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異世界キャバクラ王 ~酒チートと氷魔法で、夜の社交界を支配する~  作者: 阿鼻恭介
酒で死んだ黒服、異世界でビール革命を起こす

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第6話 異世界の酒はまずかった

初めての執筆で読みにくいところもあると思いますが楽しんで読んで頂けましたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

本日3話投稿のうち3話目です。

辺境都市ルミナス。


城壁を抜けた瞬間から、俺のテンションは上がっていた。


異世界。


本物の異世界。


石畳の道。


木造と石造りが混在した建物。


鎧姿の冒険者。


荷車を引く商人。


耳の長いエルフらしき女性。


獣耳を生やした獣人。


どこを見てもファンタジーだった。


前世で散々ゲームや漫画で見てきた光景が、今は目の前に広がっている。


「すげぇ……」


思わず呟く。


「だから田舎者だって言ったろ。」


ガイルが笑う。


「いや、ほんとすごいです。」


「そんなにか?」


「そんなにです。」


異世界転生者だからな。


そりゃ感動する。


◇◇◇


だが。


俺には一つ気になっていることがあった。


酒だ。


酒文化。


酒市場。


酒のレベル。


俺は黒服だった。


そしてキャバクラオタクだった。


街を見れば分かる。


まずどこを見るべきか。


酒場だ。


酒場を見ると、その街の経済レベルが見える。


客層が見える。


商流が見える。


文化が見える。


つまり。


金の流れが見える。


「ガイルさん。」


「なんだ?」


「この街で一番大きい酒場ってどこです?」


ガイルが少し意外そうな顔をした。


「酒場?」


「はい。」


「お前、本当に変わってるな。」


リリアも苦笑している。


普通は冒険者ギルドとか宿を聞くらしい。


だが俺は違う。


酒場だ。


まず酒場。


◇◇◇


案内されたのは街の中央広場だった。


そこには大きな建物がある。


看板にはこう書かれていた。


【金獅子亭】


かなり大きい。


二階建て。


昼間なのに客が多い。


繁盛店だ。


俺は一目で分かった。


「いい店だな。」


思わず呟く。


ガイルが驚く。


「分かるのか?」


「まあ。」


入口。


看板。


客入り。


立地。


全部優秀だった。


経営者のセンスがいい。


これは期待できる。


俺は中へ入った。


◇◇◇


途端に酒の匂いが鼻をつく。


肉料理。


スープ。


焼きたてのパン。


そして酒。


酒。


酒。


酒。


酒好きとしては天国だった。


「おっちゃん!」


ガイルがカウンターへ声を掛ける。


奥から巨漢の男が出てきた。


「おお、帰ったか。」


完全に常連らしい。


俺たちは席へ案内された。


木製テーブル。


大衆酒場。


異世界テンプレである。


「何か飲むか?」


ガイルが聞く。


俺は即答した。


「おすすめを。」


市場調査だ。


まずは地元の主力商品を知る。


商売の基本である。


◇◇◇


数分後。


木製ジョッキが運ばれてきた。


黄金色の液体。


泡もある。


見た目はビールに近い。


俺は少し期待した。


異世界ビール。


楽しみだ。


ジョッキを持つ。


香りを嗅ぐ。


……ん?


嫌な予感がした。


雑味が強い。


発酵臭も強い。


ホップっぽさがほとんど無い。


俺は恐る恐る飲んだ。


ゴクリ。


数秒。


沈黙。


「……。」


「どうだ?」


ガイルが聞く。


俺は答えた。


「まずい。」


全員が固まった。


◇◇◇


「え?」


リリアが目を丸くする。


「まずい?」


「まずい。」


「金獅子亭のエールだよ?」


「まずい。」


「うそ。」


俺はもう一口飲んだ。


やっぱりまずい。


ぬるい。


苦い。


雑味が強い。


後味が悪い。


発酵管理も雑だ。


前世のコンビニビールの方が百倍美味い。


「これがこの街で一番?」


「そうだけど。」


リリアが困惑している。


俺は理解した。


なるほど。


そういう世界か。


酒文化が低い。


かなり低い。


想像以上だった。


◇◇◇


次にワインを注文する。


飲む。


まずい。


果実酒。


まずい。


蒸留酒。


まずい。


全部まずい。


「嘘だろ……」


俺は頭を抱えた。


酒好きとしてショックだった。


前世では当たり前だったものが存在しない。


冷えたビール。


ハイボール。


シャンパン。


カクテル。


梅酒。


日本酒。


全部無い。


いや。


作れないのだ。


技術が無い。


知識が無い。


文化が無い。


そして。


その瞬間だった。


俺の脳内で何かが繋がる。


市場。


需要。


供給。


独占。


利益。


全部。


繋がった。


「……勝てる。」


思わず呟いた。


「え?」


リリアが聞き返す。


「いや。」


危ない。


声に出ていた。


だが確信した。


この世界。


酒で天下取れる。


◇◇◇


俺は試したくなった。


こっそり。


誰にも見えないように。


テーブルの下。


意識を集中する。


【全アルコール精製】


頭の中で念じる。


すると。


手の中に一本の缶が現れた。


●サヒスーパー●ライ。


前世で何度も飲んだ味。


俺は思わず震えた。


本当に出た。


酒場の中で。


異世界で。


日本のビールが。


◇◇◇


周囲を確認する。


誰も見ていない。


俺は缶を開けた。


プシュッ。


最高の音。


冷気が立ち上る。


冷えている。


完璧に。


キンキンに。


俺は飲んだ。


ゴクッ。


瞬間。


涙が出そうになった。


美味い。


圧倒的に美味い。


比較にならない。


別次元だった。


「なんだこれ……」


思わず呟く。


前世では当たり前だった。


コンビニで買える。


居酒屋で飲める。


普通のビール。


だが今は違う。


異世界では神の酒だった。


◇◇◇


そして。


俺は理解した。


神様。


これ。


チートすぎる。


酒を作れる。


無限に。


材料無しで。


しかも品質は現代日本レベル。


いや。


それ以上かもしれない。


俺は笑っていた。


自然と。


黒服時代。


経済学部時代。


ずっと考えていた。


「いつか自分の店を持ちたい。」


その夢。


異世界なら叶うかもしれない。


いや。


叶えられる。


絶対に。


◇◇◇


「レン?」


リリアが心配そうに顔を覗き込む。


「急に笑い出して怖いんだけど。」


「ごめん。」


俺は笑顔で答える。


「ちょっと未来が見えた。」


「未来?」


「ああ。」


異世界初。


本格的な夜の店。


冷えたビール。


高級ワイン。


カクテル。


接客。


会話。


笑顔。


前世で俺が愛した空間。


それをこの世界で作る。


その決意が固まった。


ただし。


その前に。


「金が無い。」


現実だった。


所持金ゼロ。


住む場所無し。


職業無し。


店どころではない。


まずは生きなければならない。


すると。


ガイルが言った。


「そういやお前。」


「はい?」


「仕事探してるんだろ?」


「まあ。」


「だったら冒険者ギルド行くか?」


俺は少し考えた。


そして頷く。


今は情報が必要だ。


金も必要だ。


異世界を知る必要もある。


店を作るのはその後。


「お願いします。」


こうして俺は。


異世界で最初の一歩を踏み出した。


――後に『夜の王』と呼ばれる男の、最初の資金集めが始まる。

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