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おまけ

おまけ。

「清算が終わりましたよ……今回の仕事の礼金と魔族捕獲の賞金及び肉とお毛皮の代金合わせて……。」


「そうだ……魔族が家畜として飼っていた牛……長い間魔物らと暮らしていて魔物化しなかったから貴重だろ?牛車を引かせて一頭は連れて来て外につないであるが……それと……恐らく森のどこかに牛の放牧場があるはずなんだ……牛舎の大きさから数頭は飼育していたはずだからな。


 すまないが職員を派遣して放牧された牛も牛舎に戻っているだろうから収容してほしい。


 放置され魔物化すると厄介だからね。こちらの分は……代金請求はしないからお願いする。」

 魔族を運んできた牛車の牛と、巣窟には放牧されていた牛がいたはずと……それらの回収を巧が願い出た。魔族がいつ気がつくか分からないので、森に長居は出来なかったのだ。


「連れてきた牛の分の代金は清算金の中に含まれておりますのでご心配いなく。放牧されていた分は……そちらも巧さんたちの取り分ですので……あとで振り込んでおきます。この分も折半でよろしいのですよね?」


「ああ……それで構わない。

 では引き続き……アーミンからアルミナまで向かう隊商の護衛の依頼だが……まだ引き受け手がいなければ俺たちで受けたいのだが……どうかな?ざっと見た限り……受付には掲示がなく気になっているのだが。」


 いつもの隊商の護衛の依頼書が掲示されていないことが、巧には気になっている様子だ。


「それはもちろん……巧様達ご指名の案件ですから……掲示していないだけですよ……お引き受けいただけるのでしたらありがたいです。すぐに出発ですけど大丈夫でしょうか?」


 そう言われ……二人は既に約束の三日目の朝が来ていたことに今になって気が付いた。森の巣窟の攻略に丸一日……森までの往復に四刻かかっているのだから当然と言えば当然だ。


「ああ……徹夜仕事には慣れている……問題ない。」

 巧は平然と仕事を受け、勿論隊商リーダーのボーエンは巧らを大歓迎で受け入れすぐに出発となった。



「ありがとうございました。巧さんたちの護衛のおかげで、帰路も一台の荷馬車も失うことなく安全に通行できました。アルミナで荷物の一部を下ろし、すぐにテルミへ向かうのですが、巧さんたちのテルミンの森の魔物ら一掃のおかげで魔物らは激減と組合事務所での依頼完了報告の際に伺いました。


 今では商人らが護衛も付けずにアルミナ―テルミ間を往来しているそうで、我々の隊商に同行している僅かな私兵で十分であろうと考えております。ここからは我々だけで行きますので、ここでお別れです。

 今後の更なるご活躍をお祈りしております。それでは失礼いたします。」


 アルミナへの道中は数回魔物らの襲撃を受けたが強力な魔物に出くわすこともなく簡単に退け、道中つつがなく進み到着……アルミナの冒険者組合で護衛業務の仕事の報告を行い清算をした後、隊商リーダーからこの後の道中は護衛はなしでもいいと言われ、彼らとは別行動となった。


 さすがにエミリアも家へ寄りたいであろうと、巧としても以降の護衛は断るつもりだったので渡りに船となった。



「おお……おお……よくぞ帰ってきてくれた……エミリア……よくぞ無事で……。」


「まあ……父様……少し大げさではありませんか?まだたったの一週間ですよ……私が家を空けてから……」

 エミリアの実家……シュタインベック邸へ到着すると、玄関口ですぐさま父親のランドルフが駆け寄って来て、熱烈な歓迎を受けた。


「いっ……一週間……たったの一週間なのか?お前たちがここを出てから……もうすでに一年は経ったのかと……それくらい長く辛い日々だった……。」

 ランドルフはエミリアを抱きしめるとその場に崩れ落ちるように、跪いて大粒の涙を流し始めた。


「まあまあ……大げさすぎますよ……父様……私が魔族に攫われた時ですら涙を流さなかったというのに……もしかすると冒険者となった私の身を案じていらっしゃるのでしょうか?


