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新しい自分がやるべき事  作者: かもめ
~第二十四章~
29/37

~領主裁判~

「はぁ、どうなってるのかなぁ」

「ライトが心配しても、メルリ様達に任せるしか無いですよ?」

レンフィールが言う通り、今俺が心配したところで、どうしようもない。

でも、まさかこんなに大事になるとは思わなかった。メルリとミューレンが、単純に後ろ楯としてサポートしてくれているだけだと考えていたが、それだけの事で、扱いが領主一族と同じだなんて誰が考えるか?

一通り自分の役割を終えたレンフィールが、メルリやミューレンより一足早く部屋に戻って来たのは、つい先程。今後の流れをフォスターから話されたあと。グラムを中心に関わっていた人物の取り調べが、行われると説明を受けた。

「近々、領主裁判で答えが出ます。ライトは何も心配ありません」

確かに、俺は被害者…。でも、少なくてもグラムは友人…そう思っている。そんな彼の行く末はどうなるのか、気になる。

「そんなに暗い顔をしないでください、ライト様。こうも大事になってしまい、それに、友人様が関わっていたとしても、主犯と思われるゲーリッチがいたのですから」

「そうだけど…」

「アイリスの言う通りです。裁判はゲーリッチが中心になるでしょう。メルリ様達や私と聖堂から共にしている事は、ゲーリッチは知っています。それを、公に領主一族の庇護ですと公表されてなかったため、存じませんでした。と、言える立場ではないでしょう。それでいて、下町の子供達を使ってライトを襲わせたのですから。ゲーリッチは厳しく裁かれたとしたも、下町の者達は罪には問われても、極刑となるような厳しい事にはならないですよ」

極刑と言う言葉に、返す言葉が無くなってしまったが、そんなに厳しいものなのか?いくらゲーリッチは好きになれない人物でも、それはあまりにも厳しいのではないか?

俺は全ての丸くおさまる方法を考えるが、全ての権力、権限は領主であるシャレンが握っている。どうしようもない…。

「うん…そうだね」

「お姉様、今日は一旦城の自室に戻ります。不安と思うライトをお願いしますね」

「メルリ様のお手伝いもあるのかしら?」

「依頼はされてませんが 、一人では大変でしょう。ミューレン様も空くと思いますが、明日以降のお務めもありますから。身動きのとれる私が、お手伝いに参ります」

「よろしく」とフォスターがお願いすると、レンフィールは険しい表情で部屋を出て行った。


不安でろくに眠れず寝不足だったが、あれから二日後、メルリより連絡が入った。

『本日、領主裁判を執り行います。レンフィールを迎えに行かせますので、フォスターと共に城へ』

伝達魔術は、それだけを語るとすぅっと宙に消えた。

「ベルサリオ、留守を任せます。アイリス、セルジュ、ライトの支度を」

『かしこまりました』

フォスターの指示に、一同が返事をし、そわそわと動き出す。

俺は、セルジュにより一度寝室に戻った。


「ライト様、今のところ正装は制服しかありませんので…」

「構わないです。幾つか準備した方がいいですかね?」

俺の質問にセルジュは少し戸惑ってしまった様だ。身の回りに関しては、アイリスが主導権を握っているため、勝手な回答が出来ないのだろう。

「後程、アイリスの意見を伺ってみます」

「そうしていただけると。私は勝手に判断出来ないので」

悪い人ではないけれど、セルジュは引っ込み思案な所が強すぎる。もう少し、自分を主張するような立ち振舞いを薦めよう。

「お着替えはお済みですか?」

そこへアイリスのではないか登場。着替えが終わっていることを確認すると、鏡の前へと座らされる

「お時間がありません。セルジュ、乱暴にとは言いませんが、もう少し手早くお願いします。ライト様は髪の毛が多いので、整えるのに時間が掛かるので、そのあたりも考えてください」

「申し訳ありません」

そう、髪のセットはアイリスの仕事。流石に異性の着替えを手伝うのは問題がある。

アイリスは手慣れた感じで手早く髪を整えていく。近代社会の様な、整髪剤等があるわけではないが、相応の物が多少備えてある。

「出来ましたよライト様。急ぎましょう」

「アイリス待って…!」

忙しくバタバタとした中で腕を引かれたもんだから、転んでしまった。二人は真っ青になり、慌てて起こしてくれた。

「アイリス、慌てすぎ!」

「申し訳ありません!私がつい、腕を引いてしまった為に…!」

「大丈夫、皆が待ってます、行きましょう」

床に思い切り顔をヒットさせた為に、鼻の頭が痛い。先程の勢いがなくなりアイリスはショボンだが、良い薬になったのかも。


すでにフォスターは支度が終わっていて、レンフィールも合流していた。いつもの様に、レンフィールとハグを交わし周りから溜め息が聞こえたのはスルー。

「では、行きましょう。オルデン、シュティッヒ警護を」

『はっ!』

レンフィールの言葉と共に、俺たちは城へと向かった。


メルリやミューレンと繋がりを持つようになって、もう数ヶ月経てば一年になろうとしているが、領主の城へ行くのは今回が初めて。学習院の正門より更に北へ向かったその正面に、城の正門が待ち構えている。

