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疑惑Ⅱ

17.疑惑……Ⅱ

「なっ……何をばかなことを……正気か?どんな証拠があって伯爵の私を家に閉じ込めようとなされるのか?」

 とんでもない展開に動揺する伯爵……だが衛兵は命じられたとおりに伯爵を拘束して連れていこうとする。


「もとはと言えばわしが悪いのだろうな……グレメルのことを信じるがあまりに……この国の政治や経済更に軍に関わることまで全てグレメル任せにしてしまった。おかげで競合もなく独占状態で……たまに指摘されて競合を募ったとしても一向に改善されない……誰も真の姿を報告できないからだな……すべてはわしが蒔いた種だ。


 だから……わしの権限のもとで当面休ませることとする。国軍司令官の役職も、商工会議所及び冒険者組合の東部会長の座も任を解く。


 その上で……七年半前にわしがグレメルの口車に乗ってしまいボーキ海半分の領有権を主張し、断られたことに腹を立て七年前に宣戦布告してしまい、そんな状況に愛想をつかされシュタインベック公爵とシュトラセン子爵のお二方は隠居すると宣言され田舎に引っ込んでしまわれたが……今更だが戻って来ては頂けぬか?


 公爵には国務大臣と大蔵大臣と農林水産大臣の兼務……子爵には外務大臣及び国軍司令官の兼務を担って頂きたいのだ。勿論子爵には商工会と冒険者組合会長の全国担当をお願いしたい。いかがであろうか?」

 王は玉座から立ち上がると、二人に向かって深々と頭を下げた。


「そんな勿体ない……確かに突然の宣戦布告に驚き、事前に何もできなかった自分に対し腹が立ち引退を決め込みましたが……決して王様の采配を疑ったからではございません。その時分にはそれなりの確証と行うべき事由があったと理解しております。


 それに……まだ伯爵への疑惑は疑惑のままで……調査もしておりませんから、焦らぬ方がよろしいかと……。」

 復職を願う王に対し、公爵はまだ伯爵の罪は確定してはいないのだと話を戻そうとする。


「ああ……勿論そうだ。仮に伯爵の言うとおり無実だとしたなら……すぐにわしが兼任しているに文部科学大臣に司法長官や警察庁長官などの役職についていただき謝るさ。それでも今の役職には復帰させない。


 長期間同じ職に就いていると……魔がさす場合もあるであろうからな……定期的に要職を代わるようにすれば……次の担当者に暴かれてしまうから汚職などできぬであろう?勿論公正を期すために公爵たちも含め行うつもりだが……。

 とはいえ……今この場で冒険者殿の発言を聞いていた限り……グレメルの有罪は確定であろう?


 勿論調査はさせる。第一王子は近衛隊の隊長だから、後でウエストリバーとイーストリバー河川敷の様子を逐一観察して報告させるつもりだ……役場へ行って職員に工事発注先を確認させれば済むことではあるが、それでは劣化して傷んでいた側がどちらであるかまでは突き止められん。


 基礎の上には必ず施工業者の銘版が掲示してあるからな……現場へ行けば施工業者も分かるし傷み具合も簡単に把握できるし、言い逃れはきかなくなる。


 その上で……他の公共事業での不正や業者との癒着など調べていかねばならぬだろう……こんなこと願える間柄ではないことは重々承知しているが……助けてはくれぬか?


 ボーキサイ国を救うという意味でも……何とか手を貸していただきたい。」

 そうして王は今度は床に膝を着き、両手を合わせて拝むかのようにして願った。


「おっ……王様……そんな……勿体ない……おやめくだされ、かような真似は国王の威厳にかかわりますぞ。


 確かに長年にわたり格別なる信頼を置かれていたエラルミント伯爵の立場が揺らぎ始めておりショックを受けられているのは分かりますが、私はもう七年も前に隠居した身……歳も歳であり今更公務にはとても戻れませんぞ……。」

