直接交渉
3.直接交渉
「確かに対話による外交努力が必要であったことは……重々承知しております。ですが事情を認識したうえでそれでもボーキ海の領有権を認めない両国に対し、いかように交渉しろと仰っているのでしょうか?
元々ボーキ海に生息するサメの魚卵缶詰はボーキサイ国の特産品で、大陸中どころか世界中へ輸出して大きな収益となっておりました。ですがその収益に目を付けたメンドー、スーバキ両国が稚魚のうちから乱獲を行い養殖で育て大量生産を行ったため、諸外国で流通する量の三割程度にまで落ち込みました。
つまり……国民に無理を強いてボーキ海の水位を保っているにも関わらず、七割はなにも無理をしていないメンドー、スーバキ両国の収益と変わったのです。かといって……浅瀬のないボーキサイ側でサメの養殖は難しいのです。高校の授業で習いましたが、サメは泳ぎ回るための広大な場所が必要で、泳げなければ死んでしまいます。
メンドー、スーバキ両国ともに遠浅海底に太くて長い杭を打ち付け、その杭で網を支えて遠浅の大陸棚自体を巨大な養殖場としている筈なのです。何十万尺四方もの巨大な養殖用網は作れませんし、繋げたとしても弱くサメがちょっと暴れただけで破れてしまうでしょう。耐久性だってあるはずも御座いません。
おかげでボーキサイの国力は衰退し……さらに長く続く出口のない戦争でより疲弊し、国内では餓死者が出たという報告も珍しくない状況でした。
そんな最悪の状況下で見つかった魔王の羊皮紙……魔王の復活はまさに人間社会存続の危機……人間同士で争っている場合ではなかったのです。すぐに手と手を取り合って……魔王復活に対処しなければならない……つまり……喫緊の事態であったわけです。
とりあえず元あった場所へ羊皮紙を戻すとして、それでもすぐさま和平交渉に入らねばならず……ところが和平交渉に必須な莫大な賠償金など、国庫の底をついていた状況で支払えるはずも御座いません。差し出がましい事は承知の上で、その場に居合わせた私が川の水を農業用水として使用することを提案させて頂いたのです。
勿論ボーキサイ国王様はじめ……ここにいらっしゃるシュトラセン外務大臣及び国務大臣となったばかりの父もいて、先祖からの教えに背くことはできないと当初は反対いたしましたが、私が早急なる解決を望むのならほかに方法はないと強く説得したのです。勿論私は、復旧が困難であろうこともある程度予想したうえで提案いたしました。
つまり……各国に対し多大なる迷惑をおかけする事態に至った全ての責任は私に御座います。いかようなる罰もお受けする所存で……お許しいただけるのであれば私の首を差し出すつもりで御座います。」
エミリアはそういうと応接のソファから立ち上がり、すぐわきへ出るとそこで跪いて頭を下げた。
「そうだな……エミリアの首一つだけでは足りないだろうから……同じくその場に居合わせながら止めようとしなかった俺の首もお付けしよう。」
エミリアの態度に驚いた表情を一瞬見せた巧であったが、すぐに立ち上がりエミリアの横に並んで跪き、そうして子爵に目配せをした。
「あっああ……そうですな……かような事態を生み出したのも飢餓にあえぐ民たちの悲痛な叫びが伝わって来ていたからでして……そうですね何でしたら王都百万の民の半分ほどの首を……お詫びの印として献上差し上げましょうか……勿論その筆頭に私の首もお付けするとして……人口が激減すれば夏場の野菜不足だのと嘆かずに済みますからね……。」
子爵も立ち上がると跪き、深々と頭を下げた。
「なっ……しかし……ううむ……しょ……少々お待ち願います。」
ターメリア国外務大臣はそういうと、秘書を置き去りにして部屋を足早に出て行ってしまった。
「ターメリア国王がお会いになられるそうです。」
暫しの時間経過の後、戻って来た外務大臣がおもむろに口を開いた。
「これからは正式な国家間の会談となり、議事録も残されます。どうか先ほどのような……一時の感情に任せた発言はお控えください。取り返しのつかない事態に陥る恐れも御座いますのでね……どうか……よろしくお願いいたします。
