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新しい自分がやるべき事  作者: かもめ
第十一章
14/37

~真意~

「今日も色々あったなぁ」

先が思いやられる。レンフィールはお姉ちゃん宣言、メルリはぶっちゃける、エドガーはなかなか厳しい…身が持たない。


てとてとと家路を急ぐ。夕方になるとだいぶひえこむが、レンフィールから貰った手袋のおかげで、手は冷たくない。明日ちゃんと礼を言おう。


「今帰り?」

「フォスター先生」

いつの間にか学び舎の前に差し掛かっていたらしい。

「妹好き勝手やってない?大丈夫?」

そんな質問しちゃうかね?身内だから気になるのか?

「うん、大丈夫。これレンフィールから貰ったんだ」

ピンクの手袋を見せる。カラカラと先生は笑い手袋を眺める。そんなに笑わなくても… 色が似合ってないからか?

「あいつ、まだ引きずってるんだねぇ。楽しみにしてたからなぁ」

「もしかして…弟か妹の…」

無言で首肯く。産まれて来る予定だった弟か妹の為に準備していた物だった様だ。フォスター先生の話だと、ちょうど今くらいの季節に産まれる予定だったらしい。大きめの手袋を用意して長く使って欲しいと願っていたそうだ。

「仲良くしてあげて。レンフィールの為にも」

「わかった。お姉ちゃんには、僕がついててあげるよ」

軽く手を降りその場を立ち去る。先生は、不思議そうな顔をしていたけど、どのみち話しするんでしょ?黙っていても、ネタバレするよ。


「ただいまぁ、あ~疲れたぁ」

「まだ二日だよ。もう疲れたって言ってたら、試験前に死んじゃうよ?」

「ミラ、部屋まで連れていって」

帰宅した瞬間、緊張の糸が切れたのか一気に極度の疲労感と睡魔が襲ってきた。立っていられない。

「何言ってるの、夕飯食べないとダメだよ。どんな事してきたのかも聞きたいし」

「あぁ…うん…でも…今日はぁ…もうムリ」


意識が戻った時には朝だった。夕べ帰宅したときのとんでもない疲労感が、キレイさっぱり無くなっている。エドガーから飲まされた変な薬みたいな黒い物体の効果なのか?とにかく今日は、すこぶる体調がいい!

「おっはよー!ミラ夕べはごめんね」

「本当だよ!急に倒れるんだもん、ビックリしたよ!父さんに運んでもらったんだからね!」

聖堂でどんな事やってるのか聞きたいって言ってたから、朝からガンガン怒るのも仕方ない。とは言え、夕べは限界だった。安心感からなのか、突然襲ってきた睡魔に耐えられない状況は、覆す事は無理。

「どんな内容を勉強しているかは解らないが、無理に続けたって身に付かないぞ」

「大丈夫だよ。今までと勝手が違うし、慣れない事ばっかりだから、緊張してるだけだよ」

ミラとのやり取りを聞いていたのか、部屋を覗いて来る父さんの顔が見えた。無理してるつもりは無いけど…。心配させてしまったな。

「今日は話し聞かせてよね!」


聖堂が相当気になるのか、家を出るまでしつこくミラに絡まれた。数ヶ月前まではあんまり干渉してこなかったんだけどな。学習院行きが決まってから随分と会話が増えた。あっ、まだ学習院入学決まってないや。

今朝はリリと一緒に行くか。学び舎としてはまだ少し早いけど、問題無いだろ。

「おはよう、準備出来てる?」

「今日は出来てるよ。行こうか?」


「聖堂はどう?…まあ、まだ三日目だけど」

リリもまた心配しているようだった。つい何日か前までは、毎日毎日同じ学び舎に通っていた訳で、気になるのだろう。

「慣れない事ばっかり。詳しくは言えないけど、なかなか大変。二日しか通ってないけどさぁ」

体力的な部分は特に大変だとは思わないが、各キャラの色の濃さだったり慣れない環境だったりと、精神面は慣れるまでは大いに疲れるだろう。一人一人強力な印象があるけれども、みんな良くしてくれるし、悪い人じゃない所だけは安心出来る部分だ。