 だが公爵は王の期待には沿えないと返事……


「私も同様……商工会議所と冒険者組合の会長職は適任者不在のためにやむを得ず続けておりましたが、最近はエラルミント伯爵が東部地区を受け持つようになり、西部地区も含め全般移譲するつもりでしたから……今更全国受け持つなど……さらにその上国軍の司令官などとてもとても……手に余りますな……。」


 子爵もとてもできないと断った。


「そう申さずに……なんとか……まあ今言われてすぐには答えられないであろう?公爵はアルミナの町長をされているから引き継ぎもあるであろうからな……一旦持ち帰って検討して頂けぬか?」

 それでもあきらめきれない王は、一旦帰って検討するよう願う。


「検討せよとのご命令であれば……検討いたしますが……ですが……無理なものは無理でして……仮にどうしても適任がいないという事であれば……後継を教育しながら短期ということであれば……ですが一年かせいぜい二年ほどであれば何とかやっては見ますが……。」


 どうしてもと押しまくる王の圧力に負けたのか、仕方なく公爵は短期であればいいと回答。


「五年……五年間何とか……願えぬか?次男が今年大学二年であと二年で卒業するからすぐさま農林水産省に入省させるので教育してやって欲しい……長女は今年大学入学だからあと四年後に卒業とともに大蔵省に入省させる。長男は近衛部隊の隊長と国軍の司令補を兼任させるから……五年かけて教育をしてやって欲しい。


 どうか……五年間だけ何とか願えぬか?」

 王は膝を着いたまま立ち上がろうとせず二人の貴族に縋りつくよう願い続ける。


「ふうっ……仕方がありませんな……私らはこの先二週間は王宮から出られない身の上……魔族に襲われたくはありませんからな……ですので文を書いて……アルミナの役場助役に五年間私が離れても問題ないかどうか……確認させてみます。その上で……お引き受けするかどうか鋭意検討させて頂きます。


 最悪……アルミナ町長と兼任で、王都とアルミナを週ごとに行き来することになるやもしれませんが……可能な限り前向きに検討させていただくことをお約束いたします。」


「おおっ……有難い……シュトラセン子爵も……それでよろしいかな?」

「仕方が御座いませんな……私だけできぬとはお答えできないでしょうから……。」

 子爵も渋々引き受けることを決めた様子だ。


「それでは……お話もまとまったご様子ですので……私たちはこれからイーストリバー南端の河川敷魔物討伐を行ってまいります。」

 話がひと段落したところでエミリアが、ようやくイーストリバーへ向かうことを切り出せた。


「おっ……そうか……どのみちまだ二週間はお互いに王都を離れられぬからな。だが気を付けてくれ……他にも魔族が侵入していないとは限らぬのでな。恐らくイーストリバーは南側も侵入防止用の鉄格子柵は劣化が激しいのであろう?」

 王様を立ち上がらせ玉座に座らせたあと、公爵が速足でエミリアのもとへ……


「では王様……後日またお伺いさせて頂きます。」


「ああ……いい返事を待っているぞ……。」

 エミリアと公爵達もようやく王との謁見から解放され、謁見室を後にした。



「二年前は確かにひどく劣化しておりました。ですので……魔族か若しくは大型魔物が侵入している可能性大です。


 ですが駆除せず放置しておけば近隣住民の生活を脅かすことになりかねませんから……なんとしてでも駆除して完全撲滅させるつもりです。緊縮財政の折……予算的には厳しいかもしれませんが、侵入防止柵の早急なる更新をしていただかねば、すぐまた魔物は侵入してまいりますので……何とぞよろしくお願いいたします。」


 巧は廊下を歩きながら大蔵大臣に就任するであろう公爵に対し、早速侵入防止柵の更新を願った。


「先ほど王様がこの秋にイーストリバー鉄格子柵の上塗り塗装工事が予定されていると仰っていた。しかも三年前のウエストリバー更新時の半分ほどの予算のようだからな……北端側か南端側か……どちらかより劣化が激しいほうの片側しか更新できぬかもしれぬが、このまま放置も出来ぬであろうからな……検討するしかないだろう。