では……こちらへ。」
外務大臣はさらに一言付け加えた後、ドアを開けて先頭に立って廊下を歩き始めた。
「本当に……そうだぞ……エミリアが首を差し出すといった時には本当に……どう対応していいのかわからず大慌てだった……メンドー、スーバキ両国代表者の目の前でエミリアが処刑される姿が頭に浮かんだ……だが……巧殿の機転で窮地を脱することが出来た。あれは……事前にエミリアと打ち合わせをしていたのかな?」
外務大臣の後をついていくときに少し距離をとりながら、子爵が小声で二人に問いかける。
「まさか……俺だって焦りましたよ……だけど発案者とはいえ少女の首一つで贖える事態ではないことは明白ですから……だったら俺も……と言いだそうとしてふとひらめきました。どうせなら国民全体を巻き込んでしまおうと……すぐに気づいて頂けて……感謝しておりますよ……あの時は本当に……肝を冷やした。」
巧も囁くような小声で答える。
「ですが……本当にどうしようもなく……私の考えが至らなかったためにこんな事態を招き……せめてものお詫びとして私の命を差し出すつもりでおりました。ですが本当に……巧さんとおじさまの機転に救われました。
本当に有難う御座います。」「うっ……うーむ……」
エミリアは本当に命を捧げるつもりだったようだ……これには巧も子爵も少し引き気味に小さく頷いた。
「我が国の産業で唯一外貨を獲得できていたボーキ海に生息するサメの魚卵缶詰……その利益の大半は不自由な生活を強いている国民らへの食糧支援として賄われており、決して国庫を潤していたわけではなかったのです。ところがメンドー、スーバキ両国が自国側の浅瀬でサメの養殖を始めたことにより、ボーキサイでの漁獲量は激減。
国民に満足に食べさせることも儘ならなくなった為にやむを得ずボーキ海の半分の領有権を主張したのであり、確かにメンドー、スーバキ両国から反発されたときに両国の漁船拿捕を行った事は暴力行為であり猛省しております。
ですがボーキ海の水位維持のためにボーキサイ国民に強いてきた事を鑑みれば、主張自体は間違ってはいなかったと考えております。以上……七年半前の戦争勃発時のボーキサイ国側の切実なる事情を付け加えさせていただきました。」
エミリアが今回のボーキ海水位が下がった問題について、ボーキサイ国側からの見地で弁明を行い、子爵が戦争勃発当時のボーキサイ国側の切実な状況を付け加えて詳細説明した。
「ふむふむ……ボーキサイ国としての主張は、よくわかった。
成程のう……七年半前の戦争勃発当時の事情も、今回の和平に至った経緯もメンドー、スーバキ両国から伝えられてきた内容と微妙に異なるようだな。
戦争勃発前の三国間の緊張が高まった時点で事情を説明して頂き、当たり前だが双方の言い分を聞かねばならんと……確か当時のボーキサイ国外務大臣が訪問されて……メンドー、スーバキの主張通りで何ら弁明の余地は御座いませんとはっきり答えたと記憶している。議事録にも残されておるはずだがな……。」
王の謁見室に通されたエミリア達は、玉座に座るターメリア国王にもう一度一連の事情説明を行い、そのうえで……魔王の羊皮紙が現在に復活し、状況が状況であり他に選択肢は浮かばなかったと釈明も付け加えたのだ。
金糸や銀糸で豪華に飾られたビロードのガウン着用の王様は、口ひげと顎ひげを蓄えていて目は大きく鼻筋も通っていて威厳があり、それでも優しいまなざしでエミリア達を見つめながら話を聞いていた。
そうして戦争勃発時はメンドー、スーバキだけではなく、ボーキサイ側の主張も聞いたと証言。
「はっ……私も本日当時の議事録を読み返しましたが、確かにメンドー、スーバキ両国の使節団のほかに、当時ボーキサイ国外務大臣であられたエラルミント伯爵がボーキサイ国代表としていらっしゃって答弁されました。
メンドー、スーバキ両国の主張を全面的に認めると回答しておりました。」「はあ?」
王に問われ外務大臣が議事録内容を告げると、思わずエミリアの声が漏れた。
