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結果報告

6.結果報告

「よいしょっと……そういえば……この死体……魔族のものじゃあねえのかい?」


「ああ……こいつらは他国……ハリキルと国内ではエラルドの冒険者組合を脱走し、指名手配がかかっていた魔族だ。


 冒険者組合職員や軍の兵士など多くを殺傷した残忍な魔族だった。ボーキ海の小島に潜伏していることを突き止め逮捕に向かったのだが戦いになり、やむを得ず俺たちで処刑した。だが冒険者組合もハリキル国も魔族に逃げられた事は公にしたくないようだ。だから……このことは口外しないで欲しい。」


 漁師は巧達が乗ってきた船を上からのぞき込み、魔族の死体に触って問いかけたが巧は脱獄囚だと答えた。


「ああ……成程……それで……魔族と互角以上に戦えるだなんて……冒険者さんたち……つええんだなあ。」


「いや……まさか俺たち二人と相棒の犬だけじゃなくて、まだほかに特級冒険者が四人も揃っていたからね。」


「ほお……道理で……大丈夫さ……俺たちは口はかてえ……仲間だけが知っている漁場は、金をちらつかされても絶対に漏らさねえからな。安心してくれ……。」


 六人の漁師らは魔族二人と眷属四人の体を木材で組んだ階段を器用にわたりながら港まで持ち上げ、そこから大八車を使って港から一里ほど離れた小高い丘に穴を掘り魔族二人の体を埋め、一抱えほどもある岩を上に置いて墓石代わりにした。

 ついでに冒険者組合まで眷属の遺体を運び、組合へ引き渡すのを手伝ってくれた。


「ありがとう……これは礼金だ……くれぐれも口外しないでくれ。」


「ああ……大丈夫だ……俺たち漁師も……せっかく釣り上げた魚や……特にサメ漁の時なんか魔物らも覚えていて猪系や狼系にワシ、タカ系の魔物らが大挙して押し寄せ獲物を横取りしていきやがることがあるから……俺たち漁師も魔物や魔族を恨んでいる。奴らに関することは絶対口が裂けても言いふらさねえさ。じゃあな……。」


 笑顔で手を振る漁師らと別れ、巧たちはイーストリバー河口へ向かった。


「うまい事魔族の件は言い繕いましたね……さすが巧さんです。どうせ魔王の羊皮紙のことは知れ渡ってはいないでしょうけど……それでも魔王に関わっていた魔族らに知れるとボーキ海を詮索される恐れはありますからね。


 墓を暴かれ、彼らの体を回収されて再生されても困りますしね……ですがよかったのですか?一人当たり銀貨二枚の礼金で……呼んできてくれた漁師さんにも銅貨十枚手渡して……銀貨十二枚以上の出費……半分出しましょうか?」


 エミリアが巧に笑顔で話しかける……彼女と巧の二人だけでは冒険者らを穴を掘って埋めるどころか、数十尺も水位が下がった状態で港へ遺体を上げることすら叶わなかった筈で……うまく言い繕った巧に感心した様子。


「たとえ侯爵ら四人が運んだとしても、あんな巨体の魔族二体の遺体を上げることは無理だっただろう。人を雇うしかなかったはずだ。


 だが冒険者組合に魔族二人を倒して墓穴掘って埋めたことを眷属の遺体引き渡しの際に報告しておいたから……職員が墓を確かめた後で金貨二枚が報酬となるので、当然ながら漁師らに支払った分は差し引いた残りを六等分しておいた。


 だから金銭的には全く問題はない。本来ならば手伝ってもらった漁師らにももう少し支払ってもよかったのだが……あまりに高額だとかえって怪しまれるからな……勘ぐられたり、思わぬ高収入が得られたことをあちこちで言いふらされたりしても困る。一刻ほどの仕事で銀貨二枚でも高額報酬だ……それでも死体を扱う仕事だから適正とも思えるしな。


 ちょうどいい金額設定と考えた。勝手に散財してしまい侯爵たちには大変申し訳ないが、許してもらえるだろう。


 残念だったのは、エミリアが戦ったベルンの兄が持っていた魔道具だな……魔道具の扱いにはさほど慣れていないと言っていたようだが、言葉通りに冒険者が使う通常の魔道具同様強度や魔法効果を設定できる仕様だった。冒険者同士の戦闘では勝者が総取りだから、本来ならエミリアのものになるはずだったが……。」

