表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しい自分がやるべき事  作者: かもめ
第十八章
22/37

~本気~

講義終了後、フォスター達と共に一旦自室に戻り、聖堂へ向かう準備を整えた。準備と行っても何か持って行ったりする訳ではなく、制服から着替えたたけだが。

メルリからの指示で、「聖堂へはフォスター、エドガー、ベルサリオの三人で来てください」との事で、騎士のオルデン、シュティッヒは、そのまま自室の警護、セルジュ達は部屋の掃除やら夕食の支度やらやってなさい的な事をベルサリオから指示されていた。

「早く行きましょう」

フューリーが手元に届く事情を知っているフォスターは少し呆れた顔で苦笑いだが、ベルサリオはなぜそんなに急ぐことがあるのかと言わんばかりだ。


外出の際、生徒と専属教師は学習院の玄関から、仕えは寮の専用出入口から出ることになり、伝達魔術で呼び出したエドガーとベルサリオとは表の道で再度合流した。

「全く今日は非番だと言うのに」

「仕方ないですよ、聖堂長からの指示ですから。まぁ、僕のわがままでもあるんですけどね」

俺とエドガーのやり取りに二人はクスクスと笑う。

「ライト様のわがままではないでしょう?相談事があって聖堂長の所に向かうのですから」

「そうね、ベルサリオの言う通りですよ」


他愛もない会話をしているうちに聖堂に到着した。相変わらず聖堂は物静かで、人の気配すら感じない。

裏口から本堂に入り、正面に見える扉が聖堂長室の扉。左手正面に見える大きな扉を抜ければ自宅方面。…寮に入ってまだ一日やそこらなのに、家族やリリの事が気になってくる。これがホームシックってやつなのか?

コンコン

「開いています」

中からメルリの声が聞こえ、俺達一同はそろそろと入室する。中にはミューレンとレンフィールも控えており、その顔を見ただけで不思議と安心した。

「ライト~、待ち遠しかったよ~!」

挨拶をする前にレンフィールが、抱きついて来た。何か柔らかいものが顔に当たるがスルーしよう。

「聖堂にいたときからずっと一緒に過ごしていたから、一日離れただけでお姉ちゃんは寂しかったよ」

「落ち着きなさいレンフィール。ライトは逃げたりしません!」

メルリの叱責によりレンフィールはショボンとなる。「話が終わったらね」と告げ軽く慰める。

「ベルサリオと、エドガーは一旦下がりなさい」

ミューレンにより二人は退室させられる。まだ一言も喋ってないのに。


「で、どうしたの?」

「メルリ相談なんだけど」

メルリとフォスターの様子を見ると、上下関係なく話がしたかったらしい。緩い空気が流れ始めた。いや、しかし、今まで見たことのないレンフィールの崩れた姿は想像付かない。むしろ見たくない。おそるおそる彼女に視線を送るが、いつも通りニコニコしているだけで、何も変化は無さそうだ。

「こら、ライト、レンフィールお姉ちゃんは良いから、ちゃんと自分で説明して」

「あっ、う、うん」

フォスターに怒られ、一連の事情をメルリとミューレンに説明する。

ただの一人言からパルノエルスと知り合い、選択講義を同じ音楽にしようと誘われた事。楽器を含めた音楽に関してはレンフィールから教わっている事…。

「…て、言う事で一応話し通した方が良いかと思って、一人じゃ判断できないってこと答えたんだ」

「うんうん、それはいい判断だったね。ね、メルリ?」

「間違いなく。選択講義については、自分で決めていいよ?まぁ、それに関しては言ってなかった私達にも落ち度はあるし。ただ…」

少し厳しい顔になる、保護者代理の双子。同じ顔だからちょっと面白い。でも笑えない感じ。

「ただ、パルノエルス自身はどう考えているのか解らないけど、彼女の家系は、アウンティナルーでは名の知れた楽師の家系。以前、聖堂楽師だったの、父親までは」

でも今はレンフィールに…?

「レンフィールも貴方と一緒で、音楽に関しては思い入れが強くてね…。魔力の強さと、信じられない才能で聖堂楽師の座を手にしているの。その事を根に持っていると思う。聖堂楽師自体は一人じゃなきゃダメだって事は無いんだけど、魔力の差も大きすぎて、領主から解任されたんだ」

そんな事情があったとは。レンフィールに教わっている事を言ってしまった事は問題無かったか?