 全然問題ありませんよ……強力な魔物らとも……戦えておりますよ……ぺリルも一緒ですからね。」

 なおも涙が止まらない父に対し、何の問題もないのだと強がるエミリア……


「そうではない……そうではないのじゃ……アルルが……アルルが……」

 ところが父は何か告げたそうに……廊下のさらに奥を指さす……そこでハタと気づいた……いつもなら父よりも一層早く駆け寄り抱き着いてくるはずの存在がいない事を……


「はっ……アルが……アルがどうかなさったのですか?」


 すぐに異変に気付いたエミリアが縋り付く父を引きはがして脱兎のごとく廊下を駆け抜け、奥の階段から階上の自分の部屋を目指す……


「アルル……」

 するとそこには……エミリアのベッドの上に横たわる黒い大きな塊……エミリアが声をかけても動かない……


「どうして……どうして……。」

 すぐさまエミリアは黒い塊に駆け寄り抱きかかえる……


「くー……ん……」

 アルルは弱弱しい息遣いでゆっくりと薄目を開け、ぺリルもベッドに飛び乗り顔を舐めるが反応しない。


「お前たちが出ていってから残されたアルルは元気がなくなり……朝晩の散歩のときにも……当初二日ほどは東へ行こうと無理やり綱を引っ張るし……三日目は一旦落ち着いたのだが午後からは散歩のときに今度は西へ行こうと必死に踏ん張ったり……支離滅裂だったのじゃ。

 食べ物も喉を通らん様子でな……毎晩毎晩遠吠えをして……悲しそうな声で泣くのだ……五日目にはついに……ベッドで横になったまま身じろぎ一つしなくなり……おかげでわしもほとんど寝ておらん……。」


 巧に肩を借り、ようやく父親が辿り着いて事情を説明する。


(ぐー……)丁度その時ほとんど動かない黒い塊の腹部分から音が……



「お腹が空いていたのですね?一週間も飲まず食わずだなんて……ダメですよ!」


 胃が空になった状態でいきなりの大食は危険だと巧に諭され、薄味のおかゆを作ってアルルの鼻先に持って行くと、アルルはベッドの上でよろよろと立ち上がりゆっくりと食べ始めた。最愛のご主人が帰ってきたことで食欲が戻ってきた様子だ。



 一晩エミリアがベッドを共にしてやると、アルルはかなり元気を取り戻し翌朝には薄味の肉を少し口にした。


「わしは役場へ行けば助役もおるし、一人で大丈夫だ。それよりも残されるアルルが不憫でかなわん。どうか……アルルも連れて行ってやってくれないか?」


 そうして父にアルルも同行するようお願いされてしまった。二人だけの家族……父を一人だけ残して旅立つことに後ろ髪を引かれ……愛するペットを置いていったのだが置いていかれるアルルの気持ちまで考えていなかったことをつくづく思い知らされた形である。


「いいのですか?この広い屋敷でたったお一人で……。」


「ああ……構わんよ……毎晩寂しそうに泣かれるよりも……はるかにましだ。それに……どうせ部屋は多数空いておるから……下宿人でも入れようかと考えておる。勿論……身元には十分注意を払うし、役場の職員限定とするつもりだからね……実をいうと緊縮財政で職員の住宅手当も払えん状況なのだな。


 手当代わりに住まわせる……いわゆる現物支給となるのだが……我慢してもらうしかない。


 中には犬が苦手という者もおるだろう……大型犬の場合は特にな……頭を悩ませておったところだが連れて行ってもらえるのなら問題は解消だ。だから……わしやこの家のことは一切心配無用だ……。」

 不安がるエミリアに対し、父は全く問題ないと答えた。


「そうですか……そうであればアルは引き取らせていただきます。


 旅の道中護衛していた隊商のリーダーさんから犬用の装備を格安で譲り受けまして……アルルも自宅の護衛犬として役立てるよう装備を置いていくつもりでしたが……冒険者の一員として役立てさせていただきます。そういうわけで巧さん……仲間が増えましてよ……。」


 エミリアが笑顔で巧の方へと振り返り、アルルが大きなしっぽを振りながら立ち上がった。


次章へ続く


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