講義室に来るはず。確か、予定が間違っていなければ、選択講義を決める所からだった。トラブルがあったから、学習院自体が臨時休校になり予定がずれている。

 まもなく、予想通りヴィンセントがやって来た。

「皆さん、おはようございます。今日は、講義の選択から行っていく予定ですが、その前に学習院長より全生徒にお話しがあります」

 学習院長から話ねぇ。あの、伝達魔術の拡張バージョンだな。そのうち聞き出して見よう。

『学習院長ロックヴォルフだ。先日、学院内の生徒同士の問題が起きた。各自側近から聞いているだろう。被害者に関しては、親友ですら失う結果となった。命を狙い、人間関係を破壊する卑劣な反抗…断じて許さん。仮に他領から来ている生徒だったとしたら、抗争、戦争になりかねない。そういった事から、全生徒、自分の行動、言動を見直す事!以上』

 ごくごくありきたりな話だった。…リリも下働きに出される。何も悪くないのに。世間から見たら共犯者だが、何も知らないまま、巻き込まれたリリは俺からしたら被害者と同じ。

 どうしようもないもどかしさと、『ライト』に対しての申し訳なさで俺は俯いていたらしく、パルノエルスが優しく声をかけてくれた。

「先程私が話した事を、思い出してください。ライトさんは一人じゃありませんから」

 その話を思い出すと尚更刺さる。俺は、こっちに来てから、出会う人には恵まれている。しかし、その分、今回の様な出来事があると反動がすごい。良い方向に物事を考えているつもりだが、なかなか切り替えが出来ない。

「ありがとう、大丈夫だよ」

 精一杯笑って答えるが、自分でもわかるくらいの、作り笑いだろう。まぁ、それだけ俺にとっても衝撃が大きい出来事だった。


 その後講義は、ヴィンセントが言っていた通り、だいぶ駆け足で進んだ。内容はほぼ今までの復習。魔力の扱い、放出、拘束等…。一週間しか経っていないから、それが当たり前なのかも知れないが。

 あっという間に午前中が終わり、午後からは講義の選択、そして軽いテストを行うらしい。この一週間の授業を把握出来ているか?だそうだ。これに合格すれば次の段階へと進む事になる。基礎中の基礎と言ってもおかしくない内容の講義だったから、不合格って事はないだろう。


「ライト、ちょっと…」

 寮に戻る途中、フォスターからひき止められる。

 人目を気にするようにいつもの階段の下へ。

「今、ベルサリオが対応してるけど、ご両親が来てるわ。シャレン様に会いたいって…」

「父さん達が?う~ん、メルリかミューレンに話して、面会の予約しなきゃだね?」

「そうね、今からどちらかに話して来るから、オルデンとシュティッヒを呼ぶわ。寮の玄関にいるみたいだから、そのまま行ってあげて」

「うん。わかった!」

 すぐにオルデンとシュティッヒが、迎えに来てくれた。

「お待たせいたしました!」

「お昼休みの時間が限られています、急ぎましょう!」

 二人の警護で、玄関に急ぐと父さんとベルサリオの姿が見えた。談笑しているのか、とても険悪な感じではない。父さんが、騒ぎ立てているのかと思った。

「父さん!」

「おぉライト、領主様に報告したいんだが…」

「ここにはいないよ!ベルサリオから聞いたでしょ?それに、今フォスター先生が、聖堂長の所に向かっているけど、面会の予約しなきゃならないんだ。今日の今日って訳にはいかないよ」

「そう言っても、父さんはあの時領主様に、こうしろああしろって言われてないぞ。予約が必要だなんて事だって知らなかった」

 不機嫌そうに言われるが、確かに考えてみれば知らなくて当然か。領主裁判の時に、出席する必要があると言われたと思うが、多分迎えが来たんだと思う。俺からしてみれば、父さんも父さんだしシャレンもシャレンだ。お互いに肝心な所が抜けていただけ。

「ライト様、仕方ないですから、お父様にはメルリ様の所でお待ち頂いてはどうでしょう?シャレン様からの回答が来るまでであれば、それが一番当たり障りないかと。寮の部屋にはお連れ出来ませんし、ここでお待ち頂いても、何者かと他の騎士に連行されては、面倒な事になりますから」

