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眷属

12.眷属

 ふと振り向くと……大斧で切り落としたのだろう……二本の太く長い脚を担いで巧がやって来た。


「この足……斬り口を麻袋で縛るからエミリアの袋に入れてくれ……魔力が大きな魔族だからな……首だけじゃあなく手足共に切り取るくらいにしないと危険だ。そうして別々に保管して運ぶ……俺の袋には頭と四本の腕を入れる。


 胴体は……一緒にするとくっついちまうかも知らないから……胴体だけ手で持って運ぶしかないだろうな。

 ぎりぎり口に入るだろ?」

 唖然として言葉もないエミリアに巧はがま口を開くよう身振りで促した。


「た……巧さん……殺したのですか?殺してしまったのですか?」


「まさか……アーミンで出会ったハルクとかいう結界術師が言っていただろ?魔族は首を切り落としても死なないって……あれから俺も調べたんだが、確かに捕えた魔族の輸送方法に遥か大昔は首を刎ねて胴体と別々に包んで輸送するというのがあった。俺の袋の中には魔族に関する資料も色々と入っていたからな……未だ全部読めてはいないがね。


 魔力が高くなると首だけでも一定時間なら飛んだりできるようだし、胴体だけでも短い間は活動可能なようだ。そうなると危険だから……手足とも落としてしまえば動けはしないだろう……この状態でも数日は死なないはずだ。」

 巧は殺してはいないとあくまでも主張する。


「そうですか……ちょっと私には……触るのは無理ですから……はい……巧さんが入れてください。」

 エミリアはがま口の金具を開けて冒険者の袋を巧の方へと向けた。


「ああ……悪いな……しっかりと麻袋で傷口包んであるから、中身が血まみれになることはないはずだ。

 それよりも……アルルは大丈夫か?魔族の高温の火炎弾の直撃を食らってしまったかもしれないぞ……。」


「えっ?大変……ペルっ……ここはお願いね!」

 すぐさま巧が指さす方向へと駆けていく……エミリアは自身の戦闘に夢中でアルルの方を見ていなかった様子だ。


「アルっ……大丈夫ですか?」

「くーーん……」

 すると茂みの向こうから、よろよろとアルルが歩いて出てきた……


「無事なのですね?よかった……。」

「わふっ」


 見るとアルルの右わき腹部分の麻袋を胴巻き代わりにしていた麻縄が、完全に焼き切れているようだ。おそらくここをかすめていったのだろう……革製の胴巻きは黒い焼け焦げを薄く残した程度の損傷で済んでいた。


「弱い魔力耐性を施してある胴巻きと頭部は湿らせた麻袋の効果で少しの被害で済んだようだけど……防具がない首筋に足や尻尾など……毛がちりちりと焼けてしまっているわね……皮膚も火傷しているでしょうかね……真っ赤になっていて……ちょっと待っていてね……まずは水で冷やしてから軟膏を塗ってあげるから……。」


 月明りではあるがそれでも首筋の毛が焼け焦げ失われ、露出した皮膚が火ぶくれで膨らんでいるのが何とか確認できた。エミリアは冒険者の袋から水を入れた竹筒を取り出し火傷部分にやさしくかけてやり手拭いで拭いてから、今度は腰のベルトにいつもぶら下げている緊急用の血止めに使う軟膏を、アルルの首と前足と後ろ足と尻尾など露出部分に塗ってあげた。


「火傷の薬ではないけど血止め効果もあるし何より空気に接しないで済むから、これ以上酷くはならない筈よ。さっ……立てる?」


 エミリアは治療中じっと腹ばいになって尻尾を振っていたアルルに立つよう促し、辺りを見回し巧の姿を探した。

 すると後方からぺリルがすたすたと歩いてくるではないか……


「あれっ?ペル……捕らえていた方はどうしたの?」「くわんっ!」

 エミリアの問いかけに、ぺリルは元気よく尻尾を振って答えた。


「あれっ?巧さん……どうして?」


 ぺリルが来た方向へ視線を移すと、人影がもくもくと地面に向かって作業をしている様子……月明りで詳細は不明だが動きの様子から巧がスコップで、いつものように収穫した獲物の廃棄物を埋めるために穴を掘っていると分かった。