「そっ……その……伯爵家の名誉のため……公式な発表は差し控え、発覚当時現場にいた者及び関わりを持った者たちだけの極秘事項として国外には漏らさぬよう厳しく通達していたのですが……実はグレメル・エラルミント伯爵は魔族の眷属だったのです。
しかも本人はその事実に気づかずに……ボーキサイの国力を衰退させやがて王家を乗っ取り、密かに魔族らの国とするために活動していたようです。
本人は夢のお告げと信じその通りに進めると何事もうまくいくと勘違いしていたようで……当時政府の主要な役職は全てエラルミント伯爵が兼務するというところまで上り詰めておりましたが……実は魔族による精神感応という事のようでして……眷属に詳しい冒険者が伯爵の尋問を直接行い驚愕の事実を引き出しました。」
すぐに子爵が伯爵の事情を打ち明け、今度は巧に目配せをした。
「巧と申します。冒険者活動を通して知りえた、魔族の眷属に関してお話いたします。魔族の眷属にはいつも魔族と行動を共にする人間……身の回りの世話だけではなく、魔道具を与えられ魔法を駆使して魔族を補佐し冒険者と戦闘する役目を持ち、いずれ魔族の世界が来たなら領地の分配など一定の地位を保証されるという契約を結んでいる者がいます。
次は草と言って直接魔族と行動を共にはしませんが遥か昔の代の先祖が眷属で魔族への忠誠を誓い、代々修行や勉学に励み地位を上げ各国政府に潜り込んで情報収集や、魔族が事を起こす際の力添えを行うもの……彼らもその見返りとして魔族の世界が達成されたときの地位が約束されております。
これらはともに魔族に忠誠を誓い、意識して魔族に加担している者たちです。国力が落ちたボーキサイ国には国を見限って、魔族に資金提供したり国家情報を渡したりする貴族や豪商など存在すると見込まれておりますが草に値します。
最後は自分が眷属とは知らずに魔族らに加担してしまっている場合……実力もないのに自分を過大に評価して、うまくいかなかったら周りのせいにばかりしているような……そんな心の闇に付け込まれるようです。
夢のお告げの通りに行動するとうまくいく……実は周りに同じように操られている眷属がいて、それぞれ指示を受けて互いを盛り立てていくような行動をするので、あたかも予言が的中しているような錯覚に陥るわけです。
そうして地位を上げ政府の中枢に上り詰めるとお告げは政府転覆の行動に切り替わっていく……失敗しても構わないのです。彼らは魔族にとって只の駒でしかありません。多くの場合、指示は全てが夢のお告げであり、従ったとしても本人のせいではありません。悪いのは魔族なのです。
誰にでも向上心というか出世したいという欲や願望があり、そこに付け込む魔族らが悪いのです。伯爵にこう言った眷属もいると直接会って説明した処、夢のお告げを与えてくれる悪魔に似ていると認めました。
実はこのような本人が認識していない眷属が一番多く、どこの国の政府内にも存在していると言われております。」
子爵に促され巧が眷属の事情を説明、あくまでも悪いのは伯爵ではなく魔族と主張する。
「どうか……お願いですから伯爵が眷属であったということは議事録には載せないで頂きたい……どうかお願い致します。」
子爵も議事には記載しない様願った。
「ふむ……よしっ……ただ今の冒険者巧殿の話した内容はすべて削除しておくように……良いか?」
ターメリア王もその主張を認め議事録から削除を命じた。
「最近になってボーキサイ国から閣僚の大幅な人事変更の連絡がありましたが、そういったご事情がおありだったとは……驚きです。ですが少々お待ちを……ただ今の眷属事情……恥ずかしながら大変不勉強であったことが分かりました。
エラルミント伯爵の件は議事から削除するとして……他の……眷属自体に関わる説明は議事に残してもよろしいのではないかと……。
その……最後のどこの国の政府にも存在する……という文言が気に掛かりまして……つまるところわが国でも眷属が存在している可能性が……そうなりますと政府転覆を謀られる前に焙りださねばと……そのための資料としたく……。」
「ああ……成程のう……だが眷属の説明だけ議事に乗せると……前後の議事からして内容がおかしくはならぬか?