「でも、いい機会かもね」

何かを思い付いたようにメルリがポツリとこぼした。

「あの家系からすれば仕事を盗られたと、思っていないわけがないから、ライトを潰しに来るわ。レンフィールの教え子を潰せばまた聖堂楽師としての仕事が与えられるのではないかと…。別に個人的に嫌な人達では無いけど、徹底的に実力差を見せつける必要があると思うの。領土全体の魔力強化を図る上ではね。今以上に向上心を持って更に励んで貰えれば自然と魔力も楽師としての実力も上がると信じてる。ライト出来る?」

「…まぁ、本気を出せば、レンフィール位は出来ると思う。ただ、僕は、曲を知らない。どんな曲がどんな譜面なのかさえ解れば、いくらでも引けるように努力は出来る。今までもこれからもそれだけは変わらないよ。ここにいるみんなの努力は無駄にしたくはないし、するつもりもない。まして、好きな音楽で負けるのだけは死んでも嫌だしね」

ふつふつと、やる気が湧いてきた。話した感じでパルノエルスは決して悪巧みや、復讐的な事を考えてる様には思えないが、裏にそんな事情が隠れていて、メルリがそう考えているなら、可能性が無いわけではないだろう。

また一つ俺に課せられた事が増えたが、この件に関しては手っ取り早く片付けられそうだ。本気で…全力で期待に応えてやろうではないか!