 すぐに駆け足で巧のもとへ……


「手伝います。ええっ……どうして……」

 エミリアも自分の袋の中から必要性を感じて道具屋で購入したマイスコップを取り出し、巧とともに穴を掘ろうとして横を見て絶句……


「捕縛して動けないようにしたはずなのに……無抵抗の人間を、どうして殺したのですか?」

 なんと巧の傍らには二体の人間の死体が転がっていた……一体は火炎によるものか全身真っ黒に炭化していて性別すら判別が難しそうだが、もう一体は顔と両手が真っ黒に焼かれていて動かない。


「黒焦げになっているのはエミリアが仕留めそこなった奴だ……胴着の胸部分の隙間を狙ったのだろうが肩に当たり、当たった瞬間身をよじって転がったから直撃して死んだと勘違いして油断した。


 魔族が現れエミリアに気をとられて歩き始めた隙に、後方へ回り込んで一撃で仕留めようと立ち上がったらこいつは倒れたまま左手で魔道具を操り最大火力の火炎を浴びせられた。」

 エミリアの問いかけを気にせず自分の戦いの顛末を語り始めた。


「申し訳ありません……殺す必要はないと……右肩を狙って矢を放ちました。今度から両肩を射抜きますわ。」

 巧の予想に反しエミリアに殺意はなかった様子だ。


「ちいっ……殺せといったはずなのに……だがそのおかげで俺は全身炎に包まれ、仕方がないので眷属を仕留めるためそいつに抱き着いた。俺の甲冑は強力な魔法結界に守られているからな……全身を包み込むような業火でも全く熱は感じなかった。そこでアルルに命じて魔族を襲わせようとしたのだが……奴には断末魔の最期のあがきに映っただろう。


 アルルは超高温の白熱化した火弾の直撃を食らい気の毒だったが……それでも魔族は完全に気を抜いた……目の前には大好物の若い女性が逃げずに立っていたからな……俺の方には目もくれずに歩き始めたから……眷属はとっくに息絶えていたから……背後から首元に最大出力の雷撃を食らわせたらいちころだった。


 申し訳ない……アルルを捨て駒にするつもりはなかったのだが結果的に……。」

 そうしてアルルが犠牲になったことを穴掘りの手を止め、頭を深く下げて謝った。


「いえ……アルは平気でした……湿らせた麻袋の効果でしたね……胴巻きを止めている麻縄が焼き切れただけで済んだようです……防具に守られていない手足や尻尾は毛が焼けて軽いやけどをしていたようですけど平気です。


 ほらっ……アルっ……」

 エミリアは自分の後ろで座っているアルルを巧の目の前に押し出して見せた。


「おおっ……そうだったか……良かった……あんなすごい火弾を食らっては死んでしまったかと……」

 巧は穴から数歩前に出て跪くと、兜をかぶったままいとおし気にアルルにほおずりしてあげた。


「わふっ」

 アルルも嬉しそうに中腰になり、尻尾を思い切り振る。


「だがおかしいな……いくら動きの素早い訓練された忍犬とは言え……手練れの魔族が一発で仕留められないとは考えにくい……アルルの防具は結界術師に魔法耐性は与えられてはいなかったのじゃあないか?それとも……ぺリルのと交換したのか?敵陣に突っ込んで行く先鋒役のアルルの方が、確かにより強度のある魔法耐性は必要だろうが……」


「いえ……交換はしておりません。ですがこちらも高級な革製の防具ですから……弱い魔法耐性はあるはずですよね?」

 巧にはどうしてアルルが無事であったのか、どうしても納得できない様子だが、エミリアも特別なことはしていない様子。


「通常販売される防具に施される弱い魔法耐性など、白熱化した千度を超える超高温の火弾には全く効果がないはずだ。それよりも……胴巻きの焦げ跡が……腹を直撃するはずが少し側面にずれているのだが、麻袋の方はこうやって装着時に戻すと丁度腹部分が焼け焦げて穴が開いている……どういうことだ?