 巧が礼金のことは問題ないと歩きながら答えたものの、不満そうにエミリアと目線を合わせる。


「ああ……そういえば……そうでした……魔族は捕らえて生かして引き渡しても遺体で引き渡しても礼金は頂けるんでしたね……。


 ですが彼らが起こした惨事でエラルドでもハリキルでも多くの犠牲者が出ているという事でしたから……被害者たちのご遺族へのお見舞金にできたらいいと思ったのですよ……私はもう十分な数の魔道具を所有しておりますし……たとえそれを魔道具の競り市に出品したところで、その収入の使い道があるわけではありませんからね。


 少しでもお役に立てるようにと……組合経由で競り市に出して頂いて、その売り上げをご遺族や負傷者の治療に当てて頂くようお願いしたのですよ。」

 どうやらエミリアは、眷属が所持していた魔道具は魔族らが起こした惨事の被害者救済に当てるよう願い出た様子だ。


「だが……腰につけていたものまで含めると四つもの魔道具があったのだろ?現状相場であればいくらになっていただろうか……まあエミリアのものだから、エミリアが満足するような使い方をすればいいと思うのだが……ハリキルは豊かな国だし、エラルドだってボーキサイ国であってもあそこは特別に……エラルドに近いから景気は良さそうだったからな。


 被害者へは十分な補償が行われていると、俺は思っているのだが……。」

 巧は少し残念そうに、小さく息を吐いた。


「まあまあ……そんなに欲張っても仕方がありませんよ……それよりも……魔族の方の首はありませんでしたよね?二体とも……手足は切り取りそれぞれ別々に離して埋めましたけど……首だけ……巧さんがこっそり首だけ何処か別の場所に埋めたのでしょうか?


 まさか……ボーキ海へ捨てて来たなんてことはないですよね?」


「二人の魔族の首はまだ持っている……俺の冒険者の袋に布で何重にもぐるぐる巻きにして入っているさ。


 万一にでも魔族の遺体の墓が暴かれたとしても……首がなければ絶対に再生できないだろうからな。首だけは持ち帰り……どこか人知れず山奥にでも埋めるつもりだ。」


「ああそうですか……特にヘルムと名乗った魔族の方は、異様に強かったですからね。復活されては大事ですから……いい考えだと思います。」

 慎重派の巧らしい言葉にエミリアは何度も頷き、またもや感心した様子。


「恐らく魔族は皆強いのだろう……確かにあの二人は魔王直属で傑出して強かったのだろうが……ヘルムが言っていた。


 一万人規模の精鋭軍相手でもなければ本気は出せないと……本気を出して勝っても仲間に馬鹿にされてしまうから、本気でやるつもりなどなかったともな……だが本気になった途端に侯爵は火だるまになり一瞬で倒されてしまった。


 本気になった魔族はどれほど恐ろしいのだと……背筋がぞっとした。あんな……奇跡のようなことが起こらなかったなら、今頃立場は完全に逆転していただろう。」

 巧がしみじみと語る……


「そういえば巧さんと出会った時、そのようなことを仰ってましたね……そういった驕りの隙をついて倒すのだとも。

 ですが本気を出した魔族をも倒したのですから……巧さんはすごいですよ……。」


「いや……だから……俺にもどうやったのか未だに分かっていないんだ。もう二度とあんなことは出来ないだろうし、期待しないでおいてくれ。」

 本気の魔族をも倒してしまう巧の強さを称える笑顔のエミリアに対し、巧はぶっきらぼうに答えた。


「ですが本当に……色々と考えさせられました。まさか……ボーキサイ国で川の水を使わないとするご先祖様からの教えに……魔王が関わっていただなんて……思いもしませんでした。


 それに……魔族と人間が袂を分かった事情……恐らくあの場でヘルムさんが言っていたことが正しいのでしょう……人間のエゴで獣を平地から追いやり自分たちの土地であるかの如く振る舞い何ら疑問を感じていなかった……そりゃあ傍から見たら横暴で傲慢で……どうしようもない思い上がりだと感じますよ。


 私は人間のことを魔物達から襲われる弱い立場だと思って居りましたが……全く逆だったのですね……人間側が獣を追い立て行き場を失った獣らが人間に対抗するために協力し合い魔物化した……それを魔王が支持し魔族が従った。


 そう考えたなら……何とか譲り合って共生できないものかと……本気で考えてしまいますね。」

 エミリアの顔から笑みが消え、俯き気味に魔王寄りの考えを打ち明ける。


「滅多なことを口に出すものではないぞ……下手をすると眷属扱いされ、拷問の末一家皆殺しだ。

 確かに魔王の主張は一理あるとは思うが……今さら人間社会の発展を止められるか?