ここで何か眷属がらみの打ち明けがあったのではないかと……勘ぐられてしまうかもしれぬぞ。」
王の命令に際し、外務大臣がターメリア国内の眷属を何とかするための資料としたいと申し出たが王が躊躇う……。
「議事とは別に参考文書として今の文言を残しておくのがいいのではないか?」
「はっ……そう致します。」
結局別の参考文書として残すことに……
「魔族の眷属かどうか見極める方法は……今のところないようです。つまり……本人が認めない限り、眷属ではない可能性もあり、眷属探しは非常に困難です。その為、眷属が潜んでいるかもしれないから怪しげな行動をとるものがいた場合は告発するよう、役所や政府機関で通達することは私個人としてはお勧めいたしません。
若くて有能な役人が、ろくに働きもしない中堅どこに疎まれて……自分よりも上の立場になられては困ると……眷属というあらぬ疑いをかけて排除しようとする危険性があります。眷属として活動をしている者が若くて有能な者を排除するために仲間と共謀して証言したり……適当な物証を捏造したりして追い落とそうとする可能性すらあります。
そうなりますと……どちらの何を信じていいものか全くわからず、打つ手がありません。そのため……私はボーキサイ政府内でも眷属探しをするように勧めてはおりません。眷属を見つけるよりも、若くて有能な人材が失われてしまう事の方が惜しいからです。
それよりも……エラルミント伯爵の様に……いくら優秀でも一人に全ての権限を委譲してしまうような……極端な人事は控えるよう……閣僚同士の力を拮抗させて互いにやりすぎと感じたならそれを止められるよう……そういった人事をされるのが望ましいかと……すいません政治に詳しくない者が言っても仕方がないのですが……。」
巧はそう言って右手で頭をかいた。
「成程……ご高説ごもっとも……勉強になりました……大臣も……いいか?眷属の情報を文書として残す必要はなさそうだ。かえって混乱を招きかねんからのう……。」「ははっ……かしこまりました。」
王様が巧の言葉を笑顔で受け止め、大臣も頷いた。
「話が逸れてしまったが……ボーキサイ側の主張は理解したし、支持したいとは考える。たがしかし……ボーキ海の水位が当面このまま回復しないとなると……メンドー、スーバキ両国が黙っていないだろう。
サメの養殖に関しては説得できたとしても……大陸棚の浅瀬ではエビの養殖や貝類の稚貝を育てることもやっていたはずで、それらも全滅となると莫大な損害となるはずだ。本当にボーキ海の水位を早急に元通りにすることはできないのかな?何か考えられる手立てはないものかな?その手立てがなければ両国は納得せんだろう。」
ターメリア国王にボーキサイ側の主張は納得いただけたものの、それでもメンドー、スーバキ両国を納得させるにはボーキ海の水位の早急な回復が必要と告げられた。
「手だてが全くない事はないのです。しかも実践も可能なのですが……。」
エミリアがここまで発して、ふうっと大きく息を吐いた。
「ほお……手だてがあるのにどうして実践しようとしないのかな?」
「ボーキサイでは川の水を基本的に使用できませんので、生活用水の大半は井戸水として地下からくみ上げ、農業用水はため池を作って雨水をためて充てております。その為、耕作地面積のおよそ四分の一がため池となっております。
昨年夏の二期作目の水田づくりのために川の水を直接田んぼの用水として使用したのですが、実はその逆にため池の水を川に放流することも可能なわけです。大雨の時の洪水被害を免れるために各ため池の水は、風車で動く水車を使って堤防に作られた水門を経由して河川に放流可能なよう設計されております。
つまりため池の水も川に放流してしまう事により、ボーキ海の水位回復を早めることは可能なのです。恐らく数十年かかるであろうことが数年で回復できるでしょう。
ですがそれを行ってしまうとボーキサイ国民は食べるものがありません。飲み水くらいはかろうじて井戸水で賄うとしましても農業用水はなく、米も野菜も家畜肉も……全て収穫できなくなってしまうからです。