 ベルサリオの意見が最もと考え、父さんにはその様にしてもらう事にした。

「ベルサリオ、この場合どうしたら?フォスター先生に伝えるとしても午後の講義に間に合う様に戻ると思いますし、父さんは勝手に聖堂長室には入れませんし…。かと言って私も午後からの講義があります。聖堂に向かって貰っても、案内する人がいません」

 俺の質問にベルサリオは少し考え、騎士二人に視線を向けた。

「オルデン様か、シュティッヒ様のどちらかに案内してもらえばよろしいのでは?抜けた所にエドガー様をお呼びすれば、院内の警護も手薄にはならないでしょう」

 確かにエドガーも一応、警護の責任者になっている。フォスターが到着するまでは、部屋で昼食を摂りながら待機してればいい。すっかり彼の存在を忘れていた。会話をする機会が少ないとはいえ、オルデン達と行動している時間が多いからだろう。

 俺は、ベルサリオの考えに賛同し、父さん達にはメルリの所で、待ってもらう。と、フォスターに、オルデンまたはシュティッヒに、父さんを聖堂に案内させるから寮に来てくれ。と、エドガーにそれぞれ伝達魔術を飛ばす。

 父さん達の前では、魔術を使ったこと、使える事は伏せてあった為、驚かれたがいちいち説明するのも面倒。学習院で学んだと一言で済ませた。


 その後、シュティッヒに聖堂へ行ってもらい、駆けつけたエドガー、オルデン、ベルサリオと共に一旦部屋へ戻った。

 少し昼休みの時間を使ったのでさっさと昼食を済ませ、フォスターの戻りを待つ。

「で、どうなんだライト?両親は例の件で来たのだろう?何か

 、話したのか?」

「いや、全然話して無いです。父さん達には父さん達の考えがあると思いますし、玄関で話した所で、揉めたりなんかしたら他の生徒に迷惑もかかります。どちらにせよ、私も同席しなくてはならないでしょうから、その時に聞いて来ます」

「そうか、実際帰宅して家族会議をした訳ではないのだろうから、多少でも聞いたのかと思ってな」

 エドガーなりに心配してくれていたのだろうが、場所を考えたらとても話した込める状況ではなかった。本来なら、エドガーが言う通り一旦帰宅して、家族で話し合いが筋なのかも知れないが、寮に残すとシャレンが言った為、俺は帰ることはなかった。しかし、俺がその場に居合わせてなかったと言う状況であれば、父さんも母さんもミラも、本音で話し合い出来たと思う。そうであってほしい。『ライト』の為にも、家族と一緒に過ごす方が良いのかも知れないが、少しずつ自分の立場や、環境、目的が変わってきている中で、ごくごく当たり前の生活をするのなら、世の中の人の為に業績を残した方が、「うちの息子だ!」と誇りに思ってくれるに違いない。そう言う父親だと思っている。

「戻りました。エドガーも、来てたのね?外に居なかったからてっきり居ないものだと」

「メルリ様からの私事で動いているのだ。ライトからの要請を無視したら、あとで何を言われるかわからん。叱られたくないから仕事をしている訳ではないがな」

 ものは言い様だが、その話し方は「怒られたくありません!」ってしか聞こえないけどね。


「先生、講義に行きましょう。ベルサリオは、一度聖堂へ行って、聖堂長から面会についての段取りを聞いてきてください。午後の講義終了後、シャレン様の所に行かなくてはならないでしょうから、そのへんの事もふまえて確認願いますね」

「かしこまりました。講義の終了までには」

「セルジュ、アイリス、留守をお任せしますね」

 きっちり段取りを付け、講義に向かう。自分でわからない事や、出来ない事は申し訳ないが、側近達に丸投げである。その貯めにそう言う達がいるのか?どっちでも良いけど。


 午後は予定通り軽いテストを行い、全員が問題なく合格した。魔力の扱いの基礎なのだから、合格出来なかったらそれはそれで問題だろう。

 満足気にヴィンセントは「全員合格」と宣言し、生徒等は歓喜の声をあげた。…基礎なんだからそんなに大騒ぎしなくても。

「ライトさん、選択講義は音楽ですよね!?」

「あ、そうですね」

 ワクワクなのか、ドキドキなのか判別出来ないが、パルノエルスが再度確認してきた。でも、内心俺は「やっとこの時が来た!」と思っているが、紳士的に落ち着いているふり。なんだかんだあって、ここ数日楽器に触れてないし、音楽も聴いてない。むしろ、パルノエルスよりも俺の方が、ワクワクドキドキなのだ。