直接聞い事は無いし、聖堂や寮に必要以上に部屋が無いと言う所を考えると、レンフィールやフォスターの自室は城の中にあるのだろう。現状、フォスターは寮の部屋に、アイリスと共に寝泊まりしているため、本来の自室は誰もいないのだろう。

周りをキョロキョロと見回していると、フォスターから注意された。

「城に来るのは初めてでしょうけど、今はあまりあちこち視線を向けない様にしてください」

わかってるけど、やっぱり同じアウンティナルーの街の中とは思えない程立派な装飾品だらけで、圧倒される。

ドキドキした気持ちを押さえつつ、又、周りを見たい気持ちも押さえつつ、言われるがままレンフィールの後を追った。


しばらく進むと物々しい扉の前に着き、そこには『審判の間』と記されていた。

「この審判間にて、今回の事件についての裁判が行われます。まず、ライトにより容疑者の確認から始まりますので、聞かれた事に対して、素直に答えて下さい。私が側についてますから、心配しなくて大丈夫ですからね」


レンフィールが傍についていてくれる。それだけでだいぶ緊張がほぐれた。それでも、こんな所に来たくない。

ーガチャー

見た目よりも軽い音で、扉は開かれた。


中は、一般的な学校の教室二つ分位の広さで、パッと見ただけで、五十人は人がいる。これだけ人が居れば、決して広いとは言えない。

「来たか…。ライト、君の席はこちらだ。レンフィールとフォスターも共に着きなさい」

「はい」

物静かにシャレンに指示され、室内の視線を感じながらレンフィールに続く。

俺も、視線だけ皆の方に向け、信じられない光景に驚き足が止まってしまった。何故そこにリリが座らされて居るのか、全く理解出来ない。

「…リリ…!?何故!?」

それに気が付いたのか、苦笑いを浮かべ俯く。後ろからフォスターにつつかれているが、足が動かない。嘘だ…。

「ライト、早くしなさい。考えていることは解るが、今は席に着く事が優先だぞ」

シャレンにも指摘され、レンフィールに抱えられて強制力に椅子に座らされた。でも、どうして…。


モヤモヤと考えて入るうちに、領主裁判は開始され一人一人名前が呼び上げられていく。

容疑者が全員呼び上げられ出席が確認できた所で、今度は俺に声が掛かった。

「さて、ライトよ、ここに居る者達が、関係者…容疑者として連行された者達だが、間違いないか?確認する様に」

「はい、ライト、私が手を繋いで行きますので、指示通り動いてください」

俺は、またもレンフィールに手を引かれ一人一人確認していく。言葉が出ない。そう、リリの前に来たときにますます複雑な感情が沸いてきた。

「シャレン様…リリ…いや、この少女は、今回私が襲われた時には、おりませんでした。それと、ゲーリッチ様と、もう一人の方もおりませんでした」

「そうか、よろしい。席に戻りなさい」

今は何を考えてもどうしようもない。言われた通りにしよう。

「レンフィール…」

「戻りましょう…」


「まず、ここに居るライトだが、下町の学び舎から優秀な子供が居ると、私は報告を受けていた。娘である聖堂長と修道院長に。学習院に入学させ、基本的な知識を一つ一つ学ばせることができれば、将来このアウンティナルーにとってかなり有能な人材となる。と、まで説明された。しかし、下町出身であるライトには、入学金を準備することなど不可能。だから、もう一つの入学方法として試験を受けさせたのだ」

確かに、そんな流れだった。それで、聖堂に通う様になったんだ。

「万が一、試験に合格することが出来なければ諦めろ。と言うことと、合格したら責任を持って面倒をみなさいと二人に伝えたのだ。それの結果、見事試験に合格し、入学することとなった。その時点で、ライトは、領主血族では無いが、領主関係者と言う立場も獲得していた。その事に、お前達は気が付かなかったか?そもそも、告知しなければわからない事か?」