 どこか広い平野部を確保し、高い金網の塀で分割して中を魔物らの保護区としたとしても……それは決して共生とは言えない。魔物らは限られた区画内で限られた食物を得て生きていくだけだからな。


 本当の共生とは互いに自由に生きることのはずだ。冒険者ではない普通の人間にしてみたら魔物は脅威の存在だ。だから魔物の住む巣窟の近くでは住めないだろうし、田畑で魔物の姿を見つけたなら駆除を依頼するだろう。そうしなければ自分が襲われかねないからね。


 魔王や魔族らが主張する魔物と魔族と人間の共生社会なんて絵空事で……奴らがどう描いているのか俺には全く想像もできない……なんせ魔族らにとっては魔物なんてか弱い生き物だが、普通の人間にとっては脅威であると本当に認識できているのか……それでもやらねばならないと……そう信じているだけではないだろうかな。」


 面帯で表情は読めないが、巧は魔物たちとの共生社会など到底望めないと否定的な考えの様だ。


「そう……ですか……」

 さすがのエミリアも言葉が続かなかった……



 船はイーストリバーを遡上し、王都へ着いてすぐに巧たちは王宮へ向かい王様に報告。


「二人ともご苦労であった。この世の終わりともいえる災厄からまた今度も見事救って頂き感謝する。だが……今後一年間は常駐して警護の必要性があるのだな?分かった……引き続きよろしく頼むぞ。本当に有難う。


 すぐに引き返す必要性があるのであれば……向こうで食べるものに困るであろう?王宮の食糧庫から必要な分を持って行っても構わんから、よろしくお願いする。」


 元々威厳はあったが、久しぶりにみる国王の姿は顔色も血色よく腹が出ているわけでもないが恰幅よく、以前に比べより威風堂々としているように感じられた。


「ははっ……かしこまりました。ご配慮感謝いたします。」

 謁見室で国王に報告し、ボーキ海水位が回復するまで今後一年間の警護が必要なことも伝えた。王様は携帯食用の食材を提供してくれるとまで言ってくれ、これには食材調達のために魔物巣窟掃討を考えていた巧たちも喜んだ。



「戻りは風向きが悪く六日もかかってしまったから、すぐに帰らなければ侯爵たちが困るな。食材は食糧庫のものを頂いて、船の上か……冒険者の袋に入れて置いてなんだったら島で天日干しするとしよう。すぐに出発するぞ。」


「ですがただでさえきつい緊縮財政……未だ河川の水は農業には使えず、使えるようになったとしても作物の収穫は数ケ月先……家畜に至っては数年先となります。王様はああ仰いましたが、ご厚意に甘えてよろしいのでしょうか?」


 侯爵たちは二週間分しか携帯食がなく、日程から考えるとすぐにでも出発しなければならないのだが、それでは食糧調達が間に合いそうにない。かといって王宮の食材を頂くのは心苦しい思いが……


「ああ……別に構わんよ……今は王宮の食糧庫には食材が有り余って……いや……食料廃棄などになってはいかんから、日々の宮廷行事などに沿ってきちんと計画的に食材調達を行って居るが、それでも足りなくなれば発注し翌日には届けられる。以前と違い王都内でも食糧事情は格段に回復しておるからな……。」


 エミリア達と共に国王との謁見に参加したエミリアの父シュタインベック公爵が、食糧庫の食材を持って行っても構わないと笑顔を見せながら告げた。よく見るとスーツも以前見た時のエミリアが渡した金で誂えた物よりも、さらに一ランク上の上物を着用しているようだ。


 確かに公爵であり国の要職に就いているのだからこれくらいの恰好はして欲しいと思うエミリアたったが、なぜこうも短期間で変わってしまったのか首をかしげる。


「どうしてそんな急激に食糧事情が回復したのでしょうか?メンドー国とスーバキ国が約束した夏野菜支援はまだ先の事ですよね?」


「終戦により国境へ派遣されていた農家の長男や次男坊らが戻って来たからの……今はメンドー、スーバキへ技術者として派遣されておるだろうが、それでも帰還当初は枯れてしまった井戸を掘り替えたり、整備が出来ず水が漏れ出ていたため池も修繕したりして、何より農作業の人手が足りるようになったから、春先から農作物は豊作で市場には十分回り始めておる。