「じゃぁ、選択講義は音楽にするよ?」

「構わないわ。逆に色々頼んでしまって申し訳ないなぁって…。私とミューレンも、全力で援護するから!」

「お姉ちゃんも協力するよ?」

「ったく、あんた達は。常に一緒に居るのは私なんだからね!」

この件をきっかけにまた一つ団結力が高まった気がする。


「エドガー、ベルサリオ、入ってちょうだい」

ある程度方針が再度決定した所で、エドガー達二人を招き入れた。この時には、通常モードに各々戻っている。いやいや、疲れないのかねこの人達。

「選択講義については、聖堂長と協議した結果、ライトの判断で音楽を選択する事になりました。フォスター共々引き続きライトの支援援護を、宜しくお願いします」

「かしこまりました、ミューレン様」

相変わらず淡々とメモをとるベルサリオ。仕事は凄く真面目だけど、プライベートはどうなのかうっすらと気になる。

「エドガー、警護についている二人は、ライトと良い関係を築けているかしら?」

「いえ、寮内の移動中しか接する時間がない様なのが現状です」

「それならば、一人増やすなり、エドガー自身が警護につくなりして、ライトが安心して身を任せられる様に、関係を確立してください」

「了解しました」

主旨は違えど、俺も、騎士達とコミュニケーションを取りたいと思っていた。手間が省けた。


「レンフィールぅ…」

「わかってますよ、これから一緒に寮に行きますから」

メルリと、ミューレンをちらっと見たが、「さっさと行け」と言いたそうな態度をされた。一応、肝心な相談は終わった事だし、文句はないだろう。

「ベルサリオ、このフューリーを持ってくださる?私一人では、二つも持てませんから」

ベルサリオにフューリーを持たせ、聖堂長室を出る。その瞬間に大きなため息が聞こえた。色々な意味で具合悪そうなエドガーだ。

「まさか気にしていたことを言われるとは…。オルデンとシュティッヒからは言われてたんだ」

「それで、僕もエドガー様に話そうと思ってたんですよ?」

「言い方が悪いが、メルリ様と君は思考が同じなのか?まぁ、いい。どこかで時間を出る作ろう」

そのへんの段取りは彼に任せておこう。勝手にこちらから持ち出すのは申し訳ない。


学習院に戻りまた別々に、入る事になるがレンフィールは堂々と正面玄関から入ってくる。さっき仕えは出入口が別だと言われたが。

「レンフィールはここから出入りしていいの?」

「あら?私も保護者代理ですよ?保護者はどの出入口を使ってもいいんです」

なるほど、保護者は仕えている訳ではないから、関係ないのか。保護者だったりお姉ちゃんだったりと、忙しい誰かさんの姉であるフォスターは、隣で頭を抱えている。

今日の講義自体は終わっている学習院だが、思いの外生徒達がいる。自主学習を講義室で行う者だったり、図書室を利用する者だったりと、割りと賑わっているそうだ。

そんな生徒達を横目に、寮に向かう。が、レンフィールが、目立ち過ぎるのか、それとも二人が姉妹だからなのか、見掛けた生徒達、教師達がフリーズしている。

「レンフィールは、聖堂楽師だから滅多に学習院に来ませんからね。生徒や教師達が驚くのも不思議ではないです」

「入学式の時は、楽師団の中に目立たないように紛れ込んでたんですけどね」

どうやったら目立たないように紛れ込めるのか、逆に教えてほしい。あの時チョロチョロとあちこちみていたが、レンフィールとミューレンの姿は発見出来なかった。


夕食の準備はまだ終わってなく、多少空き時間があった。今日はレンフィールも夕食に同席するとの事で、フューリーを触るチャンス。

そわそわしていると、それに気付いたのかフォスターが声を掛けてくれた。

「せっかく時間が有るのですから、一曲どうですか?レンフィールもいることですし」

「そうですね、聖堂で練習した曲しか解らないですけど…。ベルサリオ、フューリーお願いします」


その後、夕食までレンフィールと二人で弾き続けた。なんとも言えない、心地よいフューリー音色が部屋中…いや、寮内に響き渡ったのではないかと思う。

楽器には多少なりとも自信があるつもりもないだが、とにかくレンフィールは演奏ぐ上手い。見たことのない楽器であるフューリーを、聖堂でひたすら練習したつもりだ。しかし、こうして二人で演奏すると、彼女の技術は相当なものだとつくづく痛感させられる。

「…。僕もまだまだだね。多少間違いがあったよ」

「いえいえ、ライトも十分上達しました。これからは曲を沢山覚えていきましょう」

上達した。その言葉に救われた様な気持ちになった。パルノエルスの兄、会ったことはないが彼の言葉に偽りはないようだ。並みの弾き手では、敵わない。

「ライト様、レンフィール様素晴らしいです!私も学習院で人並みではありますが、音楽を勉強しましたが…。これ程までに素晴らしい演奏は初めて聴きました」

興奮気味にアイリス語る。アイリスだけではなく、その場にいた全員が言葉を失くしたらしい。まぁ、俺のミスをレンフィールが、フォローしてくれた為、外れた音が聴こえにくくなった部分もあるから、完璧の様に演奏出来たのは紛れもなく彼女のおかげ。

こりゃホントに本気で練習しなきゃ、レンフィールに勝てないな。


翌日。

朝から隣の席であるパルノエルスが、キラキラと瞳を輝かせてずっと目で追ってくる。その視線は椅子に座るまで外される事はなく…

「ライトさん、昨日、何処からかフューリーの音色が聴こえたのですが、わかりますか!?」

ん!?隣の女子寮まで響いていたのか!?久々の演奏だった為に、少し気合い入れすぎたのかも。

「えっ?あぁ…」

「誤魔化してもダメです。レンフィール様が学習院に来られてたのですから、ライトさんのお部屋だと知ってますから!」

知ってるなら「わかりますか!?」なんて聞くなよ。

「素晴らしいですね、私はまだ魔力を自在に操るとこすらままならないのに…楽器を奏でられるなんて…。私は、楽師として名誉を築いた我が一族の恥です」

「そんなに悲観的にならなくても。僕はあの時一曲しか知りませんし…。これから共に学習しましょう」

俺なりにフォローしたつもりだが、パルノエルスは凹んだまま。いや、これでいいのかもしれない。異性であるパルノエルスを凹ませるのは気分的によくはないが、裏事情を聞いてしまっているこの状況であれば、仕方のないこと。

「そうですね。卒業までに、驚くほど上達して見せますから」

「あ、それと、選択講義は音楽にする事にしました」

その言葉に、パルノエルスは気を良くしたのか、「良かった!」と一言。単純過ぎて分かりやすいんだけど、複雑な心境になりなが、一日講義を受ける事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