ゲーリッチとシェイビーに厳しく視線を向け、問い詰める。

「この件に関して、下町の者達は解らなくて当然だと、私は考える」

多少、グラム達とその両親達は緊張が緩んだように見えた。

「ゲーリッチ、お前は聖堂職でライトがメルリ達と行動しているのは把握しているな?」

「は、はい…」

「シェイビー、ライトが入学式の時に、メルリと出席しているのは知っているな?」

「はい」

交互に質問を投げ掛け、確認する。もちろん二人の答えは、認知していたと答える。シェイビーと言う者は、正直学習院で関わり無いが、恐らく同期入学者なのだろう。

「知っていた上で、この事件を計画し引き起こすとは、決して許されるものではない!自分で手を下さず、何も知らない下町の子供を金で使うとは!」

「ですが、領主様!ライトは下町の人間…。私は下町の人間のせいで父親を亡くしました!それに、私の気持ちをメルリ様が汲み取ってくれた為に、聖堂の職へと就かせて貰えたと思っています!」

「黙れ!発言は認めていない!」

的はずれの言葉と、許可を取らない発言でシャレンは、怒鳴り付ける。

「なんだ、貴様の父親が亡くなった事と、この事件に何が繋がりがあると言うんだ!?言ってみろ!」

イライラを隠しきれないシャレンは、自分の事を言いたいゲーリッチに語らせることにしたらしい。いっそ、自分の事ばっかりだなぁ。

「ありがとうございます。父は、十年前に魔物が関所を破壊して進入してきた時、下町の人間達に魔物の前に父を放り出したと聞いています!裁かれるのは下町の人間のはず!それなのに、下町の人間は、裁かれる事もなく、のうのうと生きていて…。だったら、復讐してやろうと考えた…それに、メルリ様に近く下町の汚ならしい子供が目障りで…だったら下町の人間同志で争い事起こさせてやろうと計画した…。下町の奴等は金さえちらつかせれば、なんとでもなりますから…」

こいつ、とんでもない悪党…貧困層である下町の住民を…。人間と見てないのか?

「逃げ場所である引っ越し先も斡旋してやるから、手続きだけやっておけ。と、言えば、アイツ等も一応人間。刑に問われるのは嫌がるから、言われた通りに動く。実際、地名を挙げても、話なんてしてないし、手続きが終わって引っ越し先には住居がない…。戻るにも、手続きが出来なくて、この街には戻れない。金が尽きれば、死さえも考え始める…。所詮、中流以上の人間にとって、下町の者など、簡単に操れる。行動や寿命さえも!そして、苦しんだ父と同じように、苦しんで…」

「やめろ…」

ゲーリッチの発言にその場にいた全員が凍りついた。耐えかねたのか、シャレンがその先を遮る。その表情は怒りと、悲しみが混じったようにも伺える。

「それが、お前の本心だな?そうか…事実を知らされる事なく育ち、いつしか憎悪の塊として生きてきたのだな」

「それがどうしたのです!?私は父の苦しみを、下町の人間に分け与えてやるつもりだったのです!ライトと言う、私の恋心を邪魔し、そして下町の人間代表者に!」

そして、ゲーリッチは俺の方を睨む目付きで振り向く。薄ら笑いと蔑む感じの雰囲気を出し、突っかかってきた。

「結局、貴様の存在のせいで私はまたこうして罰せられる!大人しく、死んでいれば良かったものの、這い上がって来やがって!いつまで…どこまで我が一族を苦しめるのだ!」

「兄上!兄上は間違っています!」

今までの内容に静まり返っていた空気の中、シャレン以外の声が上がった。それは、ゲーリッチの弟と言うシェイビー。彼もまた、発言許可を取らず話した事で、シャレンは不機嫌そうになる。

「領主様、発言を許可してください」

「よかろう」

「私は、詳しく家の事情に関しては聞かされておりません。が、自宅の書物の中に、父に関しての記事を見ました。それは、決して兄上の申す内容とは、かけ離れた内容です。領主様よりお聞かせ下さい…」

シェイビーの話に、ゲーリッチは驚きを隠せないでいる。


その後、シェイビーの依頼によりシャレンから全てが話された。

ゲーリッチの父は、第三騎士団団長だった事。当時、魔物の襲来があったとき、部下達に下町の者を避難させろと指示を出し、応援の騎士団が合流するまで食い止めると、囮になった事。魔物の進行を食い止めたが、応援が合流した時には命を落としていた事。それに関して無事に避難出来た住民は、感謝していた事。感謝の気持ちとして、東区の北部に慰霊碑を建てた事。

「嘘だ…そんな事…。じゃぁ、私の行為は無駄だったのと、見当外れではないか…」

涙ながらに声を絞り出すゲーリッチだが、「事を起こしてしまったのだから」とシェイビーに慰められるが、立ち上がれそうにない。


「さて、先に進む。シェイビーよ、お前が共謀したのは何故か?」

「はい、私は兄の力になりたかっただけです。恋路を邪魔され憎んでいるのだと…」

シャレンは、メルリから提出された調書にメモを書き入れながら話を聞く。実は弟の方がしっかりしているんじゃ?