 あとは……エラルミント伯爵が賄賂を受け取ったり不正取引をしたりしてため込んだ金を……どれだけ取り戻せるかだが……証拠を集めて裁判するにしても……恐らく何年もかかるであろうな……まあわしらもうすうす感づいてはいたのだが、すでに隠居した身の上……見て見ぬふりをしていたのが悪かったのじゃな……。


 王宮のすぐ隣に……王宮にも引けを取らぬほどの敷地を購入し、煌びやかな城のようなお屋敷を建てたと噂では聞いておったのだからな……戦況が悪化しているが賠償金も払えないので降伏も儘ならず……向こうも征服まではする気もない事をいいことに、緊縮財政で何とか破綻を免れていたというに、そんな贅沢など……と王様に上申するべきであった。


 中央の腐敗を正そうともせず、自分が住む地域のみのことだけ考えて日々を送っておったからの……今更……遅きに失するやもしれぬが……やれるだけやってみるしかないでな……エミリアも……体には十分気を付けるのだぞ……いいか?」


「はいっ……父様……では失礼いたします。」

 しばらく王宮内に滞在する父に別れを告げ、エミリア達は王宮を後にした。



「は……あ……よく見ると王宮の白い壁が一旦途切れ……またすぐに復活して果てしなく続いているように見えますが……ここからがエラルミント伯爵の邸宅なのですね?国王様が住む王宮と同等規模の……確かに長いですわね……。」

 エミリアが前回同様果てしなく続きそうな長い白壁を恨めしそうに眺め歩く。


「緊縮財政をものともせず……たんまりと稼いでいたのだろうな……俺もウエストリバー河川敷での魔物討伐の際にしょっちゅう往復していたから、長く続く無機質の壁にはうんざりしていた。当時はある伯爵の豪邸としか知らなかったがな。


 隣の区画を担当する冒険者と供に連れ立って歩くことも極稀だがあったが……その時に聞いた話では、お城ともいえる大豪邸がある上に中庭には冬でも暖かく泳げる温泉を利用した温水プールまであるという事だった。この間エミリアも宿泊したであろう?王都内の温泉宿……あそこの源泉を引いて終日かけ流しで温めていると聞いたぞ。


 引退した元冒険者らで構成する私設軍隊まで持っているということも聞いたし……本当に贅沢の極みというか……金が有り余ってしまって使い道に困っているのではないかと……冒険者たちの間では話題になっていたようだ。


 恐らくウエストリバー東岸側は工事の発注を請け負っただけで工事はしておらず……更に今年春の上塗り塗装工事も見積もりだけで実際工事は行われなかったはずだ。新しい塗料のひとかけらも確認されなかったし、そもそもあんなに魔物がいる中で上塗り工事などできなかっただろうからな。


 金だけもらって実際は工事資材の発注も行わず、工事もしないのだから……そりゃあ金は貯まる一方だな。そんなことを……七年以上も続けていたのだろ?豪邸どころか……国家予算並みの資産が溜まっていることだろうな。


 あとはエミリアの御父上が言っていた通りに不正を暴き、どれだけ取り戻せるかにかかっているのだろうが……簡単にはいかないだろうな。これだけ大規模に行われていたということは……関わった人間も多数いるということだ。彼らの証言が必須になるだろうが、自分たちの首を絞めるような証言をするはずもない。


 物証を積み重ねていって言い逃れできぬようにしていくしかないだろうが……何年かかるだろうかな。果たして俺たちが生きている間に立証できるかどうか……甚だ疑問に感じるな。

 あとは……いっそのこと魔族との関わりを持っていたということにしてしまうかだな……。」


「えっ?どういう事でしょうか?」

 呟くかの如く漏れ出た巧の一言に……エミリアが反応する。


「ああ……魔族の眷属になって捕えられた場合の悲惨さをこの間話しただろ?眷属は魔族に精神支配されているという学者もいるようだが……実際には自分の欲のために来るべく魔王の世界で自分の欲望を満たせる処遇を約束され、自らの意思で付き従っているというのが最近の眷属らの動向調査でわかって来た。


