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異世界キャバクラ王 ~酒チートと氷魔法で、夜の社交界を支配する~  作者: 阿鼻恭介
第4章 育つ店、広がる縁

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第59話 新しい一歩

翌朝。


Club Moon Dropには、いつもより少しだけ張り詰めた空気が流れていた。


昨日、ルークとディーノが正式に仲間となることが決まり、今日が二人にとって最初の出勤日となる。


もちろん、今日からすぐに営業へ立つわけではない。


まずは店を知り、仲間を知り、Club Moon Dropという店が何を大切にしているのかを、実際に見て覚えてもらう一日だった。


レンは開店前の店内を見回していた。


ロイは受付台を整え、登録帳や会員証を確認している。


リリアは客席を歩き、テーブルや椅子の位置を微調整していた。


エルナ、セレナ、ミーナはグラスや食器の準備を進め、ノアは店内を歩きながら手帳へ何かを書き込んでいる。


いつもと変わらない朝。


その光景を見ながら、レンは小さく笑みを浮かべた。


「みんな。」


レンが声を掛ける。


全員が手を止め、レンへ視線を向けた。


「今日はルークとディーノが初めて出勤する。」


「営業にはまだ入らない。」


「まずは店を知ってもらう時間にしたいと思っている。」


ロイが頷く。


「その方がいいですね。」


「一度に全部覚えるのは難しいですから。」


リリアも笑顔を見せた。


「私たちも最初は何も分からなかったもんね。」


「そうだな。」


レンは頷いた。


「だから焦る必要はない。」


「少しずつ覚えてもらえればいい。」


その時だった。


コンコン。


入口の扉が軽く叩かれる。


ロイが扉を開ける。


「おはようございます。」


「おはようございます。」


そこにはルークとディーノが並んで立っていた。


二人とも昨日より少し緊張した表情をしている。


「おはよう。」


レンが笑顔で迎える。


「おはようございます。」


ルークとディーノは揃って頭を下げた。


「今日からよろしくお願いします。」


「こちらこそ、よろしく。」


レンは二人を店内へ招き入れる。


リリアが真っ先に近付いた。


「改めてよろしくね!」


「よろしくお願いします。」


ルークも笑顔で頭を下げる。


ディーノも少し照れながら笑った。


「皆さん、よろしくお願いします。」


エルナ、セレナ、ミーナも順番に挨拶を交わす。


ノアも少し緊張した様子で前へ出た。


「よろしくお願いします。」


「よろしく。」


ルークは優しく微笑み返す。


「昨日はあまり話せなかったけど、これからよろしくね。」


「はい。」


ノアも少しだけ笑顔になった。


全員の挨拶が終わると、レンが口を開く。


「それじゃあ、今日は店の中を案内する。」


「二人とも付いてきてくれ。」


「はい。」


レンを先頭に店内を歩き始める。


最初は客席だった。


「ここが昼営業と夜営業で使う客席だ。」


「席数は多くない。」


「だからこそ、一人ひとりのお客様としっかり向き合える店にしたいと思っている。」


ルークは店内をゆっくり見渡した。


試験営業の時とは違い、装飾も少しずつ増え、店全体に落ち着いた雰囲気が生まれている。


「やっぱり、いい店ですね。」


その言葉にレンは少し笑った。


「ありがとう。」


「でも、まだ完成じゃない。」


「これからもっと良くしていく。」


続いて受付へ向かう。


ロイが受付台の前へ立った。


「ここが受付です。」


「紹介制なので、お客様が来店されたら最初に紹介者の確認をします。」


「正式会員か仮会員かでも対応が変わります。」


ディーノは真剣な表情で話を聞いていた。


「思っていた以上に確認することが多いんですね。」


「はい。」


ロイは頷く。


「だから慌てず、一つずつ確認することが大切なんです。」


レンも続けた。


「紹介制は、この店の土台だ。」


「ここを丁寧にすることが、お客様の安心につながる。」


「分かりました。」


ディーノはしっかりと頷いた。


その様子を見て、ロイは安心したように微笑む。


続いて厨房へ向かう。


まだ本格的な調理設備は揃っていない。


「今は料理の多くを金獅子亭で仕込んでもらっている。」


レンが説明する。


「ここでは盛り付けや簡単な仕上げが中心だ。」


ルークは厨房を見回した。


「少しずつ設備を増やしていく予定ですか。」


「ああ。」


レンは頷く。


「将来的には、この店だけで料理を完成させられるようにしたい。」


「その時は、力を貸してほしい。」


ルークは迷うことなく答えた。


「もちろんです。」


「その日が来るのが楽しみです。」


レンは満足そうに笑った。


「頼りにしてる。」


最後に二階の事務所へ案内する。


「ここは事務所だ。」


「面談をした部屋でもある。」


ルークとディーノは昨日のことを思い出し、小さく笑った。


「あの時は緊張しました。」


ルークが苦笑すると、ディーノも頷く。