「選択講義は、各々違います。各講義によって講義室も違いますので、気を付けるように。では、講義室を説明します。騎士育成講義は…」

 ヴィンセントにより各講義室を伝えられ、各々選択した講義に向かう。言うまでもなく、音楽講義室と言うらしい。出も場所を考えたら知らないから、移動はフォスターと一緒に行くことに。

「ライトさん、一緒に行きましょう」

 とてとてと、駆け寄って来たパルノエルスは相当楽しみにしていたのだろう、自然と笑みがこぼれている。俺も、楽器に触れることを思うと、先日の出来事で受けたショックも和らぐ。


 フォスターとパルノエルスの教師に連れられ、移動する事数分、音楽講義室に着いた。階段を二つ昇ったからここは三階。上級生がいるフロアになる。そうそう、ここの時間はかなりアバウト。数分と言ったのも、体感的にって事になる。

「ライトさん、誰とお話しですか?」

「い、いや、独り言…」

 この娘は、心が読めるのか!?


「ここが音楽講義室。ライト様、先に言っておきます。私、音楽は全くダメです。課題を出されても共に練習できるか…」

 困った、どうしましょう?的な表情を浮かべるフォスターだが、何も心配ない。レンフィールがいる。

「大丈夫です、レンフィールがいますから」

「ライトさんが羨ましいです。レンフィール様と楽器を奏でる事が出来るのですから」

 そう語るパルノエルスの瞳は、少しでも自分の技術を向上させたい、その為にも実力者である楽師が、専属教師として側近に欲しいと言っている様だ。元々、聖堂楽師の家系であるパルノエルスの周りには、そんな人達は沢山居ると思うのだが…。

「選択講義は上級生も一緒です。今年は、アウンティナルーのみの新入生になってますが、上級生には他領出身の方もいらっしゃいます。少数ですが。危険な事はありませんが、他領との文化の違いがありますので、答えにくい事は柔らかくお断りしてください」

 パルノエルスの教師により、軽く説明された後に音楽講義室へと入室した。


 音楽講義に入った途端、気持ちが昂る。中央ホールに引けず劣らずの装飾を施してある壁に、見た事のない楽器も複数おいてある。どれも早く触りたい、どんな音が鳴るのか、それだけで心拍数が上がる。

「ほう、まさか予想通りに選択してくるとはなぁ」

 ん?誰か俺を?いやいや、それはパルノエルスの事を言っているんだ。

 視線を声の方に向けると、何処かで見た事のあるような雰囲気の男性が立っている。え~っと…

「なんだ、聞いてないのか?フォスター!どう言うことだ!?」

 既に、講義に合わせて準備をしている上級生が数人居たが、全員がクスクスと笑っている。その中の一人が、状況を飲み込めない俺とパルノエルスに説明してくれた。

「先生は、特待生が間違いなく音楽を選択してくると豪語していたのですよ。せめて、誰が先生なのか位は、フォスター先生も貴方に教えてあげても良かったのに」

「はぁ、間違いでなければ…ヴェイル様…?」

 俺の問いに、上級生の彼女はコクコクと頷く。って言う事は、シャレンの弟!?イコール、フォスターとレンフィールのお父さん!?うわぁ、やりにくい…パルノエルスには申し訳ないが、今すぐここから逃げ出したい。

「どう言うこととは?学習院長からも伺ってないのに、何も彼等に、教えようがありません!一番驚いているのは私です!どうして、お父様が音楽講師なんて…」

「兄上からの命令だ。将来の…」

 それ以上言うなって勢いで、ヴェイルの口元を両手で押さえるフォスター。その目は真剣に、未だ公表してはならないのよ!と言わんばかりだ。それに気付いたのか、手でわかったわかったと合図するヴェイル。