 だから……魔族の命に絶対服従という点以外は全く普通の人間だから、どう取り調べても立証しようがない。ただ一緒に居るというだけで物証などまるでないからな……だがまだ魔族に同行する眷属なら魔族と一緒に倒すか捕まえさえすればいいのだが……街中に潜んで情報を探り国家転覆の機会を狙う忍びの様な眷属は厄介だ。


 魔族と連絡を取り合っているところを捕らえない限り証明のしようがないからな……だから疑いを持たれた時点で捕らえられ拷問にかけられる。


 過去には商売敵などどうしても目の前から消したい相手を魔族の眷属の疑いがあると通報し捕えさせ、自分の商売を大きくしていった例もあり、今では余程の確たる証拠がなければ取り調べもされないらしいのだが……。


 エミリアも聞いたであろう?王様の前でも証言したが……秋の塗装工事の見積もり業者が魔族と眷属を見かけたにもかかわらず侵入を黙っていると約束し、実際にも報告されていなかった。


 そもそも魔物がひしめいていると分かっている河川敷に護衛も付けず下したのだからな……魔族の存在も知っていて逆らわなければ絶対安全だからと言い含めていたはずだ。そうでなければ……おかしいだろ?


 その点を突いて……伯爵は魔族に従う影の眷属であると通報するのだな。そうしてしまえばすぐに逮捕され、全ての財産は没収されて国家に納められる。いちいち細かく一つ一つの犯罪を苦労して調べ立証していく必要性もない。」

 巧が伯爵を魔族の眷属であると疑うに足る事実があると、とんでもないことを言いだした。


「たったしかに……眷属まで従えた大物魔族がイーストリバー河川敷に侵入していたにも拘らず、業者の方は報告はしないと約束したと眷属の方が仰っていました。あれは……既に魔族の侵入を察していて担当者に出会ったとしても報告しないと告げなさいと命じられていた可能性は御座いますわね……そうすれば魔物に襲われることもなく安全であると……。


 そもそも河川敷の侵入防止用鉄格子柵だって……簡単に破壊できるようになるまで劣化させたうえで……あたかも上塗り工事を定期に行っていて安全性には全く問題がないと虚偽の報告をしていたのですから……大型魔物や魔族の王都への侵入を手引きしていたと疑われても仕方がありませんわね……。


 そう考えたほうが……自然なくらいに疑えますわね…………ですがエラルミント伯爵が眷属と疑われ捕らえられてしまうと……娘であるトゥルーディや奥様までもが一緒に……。」

 歩きながら顎に右手を押し当て黙考した後、納得気味に大きく頷いたがすぐさま重要なことを思い出したかの如く絶句……


「ああ……知り合い……なのだよな?」


「ええ……彼女とは……私が十歳くらいまではテルミンへ年に数回は家族で訪れていて……あそこは王都に近いので年に何度かは王都から貴族のご家族らもやって来て、地域の貧しい人たちを支援するための寄付を募るバザーなど催しがあったのです。母も元気で社交界へ連れて行ってくれていました。


 大人ばかりで子供は少ないのですぐに仲良くなり……私より三っつ年上のお姉さんでしたが、ダンスなんて退屈で覚える気にもなれないっていって、幼い私と走り回ってくれていたことを覚えております。


 まあその頃から……給仕さんたちの動きがまるでなっていないとか……自分よりもはるか年上の給仕さんたちを怒鳴りつけておりましたけれどね……。」

 エミリアが懐かしい昔を思い出すよう少し上を見上げながら……優しい笑みを浮かべながら打ち明けた。


「もし通報するとしたら……捕らえられたらすぐに伯爵に面会を申し込み……素直に眷属であることを認め自分一人で活動していたと証言すれば、家族や会社の従業員は罪には問われないはずと教えてやるのだな……。


 魔族とともに行動する眷属と違い街中に潜んで行動する忍眷属は、家族にもその存在を打ち明けないからこそ忍びなのだと……魔族の情報を集めている時に知った。


 だから忍びの場合は家族にまで類が及ぶのは、家族ぐるみと認定された場合に限ると俺は思っているのだが……実際にはどうなるのかはわからない。だから……捕らえられた眷属がどれだけ取り調べに対して協力的に証言するか……家族は一切関係ないとどれだけ信憑性を持って証言できるかにかかっているのではないだろうかな。