その間の……ボーキサイ国民一千万人が食べるに十分なだけの食糧支援を確実に実施して頂かねばなりません……干ばつなど天候不順で不作だったからと支援を打ち切るなどされては、飢えて死んでしまいます。」
ターメリア王の問いかけに対し、エミリアが淡々と答える。
「成程……我が国からもある程度なら支援に協力できるだろうが……さすがに一千万人分の……しかも数年間もの間ずっと食糧支援となると……かなり大変であろうな。ふうむ……ちょっと農林水産大臣と相談して……我が国でどれほどの支援が可能か……見積もらせておかねばならんな……相分かった。ありがとう。」
ターメリア王は大きく頷き笑顔を見せた。
「私は……ここまでを計画して、昨年夏に川の水を農業用水として使うことを提案いたしました。そうして最終的にボーキ海の水位を回復する見返りとして、食糧支援確保に協力することを約束して頂こうと……その提案を持って貴国と交渉するつもりで気が重かったのですが……貴国訪問の際に気づいたことがあり……全く別の案も浮かんでまいりました。」
「ほっほう……やはりなかなかの策士と見える……まだ若いというのに……素晴らしいな。それで……全く別の案とは如何な内容なのかな?わが国でもできることがあれば、可能な限り協力するつもりではいるが……。」
エミリアの発言にターメリア国王も身を乗り出して耳を傾け始めた。
「はっ……ありがとうございます。
実はボーキサイ国では北部山脈という険しい山々が御座いまして、そこから流れ出る川が国を縦断しておりまして、最終的にボーキ海へ注がれております。ですが西方のフーセンという都市に流れ込む川から西へ向けて運河が設けられており、貴国との国境となっているボキタメ川までつながっております。
王都西方は北部山脈以外は広い平野が広がっておりますが傾斜が緩やかな為、僅かな雨量変化で一部の川が氾濫することが多かったのですが、逆に平野であるがために運河による連結も可能なようで……最終的には王都まで運河を伸ばす計画だったようですが、七年半前の戦争勃発以降工事は中断されております。
運河は船による交通手段として……加えて大雨での洪水など川の氾濫を軽減させるための緩衝用として、運河を横切る川の入り口と出口に上下動可能な堰が設けられており、川ごとの水位を平均的に調整できるようになっておりました。
ちょうど王都からボキタメ川の中間点からある運河ですが、そこまで馬車で夜も半分は駆け続けながら八日間かかった行程が、船だと半分の四日で国境まで到着いたしました。
そこで考えついたのです。ボーキ海へ注ぎこむ川がほぼないと言われているメンドー、スーバキ両国ですが、ボーキサイとの国境の山脈から現状外海に流れ出ている川の水を、運河建設の様に両国内の川の向きを変えてボーキ海へ注ぎこむようにしてしまえば……三国から川の水を引き込めば恐らくボーキ海の水位は格段に早く回復するものと推察しております。
勿論早急に回復させるにはメンドー、スーバキ両国内でも川の水の使用制限は必要となるでしょうが……うまく回れば恐らく一年か二年もあれば水位は回復するものと見積もっております。
そうしてその川の水の引き込みを持続させることが出来れば……ボーキサイ国側でも無理してまで川の水の使用制限を行う必要性はなくなり、夏野菜もふんだんに収穫できるようになるでしょうし、酪農経営もうまくいくはずです。食糧支援をしていただかなくても、自国の収穫だけで生きていけるはずです。」
エミリアがメンドー、スーバキ両国にも協力して頂く案を提示した。
「成程のう……うまいことを考え付いたものだ……ボーキ海の恩恵を得たいのであれば、自分たちもそれなりの貢献が必要ということだな……この提案を断るわけにはいくまい……承知した。
ターメリア国はボーキサイ国の主張を認め、全面的に協力することを約束する。」
ターメリア国王が大きく頷いて笑顔を浮かべた。
「ははっ……ありがとうございます。」
ボーキサイ国外務大臣である子爵が腰を折って深々と頭を下げ、エミリアと巧もそれに続いた。