「まっ、とにかくだ、講師は私一人ではない。あとで合流する事になっている。…専属教師は、教師同士で、自己紹介でもしておけ。ライト、パルノエルスか、君たちは上級生の前の席だ。今年は二人だけなのか?全く、音楽や楽器の重要性を知らない者が多いな」

 ヴェイルの指示により、俺とパルノエルスは決められた席に座らせられる。

 まもなく、上級生も全員揃ったようで、講義が始まった。俺とパルノエルスを含めて三十人位か?それぞれが得意だと思われる楽器を手にしている。半分以上がフューリーなのがわかる。俺だけが、フューリーと横笛を持参している。

「先程は失礼した。皆も知っているように、ここにいるライトが特待生だ。そして専属教師が、私の娘のフォスター。だが、贔屓するつもりはない。そのつもりで」

 別に贔屓してほしいとは思ってない。少なくても音楽関係の専門学校への入学が決まっていたんだ。音楽に関しては多少の自信はあるし、こっちに来てからレンフィールと言う聖堂楽師が指導してくれた。

「二人にどれくらい楽器が弾けるのか、聴かせて貰おう。上級生達との自己紹介はそのあとだ。では、パルノエルス。君からだ」

 ヴェイルは厳しい眼差しで、楽器を弾くように指示をする。その実力で扱いが変わるのか?それは、わからないが、何かの基準になるのだろう。でも、パルノエルスの音楽愛からすれば、問題ないだろう。

 緊張した表情のまま、教卓の前にある椅子に座りフューリーを構える。


「上出来だ。流石楽師の家系に産まれ育ったと言いたい」

「ありがとうございます」

 僅かな時間だが、彼女の演奏に講義室の空気が柔らかくなった。上級生の中には、うんうんと頷いている者もいる。初めてパルノエルスの演奏を聴いたが、上手だ。しかし、初めてパルノエルスと出会ったあの時、まともに楽器を弾けることなんて…と言っていたが、この短期間に相当練習したのだろう。気が付かなかったが、指先が細かい傷が沢山あった。


「さて、ライト君だ」

 ヴェイルが、にやにやとしている意味が解らないが、とにかく俺の番。先程、『得意な曲』とパルノエルスは言われていたので、聖堂でレンフィールと弾いていた曲にしよう。

 久々にフューリーを弾く感じ。上手く弾けるか。フューリーにゆっくりと魔力を流していく。


「見事…」

 いくら自信があると言っても、人前で弾くのはこっちに来てから初めてで、緊張が体を固くしていた。でも、ミスはなかった。ミスればレンフィールが渋い顔をするのを覚えていたから。ここには居ないが、せっかく教わって来たし、目の前にいるのはフォスターとレンフィールの父親だ。

「感動ですライトさん…」

「よく練習している。これだけ弾ける上級生が、どれだけいるのか?負けていられないな君たち」

 ヴェイルは上級生に言葉を掛ける。そんなに上手く弾けた?俺はミスが無いように、と、意識しただけなのだが。それでも、余韻に浸ってくれている上級生もいる。

「では、二人の実力がわかったところで、上級生は昨日の課題を、パルノエルスは上級生と挨拶をしておきなさい。ライト君はここで退室だ。上級生との挨拶は明日以降でも構わない。わかっているだろう。兄上…領主から呼ばれている」

「は、はい」

 一旦講義室はざわついたが、「演奏について前々から呼ばれていた」と生徒にヴェイルが言った事で、なんの疑いもなく静けさを取り戻した。

 ヴェイル、フォスターそして俺、三人で音楽講義室を出た。

「ライトよ、寮から城までは、お前の騎士を警護に使う。準備させてあるんだろ?」

「いや、今この場でシャレン様の所に向かうと聞いたので未だです」

 慌ててオルデンに伝達魔術を送る。もちろんベルサリオにも準備するようにと付け加えておいた。回答はすぐに来た。「学習院の正門で待ちます」と。

「全く、兄上はどこか抜けている。残念な返答になるのか、喜ばしい返答になるのか大事な事だと言うのに」

「お父様、仕方ありません。叔父様もライトのご両親も肝心な部分が抜けていたのですから」

 ふぅっと一つ溜め息をつくヴェイル。「急ぐぞ」その一言で駆け足気味に城へ向かうのだった。

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