「俺もです。」


レンも笑う。


「実は俺も少し緊張してた。」


その一言に、部屋の空気が少し和らいだ。


レンは二人を見渡し、穏やかに口を開く。


「今日一日で全部覚える必要はない。」


「まずは、この店の空気を感じてほしい。」


「仕事は、そのあと少しずつ覚えていけばいい。」


ルークとディーノは顔を見合わせ、力強く頷いた。


「はい。」


Club Moon Dropでの新しい一日が、静かに始まろうとしていた。


二階の事務所を出たレンたちは、一階へ戻った。


「ここまでが店の案内だ。」


レンがそう言うと、ルークとディーノは改めて店内を見回した。


昨日まで客として見ていたClub Moon Dropとは違う景色が広がっている。


客席。


受付。


厨房。


そして事務所。


これからは、この場所が自分たちの働く店になるのだ。


「それじゃあ、次はそれぞれの仕事を見てもらおう。」


レンの言葉に、二人は頷いた。


「ルークは俺と来てくれ。」


「ディーノはロイと一緒に受付を見てもらう。」


「分かりました。」


四人は二手に分かれた。


ディーノはロイと受付へ向かう。


受付台の前に立つと、ロイは登録帳を開いた。


「紹介制なので、まず最初に確認するのが紹介者です。」


「紹介者のお名前と、お客様のお名前を照らし合わせます。」


ディーノは登録帳を覗き込みながら頷く。


「そのあと、正式会員か仮会員かを確認するんですね。」


「はい。」


ロイは笑顔で答えた。


「慣れるまでは確認することが多く感じると思います。」


「でも、お客様が安心してご来店いただくためには、とても大切な仕事なんです。」


ディーノは真剣な表情で登録帳を見つめた。


「責任のある仕事ですね。」


「はい。」


「だからこそ、一つひとつ丁寧に確認しています。」


ロイは受付台へ置かれた会員証も見せる。


「色や種類にも意味があります。」


「最初は覚えることが多いですが、焦らなくて大丈夫ですよ。」


ディーノは小さく笑った。


「ありがとうございます。」


「早く覚えられるよう頑張ります。」


一方その頃。


ルークはレンと厨房へ来ていた。


まだ本格的な調理設備は揃っていない。


作業台や調理器具も必要最低限だ。


「今はここで簡単な仕上げだけをしている。」


レンが説明する。


「料理そのものは金獅子亭で作ってもらっている。」


ルークは厨房全体をゆっくり見回した。


「だから昨日、将来的に店内厨房を任せたいって言われたんですね。」


「ああ。」


レンは頷く。


「でも急ぐつもりはない。」


「まずは店の流れを知ってもらう。」


「厨房を動かすのは、そのあとだ。」


ルークは真剣な表情で答えた。


「分かりました。」


「まずは、この店のことをしっかり覚えます。」


レンは満足そうに微笑んだ。


「それでいい。」


「料理だけじゃなく、この店全体を知ってほしい。」


「お客様がどんな時間を過ごしているのか。」


「スタッフがどう動いているのか。」


「それが分かって初めて、この店の料理が作れると思っている。」


ルークは静かに頷いた。


「料理だけを見ていたら駄目なんですね。」


「そうだ。」


レンは優しく笑う。


「Club Moon Dropの料理は、お客様が過ごす時間の一部だからな。」


その言葉を聞き、ルークは改めてこの店で働く意味を考えていた。


昼前になると、再び全員が店内へ集まる。


リリアたちも準備を終え、それぞれ持ち場へ戻る前だった。


レンは二人へ声を掛ける。


「今日は案内だけだったけど、どうだった?」


ルークが最初に答える。


「思っていた以上に、一つひとつ理由がある店なんだと感じました。」


「料理だけじゃなく、全部がつながっているんですね。」


レンは嬉しそうに頷く。


「その通りだ。」


続いてディーノも口を開いた。


「受付も黒服も、お客様に安心していただくための仕事なんですね。」


「もっと勉強したいと思いました。」


ロイも笑顔になる。


「一緒に頑張りましょう。」


「よろしくお願いします。」


レンはスタッフ全員を見渡した。


「今日から二人もClub Moon Dropの仲間だ。」


「でも、慌てる必要はない。」


「少しずつ、この店を好きになってくれればそれでいい。」


ルークとディーノは顔を見合わせ、力強く頷いた。


「はい。」


リリアが笑顔で手を叩く。


「じゃあ、これからもっと賑やかになるね!」


エルナも微笑む。


「皆で力を合わせて頑張りましょう。」


セレナとミーナも笑顔で頷いた。


ノアはその光景を見ながら、そっと手帳を開く。


『新しい仲間が加わった日。』


そう書いて、小さく微笑んだ。


Club Moon Dropはまた一歩、新しい未来へ歩き始める。


その歩みは決して速くはない。


だが、一人ではなく仲間と共に進む一歩は、これまでよりもずっと力強いものになっていた。


そして翌日。


ルークとディーノは、いよいよ営業の現場へ立つことになる。

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