 通常の眷属と異なり忍びの場合は魔族にいいように操られているだけで、そのことに本人も気づいていない場合も多く、魔王が復活して魔族の国が出来た際の地位や報酬など約束されているわけではないから、家族ぐるみで協力し合って魔族のために付き従うということはない。だから……本人だけの量刑で十分と判断出来うるはずだ


 そう教えてやれば……事実はどうあれ……いや……ほぼ濃厚ではあるのだが……伯爵は眷属であると……忍びとして活動していたと認めるのではないだろうかな。」

 伯爵さえ素直に眷属であることを認め協力的でさえあれば、伯爵一人だけの逮捕で済ませられると巧……


「はあ……そうなのですか……ですが私たちだけで勝手に判断するわけにはまいりません。今回の仕事が終わり次第……どうせ王宮へ出向くわけですから、その時に父様たちと相談いたしませんか?」


「ああ……そうだな……大きな疑いを持たれ失脚したとはいえ……王様の親友だし何より貴族だからな。そんな重要人物が実は魔族の眷属で忍びであったなどと明らかになったら……大騒動になるかも知れないからな。ここは慎重に吟味するため、お偉方の判断を仰ぐとするか……。」「はいっ!」


 巧は空を見上げ胸を張る……面帯で顔は見えないが恐らく歯を見せるくらい笑顔ではないかとエミリアは想像した。


「だが……俺たちがどうしてここまで稀有な魔族と遭遇するのか……魔王との関係性を疑われるとまで心配していたのだが……魔王の羊皮紙という……原因があったのだな……それが分かってほっとした。


 地方都市で活動する冒険者は命がけの危険を伴う魔物討伐などせずに、往来する隊商の護衛で稼ぐ輩が大半のようだからな……彼らは逆に大型魔物や魔族らが巣食う大規模巣窟が近隣に出現したほうが護衛の礼金が高騰すると喜んでいるかもしれないくらいだから……巣窟の魔物討伐なんて……地方では滅多に行われないのだろうな……。


 だから長年住民らの頭を悩ませていた魔物の巣窟を、たまたま地方へ隊商の護衛で付いてきていた俺たちがついでに行ったものだから……五年前にアルミナ近隣で羊皮紙が現れたことをきっかけに魔族らが寄ってきていたから……さらに王都でも規約上割に合わなくて人気がない北端と南端の河川敷での仕事をエミリアの機転でお得に引き受け……高密度に魔族がいる中で仕事を請け負っていたということだ……分かってしまえばなんてことはない。


 魔族との関係性を疑われてしまうと即捕まり拷問だからな……心配していたのだが胸のつかえがとれた気分だ……。」


「そうですね……母様が命懸けで取り戻した羊皮紙……あれを目当てに魔族らが寄ってきていたとは……私は運命のようなものを感じているのですよ……天国にいる母様が……私に羊皮紙を守れと命じているような……。」


「確かにな……手に入れた羊皮紙を冒険者の袋に入れておいたということは……やがて御母上の後をついでエミリアが冒険者になることを期待していたのかもしれないな……頼りになる相棒まで……揃えておいてくれたのだしな。」

 そう言いながら巧はエミリアの両側を守るようにして付き従っている、二匹の黒犬にちらりと目をやる。


「この子たちは本当に……頼りになりますからね……おかげで私のような経験のない新人冒険者でも何とか戦えております。」

 エミリアは頼りになる相棒らの頭を優しく撫ぜた。


「おっ……ようやく東区の冒険者組合建物が見えてきたぞ……今日はもう遅いから……またエミリアは近くの温泉宿に宿泊するか?」


「そうですね……王宮での議論が長引き時期夕暮れですが……とりあえず河川敷の魔物討伐の申し込みをして、現地へ向かいませんか?堤防の上で一泊して明日の早朝から討伐開始で……いいと思います。」


「おっ……じゃあそうするか……。」

 二人はそのまま冒険者組合事務所へ入っていった。


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