 湿らせてあったとはいえ……胴巻きを固定していた同じく湿らせた麻紐は一瞬で燃え尽き飛んでいっているというのに……手製の胴巻きだからずれたのか……いや……もしかして麻袋の胴巻きをきちんと密着させずに、余裕を持たせてゆるく麻ひもで縛ったのではないのか?」


 アルルの革製胴巻きの焦げ跡と麻袋の胴巻きの焼け落ちた跡をひたすら見比べていた巧が、エミリアへ視線を移して問い正そうとする。


「そうですよ……前回ぺリルに麻袋を湿らせてかぶせたときに、火炎は怖いからしっかりと装着させて結んであげたのですけど、お腹がきつくて飛び跳ねたり急な動きをすると辛そうでしたので、戦闘時に緩めようと試みたのですが麻ひもを湿らせてあったのでほどけませんでした。ぺリルは終わるまでずっと苦しそうにしていたのですよ……。


 ですから今回はアルルの方は麻袋をふわっと乗せただけで麻ひもを巻いて、ちょうちょ結びで軽く止めただけです。」

 巧の問いかけに対しエミリアは前回不具合を解消するため、緩めに装着したと打ち明ける。


「ぷっ……はっはっはっ……これはまた……」

「何がおかしいのですか?」

 巧の反応の意味が分からず、エミリアが不機嫌そうに目を細め問いかける。


「いや……なんだかな……この二匹の犬は……どうやら大きな加護に守られているというか運が強いというか……テルミンの森でもそうだっただろ?強力なボス魔物が親子の情愛で本気を出せず、あっさりと倒せた。ぺリルを連れていなかったなら……俺たちでは勝ち目はなかったかもな。


 そうして今回だ……本来なら素早い動きと跳躍力を武器に戦うアルルならば……緩めの麻袋による胴巻きは抵抗になってしまう……革の胴巻きとの間に隙間ができそこに風をはらんで抵抗になってしまうからな……これが昼間の戦闘だったら駆けだした時点で麻袋が膨らんでいることが丸分かりだから、すぐに直しただろうが深夜で全く気付かなかった。


 そうして最大の武器である大跳躍から急降下して魔族の頭に直撃のつもりが……麻袋が風をはらんで抵抗となり……つまり落下傘の原理だ……降下速度が緩み……予測して高温の火弾を放った魔族の狙いが大きく外れたわけだ。


 かすめただけでも強烈な一撃だったからアルルは体勢を崩し地面に激突……これで俺もアルルも倒されたと魔族は満足してエミリアを仕留めにかかった。完全に油断していたわけだ……火だるまとはいえ俺がまだ動いているにもかかわらず……切り札を失っては何もできまいと考えたのだろうな……。


 そもそも俺の甲冑の魔法耐性が強化されたのだって犬好きの結界術師がぺリルをかわいがったおかげだからな……ぺリルを抱かせてもらったお礼のついでにぺリルの胴巻きの魔法結界を強化し、エミリアの分はともかくとして俺の分はおまけだからな……そのおかげで俺は業火に包まれても平気だったが、傍から見れば俺は死んだと思われても仕方ない……。


 強者ゆえの油断というか……自分の攻撃に絶対の自信を持っていたが故に大きな隙が生じてしまったわけだ。まあ結果論ではあるが……うまくいったのだから……殺せといったのに殺そうとしなかったことも、せっかくの長所を台無しにするような装着をしたことも……文句は言うまい。この二つがなければ俺たちは全滅していただろうからな。」


 巧はすっきりとした様子で再び穴に戻り、スコップを握った。


「せっかくの巧さんのご提案で安全に戦えるはずの、アルルの麻袋による炎対策を台無しに装着してしまったことは謝ります。結果論でよかったとは満足できませんよね……本来の目的を果たせずに巧さんの身に危険が及ぶ可能性もあったわけですから。すみませんでした。」


 巧の気持ちはどうでもエミリアは素直に自分の非を認め、結果的に良くても申し訳なかったと真摯に謝った。


「ですが……どうしてなのですか?」


「どうして……とはどういうことだい?結果的に良ければいいやという姿勢は適当ではないという事かな?俺は運であろうが何だろうが頼れるものは何でも頼って、結果的に勝てばいいとすら考えているさ。


