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めぐる季節は麦の道 二 狐の祝言  作者: まーサンタ


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13/13

あとがき

 『めぐる季節は麦の道 二 狐の祝言』を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


 第一作では、恵子と麦人が一年の季節を歩きながら、家族の温かさや、日々の中にある小さな不思議を見つけていきました。


 第二作となる今回は、そこから少しだけ世界を広げました。


 テーマに選んだのは、「狐の祝言」です。


 夏の晴れた日に、突然雨が降る。


 いわゆる「狐の嫁入り」と呼ばれる不思議な現象から、物語を膨らませました。


 ただ、この物語で描きたかった「狐の祝言」は、人間の結婚式そのものではありません。


 山や森、川、そこに生きるものたちが、これからも共に生きていくための「約束」。


 そんなものとして描いてみました。


 八歳の麦人にとって、狐の世界はまだ完全には理解できません。


 けれど、理解できないからこそ、怖がるのではなく、素直に受け入れることができる。


 その姿を、恵子は急いで説明することなく、少し離れたところから見守っています。


 恵子は、麦人に何でも教える祖母ではありません。


 時には答えを教えず、


「さあ、どうかな」


「自分で考えてごらん」


と、少しだけ先を歩きます。


 それは、麦人がいつか自分自身の目で世界を見るためです。


 そして、そんな恵子自身も、すべてを知っているわけではありません。


 不思議なものを感じ取ることはあっても、その意味までは分からない。


 だからこそ、恵子と麦人は似ているのだと思います。


 二人とも、分からないものを分からないまま受け止めることができる。


 それが、この物語に流れる小さな「魔法」なのかもしれません。


 また、賢蔵にも若い頃の記憶を語ってもらいました。


 昔の賢蔵が見た狐の祝言。


 そして、今の麦人が見た狐の祝言。


 同じようでいて、決して同じではありません。


 季節が巡るように、人も変わります。


 山も変わります。


 そして、物語も次の世代へ受け渡されていきます。


 麦人はまだ八歳です。


 これからたくさんのものを見て、たくさんのことを知っていくでしょう。


 狐のことも、いつか忘れてしまうかもしれません。


 あるいは、大人になってもずっと覚えているかもしれません。


 でも、どちらでもいいのだと思います。


 大切なのは、狐を見たという出来事そのものではなく、その夏に感じたもの。


 山の匂い。


 雨の音。


 木漏れ日。


 白い花。


 鈴の音。


 そして、恵子と一緒に歩いた時間。


 そういうものが、麦人の中に小さな種として残っていれば、それで十分なのです。


 物語の最後で、麦人は狐を追いかけませんでした。


 ただ、恵子と一緒に次の季節へ歩き出しました。


 これは、第一作から続く『めぐる季節は麦の道』という物語にとって、とても大切なことでした。


 不思議なものを追いかけるのではなく。


 過ぎていく季節を惜しみながらも、次の季節へ進んでいく。


 春から夏へ。


 夏から秋へ。


 そしてまた冬を越えて、春へ。


 人生も、きっと同じなのだと思います。


 立ち止まる日があってもいい。


 迷う日があってもいい。


 それでも、また歩き出せばいい。


 麦人の歩く道の先には、まだたくさんの季節があります。


 恵子の髪は、これからもメデューサのように風に揺れるでしょう。


 麦人は、これからも調子に乗ったり、少し理屈っぽくなったりしながら成長していくでしょう。


 そして二人の前には、また新しい出来事が待っているはずです。


 もし、いつかまた二人の物語を書くことがあるなら。


 その時もきっと、恵子は少し先を歩いていて、


「むーさん、行くよ」


と声をかけるでしょう。


 麦人は、


「待ってよ、恵子さん!」


と言いながら、その背中を追いかける。


 そんな二人の姿を、これからも見守っていただけたら嬉しく思います。


 最後に。


 この物語を読んでくださったあなたの毎日にも、ほんの小さな不思議がありますように。


 雨上がりの虹。


 風に揺れる木の葉。


 どこからか聞こえる鳥の声。


 夕暮れの匂い。


 そして、誰かと並んで歩く道。


 そんな何気ないものが、いつか大切な思い出になることを願って。


 季節はめぐります。


 麦の道も、まだまだ続いていきます。


 ありがとうございました。


                ――『めぐる季節は麦の道 二 狐の祝言』

                         あとがき

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