「それで、言われるがまま、下町の子供達を金で雇ったのだな?」

「…はい」

無言のままペンを走らせている。時折、軽くため息もついているようだ。

「ミストリア記入を頼む」

「はい」

ミストリアと呼ばれた隣の女性に調書とペンを渡し、被告達の前へとシャレンは、足を進めた。

ゲーリッチ兄弟にはもう話はないのか、目の前を通りすぎ下町の子供達、そして、その後ろに控えている彼等の両親達に向かい立ち止まる。

「では、最後に君達…。金品の受け渡しがあったのだから、両親達も聞いておけ。どういう経緯だ?」

厳しく向けられる視線に、誰一人として目を合わせることの出来ない雰囲気だが、グラムだけは顔を背ける事なくシャレンを見つめていた。

「街で、声を掛けられたのです。学習院の生徒と思われる方から…。手を貸してくれ、人を集めろと…金貨を見せられ、ライトを襲えって…」

周りで聞いている親達は、ざわつく事もなくただ黙って聞いている。恐らく、内容は聞かされていたのだろう。後悔の表情は、グラムとリリの両親だけだ。

「そうか、間違いないかシェイビー?」

「はい。ライトが東区出身と言われていたので、同じ位の者を探し、声を掛けたのが彼です」

「調書通りの内容と言うことだな」

それ以上シャレンは、下町の者に話す事はなかった。

中央の自席に戻り腰かける。一通り全員に視線を送り、深く深呼吸をした。

「ここに居る全員が聞いたと思うが、調書通りの内容と相違無いと判断する。計画的且つ個人の感情にて起こった事件と言えよう。しかし、残忍な凶悪犯罪と言っても過言ではない。無論、直接関わっていない、各両親達にも隠蔽しようとした責任はある。よって各々に厳罰を与える事とする!」

先程よりも厳しい目付きになり、ミストリアから調書を受けとる。どんな内容の厳罰になるのか更に俺は不安になった。自然とレンフィールの手を握る力も強くなった。出来ればリリが何故関わっていたのか知りたい…。


「シャレン様、ライトと私の希望をお聞きいただけますか?」

皆がどんな結果となるのか、沈黙を破ったのはフォスターだった。

「どうしたフォスター?」

「はい、願わくば、その少女…リリが何故関与したのか伺いたいのです。下町の学び舎では、私の教え子になりますし、ライトの幼なじみになります。言葉に出さなくても、ライト自身も気にしている部分でしょう」

「そうか…。では、リリよ、私は調書を確認し内容は把握している。二人に経緯を説明しなさい」

そうシャレンは、調書にてわかっていた。だからあえて聞くことをしなかった。

言葉を掛けられたリリは、うつむき加減で重い口を開いた。

「グラムから、学習院が休みになればライトが必ず来るだろうから、来たら教えろと…。事情は聞きませんでしたし、聞かされませんでした…。ただ、来たら都合が悪いとか言って誘いを断れって。そして、何処に…何処の方向に向かったかだけ報告してくれ…と」

だからか、あの時断られたのは…。…あの時から、もう計画は始まってたんだ…。

リリの言葉にショックを受けた。言葉も出ない。左隣に座っているフォスターも悲しみの表情。まさか、自分の教え子が…と、思っているのだろう。

「その後、またグラムが来て、金貨を数枚手渡して来ました。その時に、初めて内容を聞かされ、とんでもないことだと気づいたのです…」

大粒の涙を流している…。大声を上げて泣きたいのだろう。

「ライト、フォスターもういいだろう。大罪にはかわらないが、心情を察してやれ」

「はい…」

シャレンにより俺とフォスターの質疑は打ち切られた。親友と呼べる彼女だっただけに、俺もショックだ…。

「改めて、今回の事件に関しての、判決を下す!」

その一言で、場は一層張りつめた空気になり、皆が強ばる。

誰もが、命を落とす様な事にだけはならないでほしいと願うしかなかった…。

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