 これまでも何度も死地を潜り抜け生き延びてきたが……常に作戦通りに全てがうまく回って勝ててきたわけじゃあない。


 たまたまうまくいった……なんて勝ち方だってして来たさ……魔族に迫られ起死回生の一発を狙ったが接触不具合か発火せず、素早く手放して次の魔道具を袋でまさぐったが魔族に思い切り腹を突かれ……あいつらはできるだけ血を流さずに人間を殺そうとするからな……生き血をすするのが好きなようだ……思い切り後ろの大木まで突き飛ばされ意識が遠のきかけた。


 だがその時に接触不良だったのだろうな……音響閃光の魔道具が突然発火して……俺は失いかけていた意識が戻り、魔族は逆に目も耳も鼻もやられ呆然と立ちすくんでいた。


 俺は何とか立ち上がって血反吐を吐きながらも雷撃の魔道具を手にして最大出力でお見舞いした……胴着は完全変形して叩き出すのにえらく修理代がかかったが……何とか生きているし、その魔道具も修理して未だに使っているさ。


 魔族の鼻先で炸裂させて五感を奪うつもりが……俺が目を先につぶってしまったから感づかれてしまったのだな……発火させようとしたが既に大きな手で覆われていたから……発火したとしてもさほど効果はなかっただろう。


 すぐに掃われて俺は吹き飛ばされ……あとは俺の生き血をすするだけと魔族が歩き出したところに遅れて発火したからな……油断していただけに効果が大きかった。おかげで今も生きているのだから……運の良さだって馬鹿にはできないぞ。」

 運で切り抜けたとしても、それでも否定する必要性はないのだと巧は主張した。


「そうではなくて……黒こげの方だって……私は殺さず捕えようと……結果的に巧さんを危機に陥れることになってしまったのは大変申し訳なくは思いますけど……巧さんは魔法耐性の高い甲冑に身を包んでいたのですから、抱き着いて焼き殺さなくてもよかったのではないのですか?そのほうがより魔族だって油断しただろうと思いますし……。


 何より私が捕えて……捕まえたのはぺリルですが捕縛したのは私です……動けないようにしていた方の縄をわざわざほどいて……殺したのはどうしてでしょうか?そんなに巧さんは人殺しがお好きなのでしょうか?


 それとも眷属という存在に何か大きな恨みでもおありでしょうか?」

 エミリアは巧が無抵抗の人間を殺してしまったことに腹を立てている様子だ……敵とはいえ同じ人間なのだ。


「眷属は捕まったら処刑されるといったことは覚えているか?」


「覚えておりますとも!ですが我々は裁判官でも刑の執行役でもございませんし、ましてや彼らの刑は確定もしておりません。勝手に自己判断で裁かず、捕縛して連行して正式な法的裁きを受けさせるのが、正当なやり方ではないのでしょうか?」

 エミリアはあくまでも正当な判決によって裁かれるべきと主張する。


「眷属はその三親等以内の親族は全員……六親等以内は過去一年間で連絡を取り合った者、および友人知人に関しても眷属になった以降に連絡を取り合ったものは全員が処刑されるといったことも覚えているか?」


「あっ……ええ……ですがきちんと調査して……魔族に加担さえしていなければ処刑されることはないはずですよね?」

「まさか……条文通りに必ず刑は執行される。三親等以内は年端の行かない子供まで全員が処刑される。


 生きたまま捕えられたら毎日きつい拷問で仲間を吐かされ……針の筵という言葉があるが文字通り……板に長い釘を打ち付け裏側にわざと飛びだたせ……剣山のようにしたその上に毎日座らされて尋問を受ける。知らぬ存ぜぬを貫き通そうとすると更に手足に直接五寸釘を打ち付けられるそうだ……どんな屈強な男でも三日と持たないらしい。


 三親等以内の親族全員と仲間として自白した知人や縁故者は全員公開処刑で首を刎ねられ、眷属だった者は先に長いゴム管をつけた漏斗を口に押し込まれ、そこへ煮えたぎった油を流し込まれるのだそうだ……。