「今日、明日くらいまでは、初めての事だらけだろうけど、それ以降は反復や応用になるだろうから、徐々に大変とも思わなくなるよ」

大変なのは雪が降ってからの通いなんだけど…弱味を見せてリリにも心配させるわけにはいかないな。記憶を辿ると、雪が降った時の学び舎までの道程ですらなかなか困難だったと浮かんでくる。

「せっかく聖堂に呼ばれて、いずれ学習院に入るんだから、しっかりやらなきゃね!入学出来なかったら、何をして来たのよってなるよ?」

リリの言う通り。いくらメルリ達には入学に関しては大丈夫だと言われてはいるが、それなりに勉強してそれなりに受験を迎えては不合格になる。それでは、俺と今は眠ってしまった本当のライトとの固く誓った意味が無くなる。

「大丈夫、心配しないで!」

自信満々に応えたからなのか、リリの表情が緩む。そんな周りに心配させてるのか?聖堂に通ってても、その場を見て確認している訳ではないから、心配や不安が出てくるのだろう。

「じゃぁ、今日も頑張ってね」

「うん、行ってくるよ」


家族も親友であるリリも、たった二日間だけで不安そうな言葉が次々と出てきた。俺自身なんとも思わないが、身近な人達にこんな成果が出てますって報告するためのいい手段はないか?自分の口から説明しない限り無理だ。


「遅いですよライト。お姉ちゃん待ちくたびれました」

いつから待っていたのか判らないが、決して遅刻している時間ではない。朝の刻を知らせる鐘もまだ鳴ってない。気が早すぎるよレンフィールお姉ちゃんは…。

「今日はミューレン様が授業をしてくれるそうです。放出と備蓄が上手にできるといいですね?」

「楽器に触れる?」

「もちろん。放出は何をするのにも魔力を使うための基本動作。出来なければ、魔術全般はもちろん、楽器、祈りの唄全てにおいて何も出来ませんから」

ここ何日か魔力って言葉を聞きすぎている為か、「魔力が使えなければ何も出来ない」って言われても、驚きもしなくなった。へーっそうなんだ。その程度。そもそも、いちいち驚いていたらきりがない。


一人で歩けると訴えるが、どうしても手を繋ぎたいらしく聞き入れてくれない。これも諦めが肝心なのか?

勉強部屋に入り、聖堂の衣装に着替える。

「明日からお姉ちゃんが着せてあげますね?」

流石に上から羽織るだけの衣装を着せてもらうのは、ちょっと気が進まない。それくらいは本当自分で出来ますから。

「これくらいは自分で出来るから大丈夫だよ」

「遠慮しなくていいんだよ?」

「レンフィールお姉ちゃんには、音楽を教えて貰えればそれだけで嬉しいよ」

軽く笑顔を送っただけでレンフィールは喜ぶ。ナイス俺。うまくかわしたと思う。

「何かあったらすぐ言うんだよ?」

その一言だけ残して部屋を出る。嫌いでは無いけれどとりあえず夕方までは会わなくてすむ。何から何まで世話したくてぱたぱたしているのが言わなくてもわかってしまう。


「おはようございます。ライト」

今日はミューレンが魔力に関しての講師。何回顔を合わせてもメルリとの区別が付かない。同じ服を着ていたら絶対間違う。

パタンと部屋の扉を閉め、椅子に座る。


「レンフィールを嫌いにならないでね?」

昨日事情を、メルリとフォスター先生から聞いた為、それほど面倒だとか嫌いだとか感じていない。彼女らも、レンフィールの行動には多少目に余るものがあるのだろうか。

「大丈夫、レンフィールは良くしてくれるし、事情聞いてるから」

「それなら安心しました。では、さっそく授業に入ります。放出と備蓄の前に、適性色の強弱を説明します」

メルリが話してくれた適性色の順番を思い出す。白が基本だったよな?聞いているうちに、再確認できるか。

「魔力の順位は、白、青、黄、緑、赤、金の順位であり、その順に強くなります。ここまではいいですか?」

「うん、大丈夫。そして各力に対して何個対応出来るか?って事だよね?」

「そうですね、そこまで把握していれば大丈夫です。では、先日の出来事について説明しましょうか?」

メルリの魔力が吸われたとか言ってたアレか。突発的な事で、メルリがぐったりしていたのは間違いない。その後…一方的に事が進んでしまい、うやむやになったほんの数日前の出来事。