 しかも夏場になっても川の水を……まあ自由に使うわけにはいかんが制限しながらでも少しは使えるから以前のような夏野菜の高騰は起こらんじゃろう。


 その上……サメの魚卵輸出が好調なのじゃ。ボーキ海水位低下によりメンドー、スーバキ両国は養殖が出来なくなり魚卵缶詰の出荷が出来ない状態で……諸外国……特にハリキル国では需要が供給をはるかに上回り品薄状態で価格が高騰して居る。


 元々ボーキサイ国内では缶詰一個が銀貨一枚で販売されていたのが、ハリキル国内では銀貨十枚で販売されておったようで……それも実は……輸出拠点であるエラルドでの価格……銀貨三から五枚であったことに起因して居る。


 お前たちが魔王の羊皮紙を届けに向かった際の帰国後の報告により発覚したのじゃが、エラルミント伯爵が勝手に元値を吊り上げて個人で暴利を得ていたようだ。それでも売れておるし何より注文数に見合うだけの在庫は我が国内にもないから、缶詰一個銀貨五枚で出荷した処変わらず注文殺到……ハリキル内では銀貨二十枚にまで値が吊り上がっておった。」


「そ……そんなに……?」

 エミリアが目を大きく見開き、ハリキル国内の余りの物価高に驚いたことを今一度思い出しているようだ。


「こちらは実際に漁をして加工し魚卵を採取し缶詰に詰めてそれでも銀貨五枚なのに、何もせずにただ右から左へ回しているだけの仲卸や小売りが暴利を得るのはおかしいと……標準小売価格というものを設定し銀貨二十枚と缶詰に直接表記したうえで一個銀貨十枚で出荷することをシュトラセン子爵と相談し、王様の許可も頂いたうえで行った。


 当たり前だがボーキサイ国内標準小売価格という小さな文字は入れてあるのじゃぞ……。


 予想通りかなりの反発もあったが……別に嫌なら仕入れねばいいだけだし当初ハリキルの商人は入荷を拒んだが、ならばとターメリアから大量の発注がありそちらへ融通したところ、今度はハリキルからすぐにどうしても出荷してくれとわざわざ我が国の王宮にまで商人たちが直談判しにやって来た。


 元々サメの魚卵に関してはハリキルが大きな消費国であったから優先せざるを得なかったのが、今ではターメリアとハリキル半々で出荷して居る。両国ともに入荷と共に完売するほどの人気ぶりでな……おかげで我が国の財政は大幅赤字からようやく黒字へ転換し、更にターメリアから輸入されていた食材も特産品に限る程度にまで回復した。


 いずれメンドー、スーバキ両国での養殖が復活すれば価格は下げざるを得ないだろうが……まあそれでも最盛期の半分くらいの量には増産できそうだし、価格も一個銀貨五枚で出荷できれば大きな利益となるはずじゃ。


 ボーキサイ国内での需要は……諸外国からの要人来客時のために王宮で購入する分と、エラルミント伯爵が私腹を肥やすための転売用に仕入れていただけで、銀貨一枚と価格は分かっていても市場では販売されることも購入されることもなかったようだからな……一気に十倍となったところで誰にも迷惑をかけることはなさそうだ。


 王都のみならず各地方都市含め役場の職員に久方ぶりに臨時の手当てを出すことも出来て、このままいけば戦前どころかこの国始まって以来の好景気となりそうだ。それで……当初はエミリアが置いていってくれた金でわしも子爵も替え含めて二着ずつしかスーツは誂えておらなんだ。残りは万一のためにとってあったものでな……。


 国家財政も少し余裕が出てきたところなので、もう少し甘えさせてもらって残りの金で最高級の生地でスーツを一着ずつ仕立ててみた。王宮ご用達の洋品店にも少しは利益を出させてやらねばならんからのう。まず最初はエミリアに見せねばならんと思い、早速おろして着て来たのじゃ。」


 公爵が誇らしげに胸を張って一回転し、美しいフォルムのスーツを自慢しながら最近の財政回復状況を教えてくれた。


「はあ……そうでしたか……私もエラルドやハリキルでのサメの魚卵販売価格に疑問を感じましたので、帰国の際に報告書に記載いたしましたが……改善方向へ進んでいてうれしいです。


 それよりも何よりも……国内での食糧事情回復が……本当にうれしいです。」

 エミリアはよほどうれしかったのか、満面の笑みを浮かべ父に抱き着いた。


「おっほっほぅ……それもこれもエミリアと巧殿の活躍によるものじゃ。ほんの数ケ月前までは……日々の食べるものにも窮しておったのじゃからな……さらに七年以上も続いた戦争がようやく終わってまだ一年も経ってはおらん。