 喉元過ぎれば熱さを忘れるという通り、胃袋や腸には神経がないが焼け溶けて腹中に油が回り……目から耳から鼻から口から尻からも煙を出し内側からくすぶり続け……ゆっくりともだえ苦しみながら死んでいくのだそうだ。」


「ええっ……?」

 巧の話す捕まった眷属と関係者らの恐ろしい末路に、エミリアは言葉を失う……


「生きて捕まった場合はまだ被害は少ないといえるかもしれない……死んで身元が判明した眷属は……規定通りに三親等以内全員と六親等以内で一年以内に連絡を取り合っていた者及び眷属になった時期以降に連絡を取り合った知人は全て連行され、ろくな取り調べもされずにほぼ全員が処刑される。


 眷属の一部は都市部で一般市民に紛れて諜報活動をしているが……そのような眷属が捕まった場合はご近所さんで日常挨拶を交わすだけの関係でも捕らえられ処刑されるのだぞ!


 それくらい眷属は……一般人に混じって国家の情報を探り政府転覆を狙っていると囁かれているし、主要魔族に従属している眷属は暇があると若者たちを誘って豪遊し、眷属に引き込もうと勧誘しているそうだ。疲弊したボーキサイ国は特に食い詰めたものが多いから、どうせ死ぬならと一家全員が眷属になるものも多いとも聞いている。


 また……どうせ戦争に負け他国の属国になるくらいはと……魔王の国を目指し援助のために私財を提供する貴族や豪商までいると聞いた。勿論魔王の国となった場合の待遇目当てだろうがね。


 だから……少しでも関係がある者たちは、大げさに言うとすれ違っただけでも処刑せねばならないそうだ。


 以前はさすがに子どもは眷属として使い道はないだろうから除外……として十五歳未満は処刑されずに済んでいたようだが……眷属の処刑は公開処刑でな……自分以外の親族皆殺しにされる様を見た子供は実に七割を超える確率で眷属になるという統計がある。だがら今では子供も一緒に処刑されるように変わった。


 眷属が一人摑まると周りの関係者百人が連帯で処刑されるという言葉もあるほどだ……だが……処刑される多くは何も知らない一般人だ……そんな無実の人間を殺さずに済むように……眷属は必ず殺すし……身元が分からないように顔と指紋を焼くしかない。


 殺してしまってから顔や手を焼いてはだめだぞ……眷属を殺したと報告した場合は王宮から検査官がやってきて眷属の死体を検めるからな……死んだ後で顔や手を焼くと生体反応が出ないからすぐに分かって報告した冒険者も眷属とつながりがあると疑われてしまうようだ。生かしたまま……しかも戦闘中やむを得ずという形で焼くのがいい。


 だから一人は俺が食らった火炎で丸焦げにしたし、エミリアが捕縛したほうは縄を解いて剣を右手に持たせ、顔面直撃の火弾を食らわせ殺してやった……こいつも覚悟の上で剣を構えたまま動こうともせずあえて直撃を食らった後で顔に両手を押し当てた……苦しくてもがいたみたいな形でな……うまいことやったようだ。


 これが俺たちにできる最大限の奴らに対する思いやりなのだ……分かったな?」

 巧はそういうと再び穴を掘り始めた。


「そうでしたか……巧さんを誤解しておりました。申し訳ございません。」

 エミリアも一緒に穴に入ってスコップを握り掘り始めた。


「この辺の話は初級冒険者講習会で説明されるから……出席していないエミリアが知らないのは無理もない。


 だが……講習会では素性が分からないよう顔と両手を焼いて殺せとは決して言わないぞ……なにせ公の講習会だからな……必ず捕えて冒険者組合に連行しろと規定通りの話をする。だが……講習官の口調や表情から……その辺の裏事情は十分に読み取れたな……俺の解釈は間違ってはいないはずだ。」


「そうですね……殺すことでより多くの助かる命があるのであれば……やむを得ないと考えるしかありませんね。」

 二人で深く穴を掘って二名の死体を埋め、河原で一番大きな石を持ってきて墓標代わりに盛り土の上に置いた。


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