「あの時、まだライトは解放されてなかったのです。適性色の検索時、メルリは玉を経由して魔力を流した瞬間に、メルリの魔力の刺激によって解放されたんです」

ここまでの過程は判っている。解放するキッカケは、人それぞれ違うと、言われた事も覚えている。疑問に思うのは、解放されてないのに、フューリーに触れて魔力が吸いだ出された事。

そして、解放後帰宅した後に、家族や途中話したフォスター先生に影響が無かったこと。

「メルリは既に解放されていると思ってた様で驚いていました。実際は、そうじゃなかったですけど…。よくよく考えれば、魔力を使う為の訓練等をフォスターのいる学び舎で教える事はないわけで」

「じゃぁ、訓練とかやらなきゃ解放出来ないわけ?」

きっかけは人それぞれとはいうものの、解放するための訓練が必要って事になる。

「基本的に学習院の初等部に入学してから解放に関しての訓練を受けますが、ごく稀に、入学前に解放してしまう者もいます。そうライトの様に」

流れ的に解放済、で、入学するものだと思ってたがそうではないらしい。東区や南区出身者が魔力を使えないのは、自分自身に魔力が備わっている事に気付いていない事と、学習院に入学出来る程の金銭的な余裕が無いと言う所らしい。毎日必死に稼がなくては、食い繋いでいくのも厳しい現実と言える。ただし、どんな人間でも訓練さえ受ければ魔力を使いこなす事は容易な様だ。

「それなら、入学試験を受けて合格すれば、誰でも入学出来て、学力も上がって、街自体魔力が枯渇するなんて事は回避出来るのでは?」

「結論から言えばそうです。しかし、青以上の地下を持つものはごく僅かな数しかいません。ですので、学び舎を設置し、学力が飛び抜けて良い子供を探すのです。魔力は学力に表れると言われていますので」

いくら頭数を揃えても使えない者はいらないって訳ね。だったら見込みのある物に、照準を合わせれば育てる価値、意味があると。

「リュウ…いえ、ライトには特別な理由がありますけどね」

「犯人は貴女達ですよね?」

笑って誤魔化された。


「話が逸れたので戻ります。ライトの解放された魔力が、メルリの魔力を、吸い出した件についてです。魔力は、保有可能量によりますが強ければ強い程、下級の魔力を取り込もうとする性質があるようです」

「ありますって、断言しないのは?それと、学習院に入学する前に解放してしまった場合は?」

「確実な所まで解明されてないからです。が、研究結果等からそのような動きが有ることは確認出来ています。また、入学前に解放してしまった場合、騎士団に身柄を確保され神殿または、学習院に収容されます。その時、周囲に影響が出ない様に神具を用い一時的に魔力の流れを止めます」

止める?あの時何もなく帰宅した。何かの道具とかお守りとか持たされたなんて記憶もない。たまたま聖堂に通い始めた時だったからなのか、身柄を確保されはしなかったのものの…


「自分の意思で魔力の流れを止めましたよね?」

「…あっ!…」

そうだ、あの時水の流れを止めるイメージをした。そしたら、何か力が抜けるように…

「簡単に言うと、無意識の中で備蓄をしたのです。拘束が確実にて来てないとはいえ、備蓄で流れを止める事が出来たのなら、周りに影響が出ないと判断しました。なので、神具は使用しませんでした」

随分メルリとミューレンは話し合いしているんだ。ミューレンは現場に居なかったはずなのに、詳しく内容を知りすぎ。仲がいいのか、仕事だからなのか?