 こんなに劇的に変わったのは……お前たちの活躍によるところが大きい……本当に有難う。」

 公爵は抱き着いて来たエミリアの両肩を手で支え、目を合わせた後で彼女の頭をポンポンと右手で軽く叩いた。


「それでは遠慮なく……食糧庫から食材を頂いてから出発いたします。


 それからこれは……倒した魔族の首です。再生されると大変な事態になり兼ねない為、体は港近くに埋めて首だけ持ち帰りました。どこか人目につかぬところへ埋めてくださいませんか?時間がなく場所を探す時間も難しそうです。こんなこと……お頼みするのは本当に心苦しいのですが……お願いいたします。」


 巧が公爵に一礼するとともに冒険者の袋の中から大玉のスイカサイズの、厳重に布に包まれた魔族の首を手渡した。


「ああ……勿論じゃ……わしだってエラルドやスムープの冒険者組合を全滅させた魔族になど復活してほしくはないからの……協力するのは当然だ。誰にも知られぬよう、子爵と共に王宮隣の刑務所敷地内にでも埋めておくとしよう。」


「はいっ、失礼いたします。」


「ハリキルには逃げた魔族を倒し、魔王の羊皮紙も取り返したことを伝えて置く。二枚となってしまったが……まあいいだろう。いずれ返しに行くと連絡しておくが……返してくれと言い出すかどうか……それほどひどい目に遭ったからな。エミリア……気を付けて……くれぐれも危ない真似はするなよ。身の危険を感じたなら逃げれば良いのだからな。」


 侯爵はハリキルへも報告すると約束してくれた。


「はい、父様もお元気で……。」

 巧たちは直ちに食糧庫へ寄ると六人で二月分の食料を拝借し、聖教会でハルクの弟子達を呼び出すとそのままイーストリバーへ戻って船に乗り込んだ。



「おおっ……戻って来たな。王宮へ着いてすぐにトンボ返りだっただろう……すまなかったな。こっちは釣り糸を垂れればほぼ入れ食い状態でな……恐らく岩礁があって漁場と離れているから魚たちも人間を警戒してないのだろう。

 食料的には十分で後一週間でも二週間でも平気だった。」


 急ぎボーキ海中央の小島へ向かうと、島のあちこちに網を広げ魚の天日干しをしていた。時折カモメなど海鳥が狙ってくるので、それを追い払うのが少し大変そうだが、のどかな日々を過ごしていたようだ。


「そうでしたか……一応皆さんが帰る時の分もと思って、少し多めに食料を調達してきました。」


「そうか……だったら二ケ月交代とするか?それくらいあればこちらもサントスまで戻ることも可能だから助かるしね。


 まあ……北部山脈の巡回はできそうもないが……放置しておくこともできないから、仲間の冒険者たちにでもお願いするさ。今回の件で多くの魔物を葬っておいたから……当面は監視業務だけで済みそうだからね。


 ヘルムには人間は驕っているとか言われたが……今の人間社会を守るためには仕方がない、なんと言われようと俺は魔物の巣窟の監視業務をやめないし、人里を脅かすほどにまで大きくなったら間引くさ。」

 ケンリッヒ侯爵もヘルムの主張はかなり気に留めている様子……それでもこれまで通り活動を続けると明言した。



「弟子たちを連れてきていただいて本当に有難う御座います。さらに糧食の作り方までご指導いただき、弟子たちの分まで一緒に作っていただけて……本当に感謝いたします。」

 ハルクがやって来て、笑顔を浮かべながら頭を下げた。


「ああ……一緒に作る分にはついでで手間など掛かっていないから構わんさ。ハルクには防具への結界でかなり世話になっているからな……今回ぎりぎりで勝てたのだって、ハルクが付与してくれた結界のおかげである面は大きい。」


「ああ……そうだ……俺が今でも生きていられるのはハルク司教のおかげで間違いがない。」

 巧に続き侯爵までもがハルクに対し、本当に感謝しているようだ。


「いえいえ私など……戦闘時には全く役に立たない……結界を付与することしかできない役立たずですからね。

 ですが感謝のお言葉を頂き、皆さんの戦闘時に少しでもお役に立てていると実感できるのは本当にうれしいです。」

 ハルクは本当に嬉しそうに満面の笑顔を見せた。


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