「たったあれだけで…。拘束は必要ないんじゃ?」

「必要なのです。備蓄はあくまでも体内から外に魔力が漏れない様し、使うことにより失われた魔力を補充する為のもの。拘束し、体内の魔力の動きを止めなければ、増えてしまう一方でそのうち勝手に溢れ出てしまいます」

なんか子面倒だなぁ。何かにつけてあれこれと。もっと簡略化出来ないものか?解放、拘束、放出、備蓄いちいち考えるのが億劫だ。

「どうしました?次に行ってよろしいですか?」

自然と難しい顔になって考えていたらしい。ハッとして我にかえる。気付かれる前にやめよう、後々でもいくらでも考えられる。

「あっ、うん、楽器に魔力吸われる件だっけ?」

若干不審な目で見られたが気にしない。この面倒問題は知らず知らずのうちに俺が解決してやる。

「そうですね。楽器の素材が神木と言われる木を使っています」

「神木!?って、それって昔からあって、その土地の守り神だったりする、木!?」

それはいくらなんでも罰当りだよ。御神木って詳しくないけど、古い神社にあったりする神様の木でしょ!?それを楽器にしてしまうなんて。

「神の木はあってますが、守り神の様な役割はないですよ?リュウイチさんとして生きた世界の常識は当てはまらない事の方が多いかと。神木が産まれた土地はその年、豊作になります。土地を豊かにする力を持っています。それを我々は太古から神木と読んでいます」

「そんな木が人間の魔力を吸うの?」

実りを与えてくれるそんな木が、人間を襲うのと一緒じゃないか。

「魔力を、拘束出来ていない者のみ吸いだされますので、学習院卒業生はほぼ普通に触れます。それと、吸い出した魔力を神に届けると言われています。昔、凶悪な犯罪を犯した者に、命が絶えるまで魔力を捧げさせると言う刑があったそうです。神に感謝の意味も込め、来年もよろしくお願いいたしますと願うと聞いた事もあります」

全然感謝じゃないですけど。血を流さない極刑ですよね?つー事は…神木が少なくなってる?いや、原点に戻ると神の力が足りなくなってるから、神木が少なくなってるのか。その原因は…魔力不足、そして演奏者不足、豊作にならず食物が減る、行き着くところが…あれか。

「察しがいいですね。そう言う事です。なので、ライトにはその強力かつ膨大な魔力を使い、楽器を通じて神に力を届けて欲しいのです。そして、メルリが言った様に、父である領主が間違った考えを持たない様、付き添って欲しいのです」

「やれるだけ…ね」

ライトと誓ったが概ねの内容が今ハッキリとしたが自信がない。それだけの大役をやってのけろと?難しい。思っていた以上にハードルが高い。心が折れそう。

「ムリだから、今すぐやめるとは言わない。せめて援護してくれる人が居れば…」

「私達姉妹とレンフィール、エドガーでは不満ですか?」

ミューレンは真剣に目を見て話してくる。その言葉に偽りはないだろう。講師として身近にいる四人は信用しても大丈夫だと思う。…もう乗った船だし引き返せない…か。

「みんな離れないでいてくれれば、やれるだけやるよ」

「よかったぁ…困らせてしまってごめんなさい…あっ」

メルリに引き続きミューレンも素が出たね。ここ多分遮音壁じゃないから素が出たら聞かれてるかもよ?

「では、放出の…」

「大丈夫、恐らく出来る。お姉ちゃん呼ぶよ」

イメージは水瓶に水道の蛇口!蛇口を開ければ出る…少しずつ少しずつ…レンフィールの顔を思い浮かべ…更に電話だ!

「いけっ!」

「まさか伝言魔術?」


間もなく勢いよくレンフィールが入ってきた。よほど急いで来たのか息が上がっている。

「ライト!よくやったね!」

ぎゅうっと抱き締められた…みなまで言わないが心地よい。

「伝言魔術を、教えてないのに…。なんて伝えたのですか?」

「放出出来たから、今すぐ来て誉めてってね」


しばらく心地よい所に抱き締められて、ベタ誉めされて気分も上がった。そして、昼の刻を迎えた。


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